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お金と仕事

年齢上がるにつれ〝バリアフリー住宅検討〟 「最初から備える」提案

「『ちょっと困っている人たち』のニーズを…」

共同研究について話をする参加者たち。手前がLIFULLの担当者・龔軼群さん=LIFULL提供
共同研究について話をする参加者たち。手前がLIFULLの担当者・龔軼群さん=LIFULL提供

目次

年齢を重ねると、バリアフリー住宅への住み替えを検討する人が増える――。住宅情報サイトを展開する企業の調査ではそんな傾向が明らかになってきましたが、担当者は「後から整備するなら、最初から備えた方がコストは抑えられる。スタンダードを変えていった方がいいのでは」と指摘します。なぜ住宅のスタンダードに「ちょっと困っている人」の声が届きづらいのか、話を聞きました。

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東大などと産学連携で研究開始

住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」などを展開する「LIFULL」は、建築設計事務所「日建設計」・日建グループのシンクタンク「日建設計総合研究所」・インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU(クルム)」・東京大学と共同で、住宅に関する課題やニーズについての共同研究を始めました。

その一環として、LIFULLとCULUMUが実施したのが「バリアフリーに関する意識調査」です。LIFULLの担当者・龔軼群(キョウイグン)さんは「一般の人たちはバリアフリーや、インクルーシブについてどう思うのか、今回は身体にフォーカスして調査しました」と説明します

全国の20歳以上691人に調査し、「障害のある当事者」(家族や本人に障害がある層)と、「障害のない一般層」を分けて結果を集計。

「バリアフリー住宅への住み替え・購入、または改修を検討したことがあるか」という問いに一般層の9割が「検討したことがない」と回答した一方、障害のある当事者は6割でした。

一般層で「検討したことがある」「検討したが見送った」という回答に着目し、その年齢別の結果をみると、年齢が上がるにつれてその割合は増加していることが分かりました。

30代は「検討したことがある」と「検討したが見送った」を合わせて5.7%だったのに対し、60代は、11.61%となりました。

CULUMUの桑原寿記さんは「バリアフリーは、『身に危険が起こったあと、事後的に』という部分があるため、この結果になったのでは」と推測します。

共同研究の参加者たち=LIFULL提供
共同研究の参加者たち=LIFULL提供

「スタンダード変えた方がいい」

住まいのバリアフリーの必要性について聞いた質問では、一般層が「非常に必要」「ある程度必要」と回答した人の割合が28.3%だったのに対し、障害のある当事者は57.1%となりました。

龔さんは「当事者は必要だと思っているが、費用面の負荷や賃貸住宅という居住形態による制限等の理由からできないと考えていることがわかります」と話します。

障害者手帳を持っている人は、住宅改修にかかる費用の支援制度があり、高齢者で介護が必要になった人の場合は認定を受けると、介護保険を使って手すりをつけたりすることができます。

ただ、龔さんは「最初から備えるか、あとから整備するかという話。最初から備えた方がコストは抑えられる。スタンダードを変えていった方がいいのでは」と話します。

洗面台も風呂やトイレも車いすがそのまま入っていけるように設計されたバリアフリーの部屋=2019年、岩手県大槌町の県営アパートの一室
洗面台も風呂やトイレも車いすがそのまま入っていけるように設計されたバリアフリーの部屋=2019年、岩手県大槌町の県営アパートの一室 出典: 朝日新聞

「ちょっと困っている人」のニーズを吸収

今回のLIFULLや東京大学などの共同研究について、東京大学大学院工学系研究科建築学の松田雄二准教授は「民間からの動きはすごく重要」と産学連携の意義を話します。

10月からは国の「居住サポート住宅」制度がスタートしました。障害者や高齢者など、住宅の確保に配慮が必要な人に対して、入居中のサポート提供を行う住宅を認定するものです。

松田さんは「(国の施策で)強いニーズを持った人が救われる状況はでてきている一方で、『ちょっと困っている人たち』がかなりの人数存在します。そこが満たされていません。その膨大なニーズを民間で吸収しておかないと、まさに大変な状況にある人たちへの支援も届きにくくなってしまいます」と話します。

共同研究では今後、当事者の声を住まいや町づくりに反映させていくインクルーシブデザインの指標を開発し、市場導入を目指して活動をしていくといいます。

「なぜここに階段があるのか」

記者の住むマンションには、建物から出る際に小さな段差があり、段差を解消するための後付けのプレートが設置されています。同じマンションには車いすを利用している方がいますが、プレートを設置するにも「掛け合うのが一苦労だった」とため息をついていたことが思い出されます。そのとき、「ベビーカーも同じですよね」と相づちを打った記憶があります。

そもそも、「なぜここには階段があるのか」「スロープにするとデメリットがあったのだろうか」など、身近なところの当たり前を考え直し、困りごとのある人と話すことから始めたいと思います。

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