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お金と仕事

子どもの貧困、足りないものとは? 「魚や肉」「絵本」ネットで調査

子どもにとって、何が足りない生活が貧困なのか。ネット上のアンケートで聞いたところ「1日1回の魚や肉」「絵本や本」などの声が集まりました。

支援が必要な子どもに無料で食事を提供している団体の食堂で、晩ご飯を食べる子どもたち
支援が必要な子どもに無料で食事を提供している団体の食堂で、晩ご飯を食べる子どもたち 出典: 朝日新聞

目次

 子どもの6人に1人が貧困のもとで暮らしている日本。子どもにとって、何が足りない生活が貧困なのか。ネット上のアンケートで聞いたところ「1日1回の魚や肉」「絵本や本」などの声が集まりました。

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関連リンク:朝日新聞デジタルでのアンケート「子どもの貧困 減らすには?」

「魚・肉」「本」「靴」

 調査は朝日新聞デジタル上の企画「(フォーラム)子どもの貧困」で行いました。9項目を複数回答可で実施。10月20日から11月4日の間に1844回答が集まりました。

 最も多かったのが「最低1日1回の魚や肉」で84%の人が投票しました。次に多かったのは「年齢に合った絵本や本」で80%でした。3番目は「最低2足の靴」で78%でした。

アンケート「希望するすべての子どもに与えられるべきだと思うものは」の結果
アンケート「希望するすべての子どもに与えられるべきだと思うものは」の結果 出典:子どもの貧困どう考える? - フォーラム:朝日新聞デジタル

「部活動」や「おこづかい」にも関心

 食べ物や衣服に関わるもの以外でも、「中高生の部活動の部費や道具」(75%)、「中学生以上のおこづかい(月500円程度)」(67%)も上位に入りました。

 9項目の中で最も投票が少なかったのは「高校受験に向けての塾や通信教育」(54%)でした。

勉強する少年
勉強する少年 出典: 朝日新聞

生活の質、保障が重要 首都大学東京教授・阿部彩さんに聞く

 9つの項目は、首都大学東京の阿部彩教授の協力のもと、作成しました。選択肢は、子どもの食生活や教育、家族との時間など、子どもの生活全般に関係するもので、過去の調査で使われた指標から選びました。

 アンケート結果から見えるものは何か。阿部教授に聞きました。

     ◇

 アンケートでは、すべての項目について、過半数の回答者が「必要」と答えています。おもちゃ、自転車、おこづかいなど、勉強に直接関係しないけれど子どもの生活の質に関わるものが、6割前後の支持を得られています。部活に関するものも75%の支持があり、学校の中で勉強以外も重要だと捉えています。

 私が2003年に行った同様の調査では、生活の質に関するものは支持が低かった。当時、子どもの貧困という言葉が知られておらず、飢えているのが貧困だと思われていました。13年に法律ができて政策課題になったことにより、子どもの貧困への理解が深まったと思います。単に、将来仕事に就いて十分な賃金を得られる人になるためだけでなく、子どもの生活自体の質を保障すべきだという視点は重要です。

首都大学東京の阿部彩教授
首都大学東京の阿部彩教授 出典: 朝日新聞

「具体的イメージの共有を」

 また、私が今年3月に厚生労働省の補助金で行った市民3千人への同様の調査に比べ、今回のアンケートでは「必要」と答える回答者の割合が高いです。朝日新聞デジタルアンケートに答えた人は、関心のある人が多かったのでしょう。

 このアンケートは、子どもにとって何が最低限の生活レベルなのか、社会的に合意できるところはどこかを探る方法です。英国で開発され、今、欧州などで普及しています。日本の子どもの貧困率は16.3%ですが、これは所得だけからはじき出しており、実際にどんな生活をしているのかピンときません。具体的イメージが共有されないと最低限何を保障すべきなのかが見えてきません。

勉強する子どもに付き添うボランティアの女子学生
勉強する子どもに付き添うボランティアの女子学生 出典: 朝日新聞

「社会の合意、政策につながる」

 この方法では、市民の過半数の支持があれば、それはその社会で生きる子どもにとって必需品と位置づけます。その必需品が欠けている状態を貧困の指標の一つとします。本来必要なものが与えられていないという意味で、物質的はくだつ指標と呼ばれています。欧州連合(EU)では、貧困状態の人数の削減数値目標を設定しており、目標を実現するために指標を用います。

 もし、子どもが3食食べることが必要じゃないと思っている人が過半数であれば、食べ物の支援が必要だと言ってもインパクトがありません。すべての子が与えられるべきだという社会の合意があり、3食食べられない子がどの程度いるのかを調べ、食べられるようになる方法を考えることが、政策につながります。

「子どもの貧困対策法」制定を求め、東京・渋谷の繁華街をデモ行進する人たち=2013年5月
「子どもの貧困対策法」制定を求め、東京・渋谷の繁華街をデモ行進する人たち=2013年5月 出典: 朝日新聞

「数値目標ない日本」

 EUは、大人を含めた全体版と、子どもの指標を策定しています。子どもの指標には「最低1日1回の魚や肉」「最低2足の靴」のほか、「特別な時のお祝い」や「1年に最低1週間、家を離れて休暇を過ごす」など18項目あり、すべて過半数の支持があります。

 日本では子どもの貧困対策法ができましたが数値目標はありません。

 アンケートに寄せられたいくつかの意見では、親の責任論が強く主張されていました。精神的、社会的適応に課題を抱える親もおり、その場合は親に対する介入が必要です。ただ、「悪い親」のもとに生まれたからと言って、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む」権利がなくなるわけではありません。すべての子どもに保障すべき生活の中身について社会的に合意し、親への介入も含めて対策を考える必要があると考えます。(聞き手・中塚久美子)

関連リンク:朝日新聞デジタルでのアンケート「子どもの貧困 減らすには?」

<貧困率> 世帯収入から子どもを含めて一人ひとりの所得を試算し、その国でまん中の人の所得の半分に届かない人の割合です。日本の場合、ひとり親など大人が1人の家庭に限ると54.6%(2014年発表)で、先進国のなかでも最悪の水準です。

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