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タトゥー禁止?番外編 ミュージシャン横山健「アンフェアな規制」

医師資格のない人間が客にタトゥーを彫れば「犯罪」――。タトゥーの彫り師に対する医師法違反容疑での摘発が相次ぎ、波紋が広がっています。パンクバンド「ハイ・スタンダード」やソロミュージシャンとして活躍し、刺青の愛好家でもある横山健さんにメールでインタビューしました。

現行の法制度について「とてもアンフェアだと思います」と指摘する横山健さん=Ryohei Tsukada撮影
現行の法制度について「とてもアンフェアだと思います」と指摘する横山健さん=Ryohei Tsukada撮影

目次

 タトゥー店や彫り師に対する、医師法違反容疑での摘発が相次いでいます。医師資格のない人間が客にタトゥーを彫れば「犯罪」――。そんな法規制の現状を伝えた連載「タトゥー禁止?」には、様々な意見が寄せられました。番外編となる今回は、パンクバンド「ハイ・スタンダード」やソロミュージシャンとして活躍し、刺青の愛好家でもある横山健さんにメールインタビューを敢行。タトゥー規制への賛否の声もあわせて紹介します。

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タトゥー禁止?〈1〉相次ぐ摘発 警察「無資格の医行為」
タトゥー禁止?〈2〉彫り師、「免許制」訴える
タトゥー禁止?〈3〉吉本ばななさん「臨機応変な判断を」
タトゥー禁止?番外編 横山健「とてもアンフェア」

5年かけて決意、最初の刺青

 ――最初に刺青を入れられたのはいつ、どこで、どんな理由からでしたか。

 20代の中頃、彫り師として修行中だった友人の家で入れました。20歳前後から刺青に漠然とした憧れを持ち始め、最初の刺青を入れる決意をするまでに5年ほどかかりました。

 ――右肩にお子さんの名前を彫られていると伺いました。それはどのような思いからですか。

 自分の子どもが大好きで愛おしいからです。大切なものは身につけておきたいというタイプではないのですが、彫ることは身につけることよりも更に一段深いので、自分でも合点がいくようです。

 ――タトゥーのどういったところに価値や魅力を感じますか。

 価値も魅力も人に依ると思いますが、ボクにとっては装飾本能、そしてタブー感が心地よいのだと思います。しかし刺青にまつわる様々な知識が増えると、日本伝統刺青は浮世絵などにそのルーツを求めることができ、刺青そのものが持つ歴史と合わせそれらを勉強するようになりました。そういった「興味が広がる」ことも魅力のひとつだと感じています。


書籍『横山 健 随感随筆編』
書籍『横山 健 随感随筆編』

「医療行為とは?再解釈すべき」

 ――厚生労働省や警察は、第三者にタトゥーを入れる行為を「医療行為」ととらえ、医師免許なしに行えば、医師法違反にあたると解釈しています。現状の法制度について、いかがお考えですか。

 個人的にはとてもアンフェアだと思います。そもそもまず「医療行為なのかどうか」というところから改めて議論し、再解釈すべきだと感じています。ボク自身は刺青やピアッシングは医療行為ではないのでは?と考えます。

 さらに思いを述べるなら、「刺青を入れたい」という人がいるのであれば、そして刺青がビジネスの市場として確立し得る可能性があるのであれば、それをサポートすること、法的整備を進めることが省庁(厚生労働省でしょうか?)の役目だと思います。

 しかしこれが荒唐無稽な理論だと言われるなら、それも理解できます。なぜなら日本における刺青のイメージは「反社会的」であり「威嚇的」だと認識されているからです。それは日本伝統刺青が持つ独特の歴史的な背景に依るところが大きく(罪人がさせられていた事、明治の刺青禁止令、暴力団等)、とても感情的なため、簡単に変わらないでしょう。

「閉鎖的な社会の証」

 ――昨年から大阪や名古屋で彫り師やタトゥー・スタジオの取り締まりが相次ぎ、逮捕者も出ています。こうした摘発に対してどう思いますか。

 おそらく見せしめでしょう。

 ――タトゥーや刺青を愛好する人たちの一方で、負のイメージを抱く人も多くいます。どのように共存していくべきだと思いますか。

 先述した通り、「負のイメージ」を持つ方々がなぜ負のイメージを持つか、感情的な理由が多くを占めるので、おそらく共存はできないでしょう。共存できるとするならば、やはり法整備ではないでしょうか。医療行為という解釈をせず罰しない、これが大前提だと思いますが、現状は真逆の風潮にあるのでおそらくハードルはかなり高いでしょう。

 ただボクのような愛好家の立場から申し上げますと、日本ほど刺青に対してヒステリックな感情を持つ国は他になく、とても息苦しく感じます。それは日本がとても凡庸を好み、奇異な個性を排除し、タブーに対してとても敏感で閉鎖的な社会を持っている証ともいえます。締め出す事は歴史を担保にしているに過ぎず、現状と向き合っていないとも感じます。

 かと思えば外国人の刺青に対しては特別違和感を表に出さない…刺青を多く施した世界的に有名なサッカー選手がCMに出演していたりするのが好例です。「たかが刺青で」と思うのは簡単ですが、日本社会の弱さ、か細さがこういったところひとつ取っても感じられてしまうのです。これでは文化面で突出した才能など日本から出てくるわけはないと感じます。

サッカー・クラブW杯で優勝し、喜ぶバルセロナの選手ら。メッシ、ネイマール、スアレスはタトゥーを入れている=2015年12月20日、横浜国際総合競技場
サッカー・クラブW杯で優勝し、喜ぶバルセロナの選手ら。メッシ、ネイマール、スアレスはタトゥーを入れている=2015年12月20日、横浜国際総合競技場
出典: 朝日新聞社


     ◇

 よこやま・けん 1969年、東京生まれ。1991年にハイ・スタンダードを結成。1999年、ピザオブデスレコーズを設立。2000年のハイスタ休止後は、BBQ CHICKENSやソロで活動。2011年には伝説的なロックフェスAIR JAMを11年ぶりに復活させ、ハイスタでの活動も再開した。2013年、記録映画『横山健 -疾風勁草編-』が劇場公開。2015年9月にアルバム『Sentimental Trash』をリリースした。今年3月に自身2度目となる日本武道館公演を予定している。

タトゥー規制に賛否の声

 医師法によるタトゥー規制について、ネット上では賛否それぞれの立場から多くの意見が寄せられました。

 「医師免許を取って彫り師をすればよい」「ガンガン取り締まれ」と現行制度を支持する声の一方、「医師免許を取った人が彫り師になるとは思えない」「タトゥー・スタジオが全滅してしまう」と取り締まりを疑問視する声もあがりました。法律以前に「刺青はヤクザがするもの」「タトゥーをしている人は威圧的で粗暴」など、刺青やタトゥーへの嫌悪感をあらわにした反応も目立ちました。

 健康被害をめぐっては、「客が亡くなったり、後遺症が出たりした場合、どう対応をするのか」と彫り師の責任を問うコメントも。医師免許とは別に、「彫り師の免許を新設すればいい」と提案する人もいました。このほか、タトゥーの芸術性をどう考えるか、温浴施設でのタトゥー客の入浴を認めるか否かなど、様々な領域にまたがって議論が百出している状況です。

 以下、ツイッター上の意見を紹介します。

「まず決めごとを守って」


「なぜこんなに目の敵に」



「芸術だけど…」


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