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中学校の「評定」学校で生まれる差…なぜ?もっとも差が開いた教科は
学校ごとの「内申点」の成績分布を調べてみました

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学校ごとの「内申点」の成績分布を調べてみました
国語は「5」だけど、数学は「1」――など、中学校の教科につけられる「評定」。高校入試の合否に大きく関わる「内申点」にも影響するため、気になっていた人も多いのではないでしょうか。自治体によっては評定の分布を公表していますが、学校ごとに「5」や「1」をつけた割合に大きな差があることが分かりました。成績をつける基準は同じなのに、なぜ差が生まれるのでしょうか。
東京都教育委員会が3月下旬に公表した、2024年度の都内の公立中学校などによる「評定状況の調査結果」によると、9教科全体では評定「3」が47.1%と一番多く、「4」が23.1%、「2」が13.5%、「5」が12.4%、「1」が3.9%という結果でした。
「5」と「4」の割合の合計が80%以上だった教科がある学校や、「1」の割合が50%以上だった教科がある学校はなく、都教育委員会は「評定はおおむね適正だった」としています。
では、学校ごとに割合の差はどのくらいあるでしょうか。
東京都では校名は伏せつつ、学校ごとに各教科でどのくらいの割合で評定をつけたのかも毎年公開しています。昨年度は生徒数が40人以下の学校を除く、578校の結果が公開されました。
評定「5」と「4」の割合の合計を調べてみると、全9教科で最も割合が高かったのは渋谷区のある中学校の美術で、67%の生徒に4以上の成績がついていました。
美術で最も割合が低かったのは羽村市にある学校の5.7%で、60ほどの差がありました。
その他の教科でも、数学で61.7%(調布市)と8.6%(八王子市)、国語で61.1%(世田谷区)と7.6%(八王子市)など、学校ごとにばらつきがあることが分かりました。
ただ、ある区の教育委員会の担当者は「同じ指導要領の基準で成績を付けているため、担当している先生による差はあまりなく、在籍している子どもの実力差によっては、中学校間で割合の差が出るのは致し方ない」と話します。
同様に「1」を付けた割合のばらつきもありましたが、割合が高い学校があった区の教育委員会の担当者は「内申点は3年生の1、2学期の学習結果で決まる。1がつかないように補修も行っているが、数学や英語などそれまでの学習で一度つまずくと立て直しが難しい教科もある」と話します。
さらに、不登校の生徒が特別なカリキュラムで学べる「学びの多様化学校」で、突出した割合となってしまうこともあるようです。
中学校の内申点は、各教科の評定(最高5~最低1)を足したもので、テストの結果だけでなく、授業態度や課題の提出具合などを加味した上で成績がつけられます。
全国各地の多くの公立高校の入試では、この内申点と学力検査の点数の合計で、合否を決めています。
かつて中学校の内申点は、評定「5」が生徒全体の7%、「4」が24%……と決まった割合でつけられる「相対評価」でした。
ですが、個々の生徒の学力を把握できないといった理由から、今は全国的に、生徒ごとに評価する「絶対評価」で成績がつけるようになりました。
そのため、自治体によっては適正に生徒の評価ができたかを確認するために、評定の分布を調査。東京都以外でも千葉県や岐阜県などが結果を公表して、千葉県では学校名も含め、成績の分布を毎年公開しています。
絶対評価に変わったばかりのころは、「5」や「4」の割合が極端に高くなったり、逆に「2」や「1」が少なすぎたりする中学校もあったそうです。
そのため、千葉県教育委員会・学習指導課の担当者は「評定の公正さを担保するためには学校ごとの分布の調査が必要。透明性を維持するためにも、今後も評定分布の公開は続ける予定」と話しています。
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