お金と仕事
ソシャゲの課金「実はありふれたビジネスモデル」 AKBと共通点?
依存性、ギャンブル性への批判があるゲーム課金。社会の理解を得て、娯楽として定着するには何が必用なのでしょう?
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依存性、ギャンブル性への批判があるゲーム課金。社会の理解を得て、娯楽として定着するには何が必用なのでしょう?
スマホなどのソーシャルゲームでお金を払う課金プレイ。お酒やたばこのような依存性や、ギャンブル性が指摘され、あまりいい顔をされません。一方、そのビジネスモデルは、一部のヘビーユーザーに課金し、ほとんどのユーザーは無料で遊べるフリーミアムという仕組みになっています。お金がある人と、時間がある人が、それぞれの価値を交換してゲームを楽しんでいる。そんな側面もあるゲーム課金が、今後、社会の理解の上で娯楽として定着するには何が必要なのでしょうか?
ソーシャルゲームは、人と人とのコミュニケーションを伴うゲームを指します。1人で遊んでクリアをめざすのではなく、ゲームの世界で他のユーザーと会話をしたり、アイテムを交換したりして、遊びます。
ゲームの多くは基本的に無料です。ただし、ゲームを早く進めたり、珍しいアイテムを手に入れたりしたくなった人は、お金を払ってアイテムを買うことができます。その結果、大多数のユーザーは無料で遊ぶ中、一部のヘビーユーザーが多額のお金を払う構図ができあがります。ゲーム会社はヘビーユーザーが払うお金によって収入を得ます。
慶応大学の田中辰雄准教授(経済学)は、無料ユーザーと課金ユーザーが混在している点では、アニメのDVDやLINEのスタンプと同じだと主張します。
アニメの場合、テレビの視聴者は無料で見ることができます。制作会社はその後、DVDにしてレンタルしたり、パッケージとして販売したりして、利益を得ます。DVDボックスなどを買うのは、アニメの熱烈なファンです。LINEも、無料スタンプを楽しむユーザーが多い中、一部のユーザーはお金を払って好みのスタンプを手に入れます。
また、AKB48グループは、メンバーの順位を決める総選挙に合わせて、投票券つきCDを販売します。田中准教授は、新曲自体がYouTubeで無料公開されているものが多い中、何十枚ものCDを買って順位を上げようとするファンがいる構図には、ソーシャルゲームと共通する点があると指摘します。
「ソーシャルゲームのビジネスモデルは、実は、ありふれたもの。この仕組みは、ニコニコ動画やクックパッドなど、多くのインターネットサービスとも共通している」と言います。
では、なぜ、ゲーム課金には「健全なビジネスモデルではない」という批判が起きるのでしょうか? 田中准教授は、依存性と賭博性が強調された面があると見ています。
ゲームを早くクリアしたいため、多額のお金を使ってしまう依存性。ランダムにしか入手できないアイテムのため、何度も課金を繰り返す「ガチャ」の賭博性。お酒や、公営ギャンブルのような規制がない状態に対して、消費者庁などに苦情が寄せられる事態にもなりました。
それらの問題点について、田中准教授は、ゲームの仕組みを工夫することで、健全性をアピールすることができると言います。
ヘビーユーザーと無料ユーザーの間には、ゲームの進み方に差が生まれます。例えば、ゲームを長くプレイするだけで獲得できる「体力ポイント」のようなもの(「体力ポイント」があると簡単にゲームオーバーにならない)と、課金することで手に入る強力な武器を交換させる。そのことで、無料ユーザーの「時間」と、ヘビーユーザーの「お金」の交換が成立します。
また、「ガチャ」についても課金目当てにルールを変えたりせず、お金を払わなければ獲得できないアイテムを作らないことが必要です。
田中准教授によると、実際、アイテムの交換を廃止したり、1カ月あたり最低でも3万円以上ないとゲームが楽しめないような「ガチャ」の設定をしたゲームは、ユーザーの反発を買い、人気が急落したそうです。
今後、ソーシャルゲームが健全な娯楽として定着するには何が必要か。田中准教授が提案するのが、教育など「社会の役に立つ」分野に活用できるソフトの開発です。代表例としてあげるのが、任天堂がニンテンドーDSで発売、ヒットさせた「脳トレ」です。
また、ランキングの上位に人気が集中しやすいことから、メーカーは1度ヒットしたゲームの続編を作りたがる傾向にあります。その結果、新しいゲームタイトルが生まれにくくなり、業界としての活力が失われてしまう可能性があります。
田中准教授は「マンガやアニメ業界は、同人誌のようなファンコミュニティから生まれたコンテンツを取り込んで、活性化をはかっている。ソーシャルゲーム業界が見習う点は少なくない」と話しています。
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