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「こんなん全然ダメ」ヒット作生んだ娘の”ダメ出し” PCが落ちない机

「天板拡張くん」発案者が語る秘話。

学校でよく使われているサイズの机にノートや筆箱を置くと、パソコンが隠れてしまう
学校でよく使われているサイズの机にノートや筆箱を置くと、パソコンが隠れてしまう

目次

小中学校に1人1台の端末が配られたGIGAスクール構想が始まり、4年が経ちました。パソコンやタブレット端末、学習アプリなど、教育現場に様々なICT関連の商品が導入されるなか、「学校の机が小さすぎる」という課題に着目し、大ヒット商品となっている「天板拡張くん」。発案者に開発秘話を聞きました。

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「天板拡張くん」の最大の特徴は、その名の通り、学校で子どもたちが使っている机の奥行きを10センチ拡張すること。いつもの机にカポッとはめてネジで固定すれば、すぐに使えるそうです。

「えっ、それだけ?」とも感じてしまいますが、発案者のティーファブワークス代表の高松基広さんによると、学校の事情に応じた工夫がちりばめられているそうです。

インタビューに応える高松基広さん
インタビューに応える高松基広さん

「あわや!」から見えたヒント

「最初に気づいたのは、小学校の先生にプログラミングを教える研修でした」。2019年のまだ新型コロナウイルスの流行が本格化する前のこと。プログラミング教材を販売していた高松さんは、いくつかの学校から研修を頼まれていたそうです。

ある日、GIGA端末が先行導入されていた学校の教室で研修をしていると、「ガタン!」と大きな音が教室に響いたそうです。振り向くと、机から落ちそうになった端末を慌てて手でつかんでいる先生の姿が。プログラミング研修用の教科書と教材、それにGIGA端末を机に並べると、それだけで机がいっぱいになっていたと言います。

「でも本当にドキッとしたのは、先生たちが『机が小さいから仕方ないよね』と、諦めていたこと」だと言います。たとえ頑丈に作られているパソコンやタブレットでも、机から落とせば壊れる可能性があります。「パソコン・タブレットは高価なものなので、壊したくないから使わないという方向に進むのでは」という不安を抱いたそうです。

そんな気持ちを自身のブログに書いたのは、翌20年秋のこと。100円ショップで買った木材を加工し、こんな形で机を拡張したら使いやすいのでは?と提案してみると、現役の先生たちから「これ必要じゃない?」「役に立つと思う」などの反響が多く届いたそうです。

ヒットの秘訣は娘のダメ出し

ブログに届いた声を読みながら「やっぱり、先生たちもこういうのが欲しいんじゃないか?」と、製品化を考えるようになったといいます。まずは木材で作った試作品を数個増やして、知人の先生に使ってもらったところ、「悪くないけど、耐久性が心配ですね」という感想が返ってきたそうです。ですが、「振り返ってみると、優しすぎる意見でした」と高松さん。

この試作品を自慢しようと当時中学2年生だった次女に「こんなのどうかな?」と見せたところ、「こんなん男子が机に座ったらすぐに壊れる。全然ダメ」と一蹴されたそうです。「『あぁ、なるほど』と、すごく納得した」と高松さん。すぐに別の試作品を作って次女に再び見せたところ、「グループ学習で机をくっつける時に邪魔。全然ダメ」と再び一蹴されたと言います。

「こてんぱんに言われて悔しいけれど、納得できる内容でした。絶対に次女を納得させたいって火が付きました」と、高松さん。毎晩のように3Dプリンターで試作品を作る日々が始まり、自信作が出来たときは翌日の朝食の時間に娘に相談していたといいます。「掃除の時に机を重ねられない」「男子が走りまわってひっかける」……。少なくとも10種類は没にしたといいますが、最後の試作品を見せると、「いいんじゃない?」と返答があったそうです。

天板拡張くんで広げた机。ノートや教科書を広げても余裕がある
天板拡張くんで広げた机。ノートや教科書を広げても余裕がある

「これ、すごい」 すぐに商品化

「これを商品化できないだろうか」と相談したのは、学校教材を扱う大手の「内田洋行」に勤める知人だったそうです。「これ、すごいと思います」という反応があり、すぐに商品化に向けた担当者を紹介されたといいます。「そこからは一気に商品化に向かっていった」と高松さん。

2021年4月から「天板拡張くん」の本格販売が始まると、またたく間に大ヒット商品に。今夏には販売台数が20万台に達する見込みだといい、「本業はプログラミング教材の開発なんですが、いまではその開発費も天板拡張くんの売り上げが支えています」と高松さん。

「売れる商品ではなく、子どもたちが端末を使いやすくなるようにという気持ちで開発したもの。次女のダメ出しがあったからこそ生まれた商品だと思います」

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