IT・科学
「暑熱順化」知ってる? 熱中症防ぐ〝夏支度〟はこの時期にこそ必要

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熱中症といえば夏の猛暑に発症するイメージがありますが、実は5月や6月にも熱中症になることがあります。過去には5月、6月に熱中症で亡くなられた方もいます。元気に夏を過ごすためには、本格的な暑さが到来する前のこの時期から早めに体を暑さに慣らし、上手に汗をかける体を作っておくことが重要だといいます。
4月20日、東京・平和島の屋内アスレチック施設で、ポカリスエットで知られる大塚製薬(本社・東京)が「暑熱順化」の大切さを訴えるイベントを開きました。
暑熱順化は、暑さが本格的になる前に体を暑さに慣らすことで、熱中症対策のひとつとして注目されています。
大塚製薬の岩崎央弥さんによると、汗には、体温を調節してくれる大事な役割があります。うまく汗をかけないと体内に熱がたまり、熱中症の危険が高まります。
そこで、暑さが本格化する前に、運動や入浴で体を暑さに慣れさせておくことで、上手に汗をかける体づくりをしておくことが必要だといいます。
また、欠かせないのが積極的かつ効率的な水分・電解質補給です。
暑熱順化は「汗をかく練習」ともいえます。汗に含まれる水分・電解質をあらかじめキープし、さらに発汗後は速やかに補給することが重要になります。
大塚製薬はこうした準備を「夏支度」と表現し、早めの準備の大切さを訴えています。
この日、大塚製薬のスタッフは、来場した親子連れらにポカリスエットをプレゼント。トランポリンで汗をかいた子どもたちに水分補給を促しました。
また、子どもたちが、この夏にやりたいことや、やりたいことをかなえるために大切になる夏支度の実践内容を書き込む「なつじたくカレンダー」づくりを体験しました。
子どもたちは、夏支度のためにどうやって汗をかくかを具体的に考え、カレンダーに書き込んでいました。
なぜ大塚製薬はこうしたイベントを開いているのでしょうか。
大塚製薬はポカリスエットの発売当初から「水分補給の重要性」を訴えてきました。
1991年に日本体育協会(現在の日本スポーツ協会)が「スポーツ活動における熱中症事故対策に関する研究班」を設置したのをきっかけに、1992年から熱中症を知って防ぐ活動への協力を始めたといいます。
岩崎さんは、「年々気温が高まる中で、熱中症はより一層重要な社会課題になってきていると思います。そこにおいてポカリスエットの役割は大きなものがあり、ブランドとして果たすべき役割は年々高まってきていると思っています」と話します。
熱中症の増加はデータでも裏付けられています。
消防庁のまとめによると、全国で2024年5月から9月に熱中症で救急搬送された人の累計は 9万7578人でした。
これは、2008年の調査開始以降、最も多い搬送人員だったといいます。
このうち、5月に搬送された人は2799人、6月に搬送された人は7275人いました。
死亡者数は、5月に1人、6月に5人でした。2024年以前も毎年のように死亡者が出ていて、2022年6月は19人が死亡しています。
この年は6月下旬に記録的な暑さになり、群馬県伊勢崎市で史上初めて6月に気温40度を記録。東京都心でも1875年の統計開始以来、最も早く最高気温が35度以上の猛暑日になりました。
気象庁によると、2024年夏の日本の平均気温は平年を1・76度上回り、2年連続で統計開始以来最も暑い夏になりました。
気象庁が4月24日に発表した向こう1カ月の天候の見通し(4月26日~5月25日)によると、暖かい空気に覆われやすいため、気温は北・東・西日本で高く、特に、東・西日本では、期間の前半は気温がかなり高くなる可能性があります。
3カ月予報(5~7月)でも高温が予想されています。
熱中症による健康被害が予測された場合に発表される「熱中症警戒アラート」の運用も4月23日から始まっています。
暑熱順化には個人差もありますが、数日から2週間程度かかるといいます。岩崎さんは「暑くなる前から余裕をもって汗をかく練習を始めましょう」と呼びかけています。
暑熱順化に取り組んだ上で、熱中症を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
厚生労働省の熱中症予防のための情報・資料サイト
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html)によると、水分をこまめに補給する▽遮光カーテンやすだれを利用する▽エアコンで温度を調節する▽天気のよい日は日中の外出をできるだけ控える▽日傘や帽子を使う、といったことに気を配ることが大切だといいます。
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