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「無鉄砲」芸人ハリウッドザコシショウ、後輩を〝王者〟へ導いた助言

コンビ時代から変わらない芸風と魅力

ピン芸人のハリウッドザコシショウ=2024年、古畑航希撮影
ピン芸人のハリウッドザコシショウ=2024年、古畑航希撮影 出典: 朝日新聞社

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自らが放送枠を買い取って番組を制作するなど、昨今は思い切った行動力でも注目を浴びるピン芸人のハリウッドザコシショウ(以下、ザコシ)。2021年から『R-1グランプリ』(フジテレビ系)の審査員を務め、地元・静岡で冠番組を持つ順風満帆のベテラン芸人は、なぜわめき散らす「野良」であり続けるのだろうか。(ライター・鈴木旭)

『おぜえTV』のゆるいエモさ

「自分のネタに振り落とされそうになってるザコシが俺は好きなの。『いやいや、ここで振り落とされたら俺……』って思って、持ち直した瞬間からの‶倍キレてやる次のネタ〟が好きなの。鼓舞しながらやる感じのやつが」

1月22日放送の『提供ハリウッドザコシショウ』(テレビ神奈川、以下tvk)の中で、ピエール瀧はザコシの魅力をこう語った。同番組は、ザコシが自腹でtvkの放送枠を買い取り、制作費や出演料も全額出資したうえ、構成・演出まで担当する異例のバラエティー特番だ。

2023年、2025年に続く第3弾となる今回は、ザコシがブレーク前からお世話になっていた『ピエール瀧のしょんないTV』(静岡朝日テレビ。2010年~2019年終了)の出演者であるピエール瀧と広瀬麻知子元アナを招集。番組が終了して以来、7年ぶりの共演を実現させた。

番組タイトルは『おぜえTV』。元の「しょんない=静岡の方言でしょうがない、しょうもない」をなぞらえて「おぜえ=静岡の方言で粗悪な、ボロい」と名付けたのだろう。あまりに収録を楽しみにしていたのか、ザコシはオープニングから「このツーショットいいね! 久しぶりだねぇ、おい」とテンション高め。

ひとしきりして、瀧が「……終わりました?」と振ると「ひとくだり終わりました」と笑顔を見せるザコシ。かつての空回りがよみがえった。

その後のトークパートでは、2018年に広瀬が結婚を発表して秘かにザコシがショックを受けていたこと、2021年からザコシが『R-1』の審査員を務めるようになり瀧がムズムズしていた話などで盛り上がる。

程なく、ザコシが「動物と接する時の坂上忍」といった誇張ものまねを至近距離で披露して現場を沸かせ、続けて『しょんないTV』で恒例だったザコシのファミコン企画を実施。「瀧vsザコシ ファミコン三本勝負」と題して行われた対決は、普段からプレイしているザコシが早々に2連勝した。

瀧がこれに不満を漏らしたことから、最後のゴルフ対決は「どちらも目をつむり、打つタイミングは広瀬さん任せ」というルールが発動。この一戦を制したほうが三本勝負の勝者、ということで合意する。ここで広瀬がショットのカーソルが動く前に「GO」を出す天然ぶりを見せ、ルールそのものが崩壊するも結果的に瀧が勝利する。

しかし、瀧は次回があることに期待を込めて「引き分け」にしようと提案。ハートウォーミングな展開でエンディングを迎える中、広瀬が「また、どこかで」とドライな言葉を放つシーンも含め最後まで絶妙なゆるさを醸していた。

ピエール瀧=2024年、村上健撮影
ピエール瀧=2024年、村上健撮影 出典: 朝日新聞社

やりたい放題の冠番組

今年もABEMAの『MAD5』(全5回)で大暴れし、『ケンドーコバヤシのキャベリバ鑑定団』(TOKYO MX)で全国のトップキャストを前にボケ倒すなど我が道を突き進むザコシ。そんな中、地元・静岡の冠番組『冠ザコシの冠冠大冠』(SBSテレビ)は、とくに生き生きして見える。

2024年11月から全5回の単発特番が放送され、昨年4月からは月1回のレギュラー番組としてスタート。ジャック豆山、だーりんず・松本りんすら、所属事務所「ソニー・ミュージックアーティスツ」の後輩が出演するゆるい回もあるが、意外と作り込まれた回や中川家のふたりと大阪時代を振り返る回など、見応えのある企画も少なくない。

例えば、「ザコシ大爆笑」(『ドリフ大爆笑』の「もしもシリーズ」を模した企画)の中で披露された「もしもサバイバルゲームの主人公がテレビ局で漫談に挑んだら」。

楽屋にいるザコシが番組台本をゲットし、ゾンビと格闘しながら廊下を抜けてスタジオで漫談を披露するまでを描いたものだが、「壁に向かって走る」「一定の画角を外れると無駄にカットが切り替わる」など、初期のバイオハザードのツッコミどころをリアルに再現している。ゲーム好きならではの凝った演出に腹を抱えながらも感服してしまった。

