お金と仕事
ドンキ、神ワザPOP職人を500人も採用していた 売上6千億円
ディスカウント店ドン・キホーテには「POP職人」という専門職があります。売上を左右するPOPをつくるためだけに、500人以上も採用しています。
お金と仕事
ディスカウント店ドン・キホーテには「POP職人」という専門職があります。売上を左右するPOPをつくるためだけに、500人以上も採用しています。
世の中にはいろんな職業があります。ディスカウント店「ドン・キホーテ」には「POP職人」と呼ばれる仕事があります。
POPとは「point-of-purchase」のことで、売り場で商品名や価格、キャッチコピーなどをイラストを駆使しながら紹介しているアレです。
売り上げを左右するPOPをつくるためだけに、店ごとに専門職を置いているのです。その狙いや仕事ぶりを調べてきました。
ドンキ店内に入ると感じる、あの独特の雰囲気。
迷路のような陳列方法もさることながら、「ドンキ文字」と呼ばれるフォントが使われた数多くのPOPも一役買っています。
まずはこの動画をご覧ください。
ドンキが9月にYouTubeにアップしたこの動画。職人がPOPを仕上げるまでの様子を早送りにしたものです。
わずか2分18秒ですが、そのすごさが伝わります。
なんと、あのPOPは実は手書きで、しかも店舗ごとに書き手がいるようです。
さっそく、本部POP課のマネージャー・手塚基宏さんに話を聞きました。
手塚さんによると、POP職人は店舗ごとに1人から3人配置されています。
グループ全体では500人以上になるそうです。
基本はアルバイトで経験不問。やる気と人柄を重視して採用しているそうです。
実際、3分の1ぐらいの人は未経験者だといいます。
なぜ、専門職を置いているのでしょうか?
「POPとは『スタッフの代わりに接客する存在』で、ドン・キホーテらしさそのものだと考えているからです。買い物を楽しむ場所としてアミューズメント性を演出し、手書きにすることで担当者の思いがお客さまに伝わると信じています」
店舗ごとに置く理由は?
「地域のことをよく知る担当者が、地域のお客さまに対して商品の魅力を最大限伝えるためです」
店ごとに仕入れの権限があるため、売れ筋や売りたい商品が違うことが背景にあります。
YouTubeに投稿された動画に登場したPOP職人、本宮由貴子さんに話を聞きました。
本宮さんはPOPづくり一筋16年の職人です。
これまで新宿→中野→中目黒とドンキの店舗を渡り歩いてきたそうです。
Q どうしてPOP職人になろうと思ったんですか?
A もともと美容師の見習いをしていたんですが、シャンプーのしすぎで手が荒れて仕事ができなくなったんです。そんなとき、雑誌の裏にあったPOPライターの通信講座が目に止まりました。半年ほどで修了した後、ドンキで働くことになりました。
Q 1日に何枚くらい書きますか?
A 多いときで60枚ほどです。製作期間はどんなに長くても1週間ほど。季節モノやお店が特に力を入れている商品などは優先します。
Q POPは自由につくれるんですか?
A それぞれの「買い場」の担当者から書式の決まった依頼書が届きます。それを見て、担当者といっしょに「文字はもっと少ない方が見やすい」とか議論した上でイメージを固めてから製作に取りかかります。
(※ドンキでは。売り場のことをお客の立場から見て「買い場」と呼んでいます)
Q 気をつけている点はありますか?
A 「目に付きやすいか」「商品イメージにあっているか」といった点ですね。実際にお店に掲示すると印象が違うこともあるので、掲示されたら見に行って確認しています。
Q あの独特の丸くてテカテカした文字、書くのは大変じゃないですか?
A 社内でも「ドンキ文字」って呼んでいます。一応、お手本があるんですが、すでに身に染みついているので、ほとんど見ません。場合によっては見やすさ重視で、お手本を応用して仕上げることもあります。
Q この仕事のやりがいはどんなところですか?
A つくったものをすぐ使ってもらえて、お客さまからの反応もある点ですね。以前、ハロウィーン用にスチロールで立体的なお城をつくったときに「これは買えないのか」って言われたと聞きました。やっぱり、うれしかったですね。
笑顔がすてきな本宮さん。この仕事で大切なのは、スキルもさることながら「コミュニケーション能力」のようです。
全国280店舗以上、グループ全体の売上が6000億円を超えるドンキ。
本部で作ったPOPを各店に送るのではなく、本宮さんたち現場のPOP職人がそれぞれの技術と「作品」で支えています。
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