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話題

〝辞書から消えたことば〟かるたにしたら、想像以上に盛り上がった

辞書から削除された言葉を集めたかるた
辞書から削除された言葉を集めたかるた 出典: 三省堂国語辞典かるた

目次

年末年始、人と集まる機会に、ちょっといつもと違う遊びがしたいーー。いま、辞書から消えてしまった言葉を集めた「かるた」が、アナログゲーム界隈で話題になっているそうです。「こんな言葉あったっけ?」「これ、懐かしい!!」など、世代を超えて忘年会や新年会が盛り上がるのでは? withnews編集部でも遊んでみました。

〝勉強の友〟のままじゃ、もったいなさすぎる!

話題になっているのは、「三省堂国語辞典かるた」。『三省堂国語辞典(三国〈サンコク〉)』から改訂時に削除された懐かしい言葉を集めた「昭和・平成編」と、最新版の『三国』・第八版に入ったばかりの新しい言葉を集めた「令和編」の2種類です。

二つのかるたは2025年9月に発売され、同11月に開かれた国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」では、即日完売する盛況ぶりだったとのこと。

でも、なぜ辞書のかるたが?
三省堂国語辞書編集室に聞いてみました。国語辞書編集者で、かるたの企画立案などに関わった神戸郁人さんは「辞書って〝勉強の友〟のイメージで、学生時代に買うことが多いですよね」と話し始めます。

「でも、いつの間にか、本棚から出す機会がほとんど無くなっていたりしませんか?」 ええ、たしかに、筆者ももうどこにあるか所在すら思い出せません……。「それ、もったいなさすぎるんです! 国語辞典って読み物としてめちゃくちゃおもしろいんですよ!」と神戸さんは熱弁します。

「読み物としてめちゃくちゃおもしろいんですよ!」と国語辞書編集者・神戸郁人さん
「読み物としてめちゃくちゃおもしろいんですよ!」と国語辞書編集者・神戸郁人さん

辞書は改訂する際に、様々な観点で「当たり前に使っていた言葉」を見直し、時代感覚に合っているかどうかなどを議論します。

「個人的には、まるで昔、辞書を作った人と対話する感じです。編集の過程で色々な辞書を読み比べることもあるのですが、『三国』は特に新語に強く、『日本語の真空パック』という側面を持つと思ってきました。様々な機能の一つとして、ある言葉が使われていたときの体温とか社会の空気感をパッケージするイメージです」

国語辞典をそんな目で見たことはなかった……。確かにもったいない気がしてきました。

そんな「国語辞典の可能性」をもっと世に広めたいと考え、歴代『三国』から改訂時に削除された言葉だけを収録した書籍『三省堂国語辞典から消えたことば辞典(消えたことば辞典)』を「昭和・平成編」のかるたに活用。『消えたことば辞典』の編著者である見坊行徳さんが、スマートフォンで読める、かるた両編の全掲載項目の電子版語句解説書も執筆してくれました。

スマホよりも小さい手のひらサイズのかるた
スマホよりも小さい手のひらサイズのかるた

また『三国』の編者や編集者といった「先人たちの功績」をフル活用して、手軽に言葉にまつわる記憶を引き出し、年代が異なる人たち同士で味わえるという「新たな価値」を付加したそうです。

言葉の意味を推測するゲーム「広辞苑かるた」を手がけたForGamesや、国語辞書にまつわるボードゲームを制作するピグフォンからも、かるたの仕様や発展ルール作りなどの面で協力を得て、「国語辞書の可能性に賭けた人々がみんなで知恵を絞り、情熱を形にした商品」にしたとのこと。

世代を超えて楽しめるのか!?

でも、実際やってみないとその楽しさは分からない! ということで、Z世代からバブル世代のメンバーを集めて、遊んでみました。

菅光記者
昭和42年生まれのバブル世代

 


山野拓郎記者
昭和60年生まれのゆとり世代?

 


川村さくら記者
平成9年生まれのZ世代

 

まず昭和のホープ菅さんが手のひらサイズのデザインに着目。「おお、辞書っぽくなってる」。

限られた場所でも遊べる小型なカルタは辞書好きにもたまらないデザインです。「昭和編は、よく見るとちょっと印刷をにじませて、古めかしい感じにしたり、デザイナーのこだわりが光ってるんですよ!」と神戸さん。

おわかりいただけるだろうか……
おわかりいただけるだろうか……

まず遊んだのは【昭和・平成編】。

机に取り札を並べると、さっそく悲鳴が上がります。


川村さくら記者
「これ、全然分からんぞ! なんだ『コギャル』って!?」と平成一桁生まれの川村さん。


「え!?待って待って、うそでしょ、コギャルさえも?」と耳を疑うのは筆者松川希実42歳。「普通の〝ギャル〟と何が違うんですか?」との返答に、一同愕然とします。

同僚との世代間ギャップを初めて痛感した瞬間でした。

最ベテランの菅さんも頭を抱えています。

菅光記者
「俺もわかんないのあるな……『ア式蹴球』なんて、昭和でもだいぶ前の昭和だよね」。



そう、戦前まであるのが昭和。深いぜ、昭和。

基本ルールでは、順番に読み札を読んで行きます。分かった人が取り、間違った人は札を戻し、最後に一番取り札が多かった人が勝ち。

言葉を知ると世界が広がる

最初の読み札は【テレビ・ラジオなどを見たり聞いたりしながら他の仕事する人たち】

菅光記者
「え、意味から来るの?」


川村さくら記者
〝内職〟…とかないですもんね  


山野拓郎記者
スッ……(無言で指さし)「ながら族」  

菅光記者
あ~!! 言われたらわかるわ!


川村さくら記者
てか、昭和って「族」好きですよね~!