また、昨年10月、11月と2回にわたって放送された「G★MENS 一夜限りの再結成」では、ザコシの元相方で今は会社員の静岡茶っぱが登場。オープニングから「バウーン! ……メーター振り切っちまいました」と指で針を示して白目を見せるはっちゃけぶりにザコシは大喜びする。

茶っぱは、静岡県立清水工業高校(現・県立科学技術高校)の同級生。1年生の頃にザコシと同じクラスになり、シンガーソングライター・大江千里の『おねがい天国』をものまねするザコシを見て「リズム感がすごい」とその才能に惚れ込んだ。目をつむり苦い顔で奇声を上げるザコシの芸風は、相方の茶っぱから引き継いだもの。そもそもふたりは笑いの感性が似ていたのだ。

番組では、映画『ビー・バップ・ハイスクール』のロケ地となった清水駅前銀座商店街を歩き、不良ばかりだった当時を回想。その後、気絶で美味しさを表現する食リポで盛り上げ、NSC大阪校で同期だったケンドーコバヤシに茶っぱが胸ぐらをつかまれたエピソードなどを披露し、最後はG★MENSとして不条理なショートコントをぶっ放すというやりたい放題の内容だった。

茶っぱによると、2002年のコンビ解散時にザコシは「お前が一般人になっても、俺が売れて必ずお前を番組に呼ぶからな」と語っていたという。2008年にテレビ共演を果たしてはいるが、静岡で冠番組を持ち実現したところにグッとくるものがあった。

ハリウッドザコシショウ=2024年、古畑航希撮影
ハリウッドザコシショウ=2024年、古畑航希撮影 出典: 朝日新聞社

アドバイスで後輩が飛躍

コンビ解散後、ザコシは漫画家を目指したこともある。しかし、某出版社の編集部に4コマ漫画を持ち込んだところ、「こんなつまんねえ漫画初めて見たわ。お笑いの勉強したほうがいいよ」と言われ、「ふざけんじゃねぇ!」と奮起し再び芸人の道を歩み出した。

2007年に『あらびき団』(TBS系)がスタートし、『キン肉マン』のアシュラマンに扮した漫談などで頻繁に登場するもブレークには至らず。しかし、2009年にYouTubeチャンネルを立ち上げてチープかつシュールな動画を配信し、2010年代から『しょんないTV』のファミコン企画に登場するなど着実に足元を固めていく。

2016年の『R-1ぐらんぷり』で初めて決勝に進出し、優勝。ここでフリップを使った誇張ものまねがウケにウケる。両手をグルグル回して耳に手を当てる野々村竜太郎元議員や「ハンマーカンマー」などと謎の語りを続ける古畑任三郎といったネタを立て続けに披露した。メディア対応を踏まえ、衣装を白ブリーフから黒パンに変更した点も功を奏したのかもしれない。以降、バラエティー露出も増加していった。

2018年、2019年の『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』(Amazon Prime Video)では裸一貫で繰り出す芸とYouTubeチャンネルに見られるシュールな動画などを武器に連覇を果たし、前述の通り2021年からは『R-1』の審査員を務めるように。その一方で、事務所の後輩たちにも目を配った。

バイきんぐとは、2005年から2カ月に1回新ネタ6本を披露する合同ライブを開始。小峠英二が3年を区切りにやめようとした折、ザコシは「もう1年やったら絶対『キングオブコント』決勝に行ける」と説得。これを受け入れ、もう1年踏ん張ってできたネタ「帰省」で2012年の『キングオブコント』王者となっている。

アキラ100%は、事務所主催のライブで局部を隠すアクションのネタを披露した折、ザコシから「あれええな」と言われたことで自信を持ち、2017年の『R-1』で優勝。錦鯉は『M-1グランプリ』で結果がふるわない時期、ザコシから「バカを全面に押し出せ!」とアドバイスされたのをきっかけに長谷川雅紀の「こ~んに~ちは~!」から始まる漫才を考案。2021年の『M-1』王者となった。

ただ、ザコシはあくまでも‶無鉄砲な芸人〟というスタンスを崩さない。『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)では相変わらず銅鑼(どら)を叩きながらわめき散らして登場し、レトロなファミコンゲーム「魔界村」や「スパルタンX」でプレイヤーが倒されてしまう滑稽なシーンも忘れた頃に披露する。

いまだに、同期の中川家と共演すればマニアックなものまね合戦となり、なだぎ武が番組のゲストにくればスーパーファミコンのプロレスゲームのヘンテコぶりに大笑いしている。そんな仲間たちと過ごした下積み時代が、ザコシの芸風を決定づけたのだろう。

前述の『おぜえTV』の中で、瀧はザコシを「野良」だと表現していた。それは、ザコシにとって何よりも手放したくない称号かもしれない。

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