ネットの話題
さすらいchさんからの取材リクエスト
さいたま水族館さんが自然環境の調査や研究に力を入れていると聞きました。その取り組みを知りたいです。
「映える魚」あえて展示しない理由 「海なし県」埼玉の水族館
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さいたま水族館さんが自然環境の調査や研究に力を入れていると聞きました。その取り組みを知りたいです。
最近、さいたま水族館さんが本腰をあげて、自然環境の調査や研究に取り組んでいるXの記事とHPを見ました。埼玉県でそのような自然環境を守るために研究や草の根の活動をされているのは地域密着の水族館としても素晴らしいと思っています。
特に学芸施設として県内で大々的に広報している施設もなかなかないので、現在の保全や研究活動をするにいたった経緯や、そのモチベーション、今後の野望(県内の研究者との連携の仕方や埼玉の自然をどう守っていくか)などをぜひ事例として取材してほしい。 さすらいch
さいたま水族館は、地元の生き物について目を向けてもらい、身近な環境の大切さを知ってもらうことに力を入れています。
県内に生息する生き物たちの状況なども調べながら、多くの人へ情報発信をしていく水族館を目指して活動しているそうです。
さいたま水族館は、埼玉県の北東部・羽生市にあります。淡水魚がメインの全国でも珍しい水族館です。荒川に住んでいる魚を中心に約100種類の生き物を展示しています。
飼育課長の藤嶋浩義さんは、「この水族館には、デートスポットになっているような水族館によくいる派手な魚や見栄えのする魚はいないんですよ」と言い切ります。
水族館を見て回ると、ドジョウ、ナマズ、コイ…。確かに地味な魚ばかりです。しかし、これには理由があります。
「きらびやかな見栄えのする魚を展示してしまうと、地味な魚は注目されにくくなってしまう。そういう意味で、なるべく地元の生き物たちに注目してもらえるような展示構成になるように工夫をしています」
ただ魚を鑑賞するだけでなく、自然環境に触れる機会を提供し、生物多様性の大切さを伝える場所にしたいと考えているそうです。
埼玉県は、関東平野の真ん中にありますが、地形は変化に富んでいます。西側の秩父地方は比較的高い山がありますが、羽生市のあたりは平地で湿地や田んぼが広がっています。さいたま市は都市化が進んでいますが、探せば自然が残っています。
「埼玉にどんな魚がいるのか聞かれても、『イメージがわかない』とか、『小さい魚しかいない』と思っている人が多いと思います。しかし、それぞれ地域によって生態系が違い、生物多様性が幅広くある場所だということを知って欲しいと思っています」
水族館では、国内では埼玉県にのみ自生地のある魚・ムサシトミヨや食虫植物のムジナモを展示しています。
ムジナモは、水中のミジンコなど主にプランクトンを食べて生きています。プランクトンを捕らえるときのスピードは100分の1秒とも言われ、「最速の植物」の異名も持ちます。かつては関東地方の利根川流域では身近な水生生物でした。しかし、農薬や化学肥料の使用による水質汚染もあり減少し、現在は水族館の近くにある沼が国内唯一の自生地として残っている状況です。
ムサシトミヨも、かつては東京にもいました。しかし、ムサシトミヨが住む水温の低いわき水がある環境が埋め立てられたり、地下開発で地下水が枯渇したりしていつしかいなくなってしまいました。現在では、埼玉県の元荒川最上流域が唯一の生息地です。
藤嶋さんは、「埼玉にしかいない貴重な生き物がいることを知って欲しいし、こうした貴重な生き物を守るために地元の人たちが協力して頑張っていることも分かってもらい、環境を守る大切さに気づいてもらえれば」といいます。
さいたま水族館は1983年に開館しました。当時と現在とでは埼玉県内の自然環境は大きく変わり、生息している生き物たちの状況も日々変化しています。水族館は、飼育、繁殖だけでなく、県内に生息する生き物たちの状況なども調べながら多くの人に情報発信をしていくことも目指して活動しています。
県内の生き物の調査に当たっている学芸員の荒井康充さんは「水族館の外に出て調査活動をしたことで、僕らが今まで知らなかった情報に出会ったり、今まで発見されていなかったものが比較的身近なところで見つかったりもしています」と話します。
2024年に水族館がある羽生水郷公園の複数水域で調査を実施したところ、環境省と埼玉県の絶滅危惧種や、これまでこの水域で確認された記録のない種を含む湿地性コウチュウ目とカメムシ目の昆虫の生息が確認されました。
埼玉県内で絶滅に近い状態だとされているタガメについて、「県内で見つけた」という情報が複数寄せられ、2025年にはそれらの記録をまとめて論文を発表しました。
学校のプールにたまっている水に住む生物についての調査もしているそうです。
こうした活動が知られるようになる中で、水族館に生き物に関する様々な情報が集まるようになってきたそうです。
藤嶋さんは、「水族館って情報が集まって来やすいんですよ」といいます。「『変わった生き物を見かけた』とか、『よく分からない生き物がいる』と市民の方が思った時に、研究者さんにアプローチするのはなかなか大変じゃないですか。水族館ってそういう意味では少しハードルが低くて、とりあえず分からなかったらちょっと水族館に聞いてみようかみたいなこともあるので」。
県民に身近な水族館ならではの垣根の低さを生かして情報の拠点となり、研究者とのハブとしての役割も果たしていきたいと考えています。
荒井さんは、埼玉の水辺の生き物の多様さを知り、環境を守る大切さに気づくきっかけとして水族館を利用してほしいと話します。「まずは身近な生き物たちを知っていただくことで、そこから気になる部分もどんどん調べてほしい。自分の足元にある身近な環境でも発見や研究につながる未知なる生物がいるんだと気づいてもらえたらうれしいなと思っています」
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