神戸さんはすかさず「それですね! この取り札の裏の二次元コードをスマホで読み込んでみてください。言葉の解説が読めるんです! ほら、「族の変遷」も調べられる!」

三省堂国語辞典かるた電子版国解説書
三省堂国語辞典かるた電子版国解説書


川村さくら記者
ほんとだ! 「みゆき族」とか「竹の子族」とか……。


世代間の会話が弾むきっかけも用意されています。

僕の辞書にはなかった……

次の読み札は【一生懸命に努力する主義】。そんな、精神論みたいな言葉、本当にあったんですか?

菅光記者
これは「がんばりズム」だ!


即答できちゃう菅さんは、やっぱり「がんばりズム」だったんでしょう!?

菅光記者
……僕の辞書にはなかったですね。


かるたを通じて、先輩の〝リアル〟な新人時代に思いをはせることもできます。

さあ、次の読み札は【伝統や世間の常識を気にしないで、自分がしたいとおりのことをして生きること】


川村さくら記者
「小荷物」? 荷物を小さくして、動き回りそう…………。

ミニマリスト的な方向から連想を始める川村記者。すかさず菅さんが助け舟を出します。「使い方としては『あの人○○なー』とかだよ」


川村さくら記者
「闇将軍」!!

※「闇将軍」=かげにかくれて、権力をふるう人(三省堂国語辞典かるた電子版国解説書より)

スッ……(無言)
スッ……(無言)

正解です! 知ってたんですか?


山野拓郎記者
いや、他の語と比較して推測しました……!

山野記者の推理力が光ります。

Z世代の猛追

続いての読み札は【歩幅が大きい……】(言い終わる前に)


川村さくら記者
はいっ!!「コンパスがながい」!! これは中学の時に読んだ小説で、出てきたんで知ってるんですよ!


川村さくら記者
でも、友達に「あの人コンパス長いもんね」って言ったら、「何それ?」って言われちゃいました。平成で通じる言葉ではないなって痛感した思い出……。

川村さんの意外な読書記録と、切ない過去にそっと蓋を閉めつつ、次に進みます。

読み札の一部
読み札の一部
【在来線のレール幅を新幹線と同じにし……】


川村さくら記者
あ、「ADSL」ですか? 

国語辞書編集者・神戸郁人さん
国語辞書編集者・神戸郁人さん

「ちがいます! え、『SL』だから……!?」と神戸さんも驚きます。答えは「ミニ新幹線」。国内では山形新幹線と秋田新幹線だけ、と神戸さんが補足します。


川村さくら記者
初めて聞く言葉! へぇ~、言葉を知ると世界が広がりますね!

「良いキャッチフレーズ出ましたね!」と神戸さん。

「でもその言葉、もう辞書からなくなってるんですよね……」と思わず突っ込んでしまう筆者・松川。

菅光記者
……そういう世界があった、って、よみがえってくるってことだよね。



さて、昭和・平成編の優勝者は、ベテラン菅さんと、Z世代の川村さんが同率という意外な結果に。「川村さんの中学時代の読書が効いたね」と菅さんも一目を置きます。

取って「なるほど」と思うだけでなく、言葉にまつわるそれぞれの思い出やエピソードが聞けて、確かに会話が盛り上がりました。

競われたのは「知識」よりも……

続いて挑戦したのは【令和編】。2010年代後半以降に、特に広く普及し、一過性の流行語ではなく、生活に定着している言葉を集めたものだそうです。


川村さくら記者
これは見覚えある言葉ばかり! ぜひ1人勝ちしたい!

【令和編】
【令和編】

菅光記者
あれ? 俺も分かるな。
あ、そか、一応、俺もまだ令和に生きてるしな。


川村さくら記者
確かに!(笑)

同じ時代を生きているメンバー。さあ、勝負が分からなくなってきました。

【自分を犠牲にして家畜のように会社に尽くす】

菅光記者
はい「社畜」!(速っ)

菅さん、そこで、そんな早く反応しちゃだめです!

菅光記者
まあ、その一員としてね……。



【つばが飛ぶのを防ぐために会話をしないで食事すること】


川村さくら記者
はいっ!「黙食」

はやい~~! コロナ禍に、みんな散々、原稿で書いたはずなのに、Z世代の動体視力と反射神経の前には、手も足も出ません。

次の読み札は【のんびりとくつろぐこと】

白熱するかるた大会をのぞきに来た高橋末菜部長が突っ込みます。「え、チルって、寒いってことじゃないの?」

Z世代の川村さんが「いや、お酒とか飲みながら、のんびりしよう~みたいなやつですよ! 川辺でチルろうぜ~、とかって使います」。

同じ時代を生きていても、生活圏が違うだけで、お互い分からない言葉もあることに気づかされます。

それを互いに教え合ったり、Z世代が部長に例文を〝伝授〟する光景には、どこか心があたたまったり。
【周囲の車を挑発したりする……】

川村記者・高橋部長)はい!(同時)

「あ~まちがえた!『あおり運転』がここにあるのは知っていたのよ!」と悔しがる高橋部長はお手つき。

取り札の場所は分かってるのに、体が思うように反応しない、あるある。
取り札の場所は分かってるのに、体が思うように反応しない、あるある。

いつの間にか、部長も参戦するほど盛り上がったかるた大会。令和編の優勝は圧倒的にZ世代・川村さんで終わりましたが、これは知識よりも反射神経が競われた印象でした。


かるたには、ほかにも令和編と昭和・平成編を混ぜる遊び方や、読み札を集めて共通項を見つけて「コレクション」するハンティングゲームなど、応用ルールでも遊べるそうです。

詳しくは、三省堂国語辞典かるたの紹介ページで。

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