今月26日のスペシャル番組を経て、4年半ぶりにBS朝日で『さまぁ~ず×さまぁ~ず』が復活する。もともと地上波で終了した番組がBSで復活する傾向はあるが、ここ数年で増加しているのがお笑い芸人のBS番組だ。なぜBSへの参入が加速し、それを支持する声も高まっているのか。(ライター・鈴木旭)
「ということで13年半、お世話になりました」「またお会いしましょう」「どうも」「ありがとうございました!」
そう言うと、さまぁ~ずの大竹一樹、三村マサカズが頭を下げ、舞台袖へとはけていく。2020年9月、人気トークバラエティー番組『さまぁ~ず×さまぁ~ず』(テレビ朝日系)の最終回は清々しいほどあっけなかった。ちょうどコロナ禍の真っ只中で、モニター画面に観客の顔を映したリモート観覧での収録だったのが印象深い。
その『さま×さま』が今年4月、BS朝日で『さまぁ~ず×さまぁ~ず BS さまぁ~ず』として復活する。2022年3月、1年半にわたって開催された月1回のトークライブ『さまぁ~ず東京』が終了。その後、コンビのYouTubeチャンネルや『紙とさまぁ~ず』(テレビ東京系)といった番組でトークを披露しているものの、観覧客を入れた公開収録は久しぶりだ。
番組が復活した背景には、もちろん当時猛威を振るっていた新型コロナウイルス感染症の流行が、現在までに落ち着いたこともあるだろう。ただ、それとは別に、地上波からBS放送への流れは徐々に進んでいるように見える。
例えば2021年9月まで、40年以上にわたりABCテレビ制作、NETテレビ・テレビ朝日系列で放送された『パネルクイズ アタック25』。2022年3月からタイトルを『パネルクイズ アタック25 Next』に変更し、ABCテレビが共同制作する形でBSJapanext、BS10へと引き継がれている。
昨年9月、23年の歴史に幕を下ろした『きらきらアフロTM』(テレビ大阪/テレビ東京系)もまた、笑福亭鶴瓶のトーク相手を松嶋尚美からリリー・フランキーに変更して月1回放送の『素っ頓狂な夜』(BSテレ東/テレビ東京)へとリニューアルしたと見ることができる。
同じ制作プロダクション、スタッフが携わっていることからも、番組のフォーマットを残したままBSを中心に放送するようになったのだろう。低予算ながら味わい深い番組が次々にBS放送でスタートし、今や「地上波よりも充実している」という視聴者の声も少なくない。
浅草キッド・玉袋筋太郎らが町の中華料理店を満喫する『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS。2019年~)をはじめ、『サンド伊達のコロッケあがってます』(同。2022年~)、『飯尾和樹のずん喫茶』(BSテレ東。レギュラー放送2022年~)、『ドランク塚地のふらっと立ち食いそば』(BS日テレ。2023年~)など、芸人の番組だけでもグルメ・紀行系のバラエティーは多数ある。
そんな中で、4月から“無類のBS好き”であるオードリー・春日俊彰の『オードリー春日の知らない街で自腹せんべろ』(BSテレ東)がレギュラー放送を開始する。馴染みのない街を訪れ、自腹1000円で店選びに吟味を重ねる酒飲みドキュメンタリーは「BSの魅力を知る者が作ったBS番組」といっても過言ではない。
一方で、『所さんの世田谷ベース』(BSフジ)や『おぎやはぎの愛車遍歴 NO CAR, NO LIFE!』(BS日テレ)といった趣味性の強い長寿番組、『バナナマン日村が歩く! ウォーキングのひむ太郎』(BS朝日)や『ブラマヨ小杉の「走れ!こすっちょ」』(BSよしもと。2023年7月からテレビ大阪でも放送開始)といった健康促進系の人気番組もある。
また、かつて一世を風靡したエンタメ、商品、プロジェクトなどについてMCのメイプル超合金・カズレーザーが当事者とともに振り返る『X年後の関係者たち~あのムーブメントの舞台裏~』(BS-TBS)、爆笑問題・太田光がゲストとじっくり語り合う『太田光のテレビの向こうで』(BSフジ)など、あるテーマを深掘りするトーク番組もBSならではだ。
2022年3月には、BSよしもとが開局。『花王名人劇場』や『よしもと新喜劇』といった過去番組の放送だけでなく、『ジュニア、伺う』、『ビスケットブラザーズの行けばわかるさ!~三重街道中ひざくりげ~』(三重テレビ共同制作)、『つまみは紅しょうが男子~!宅飲みするからウチ来ぃや~!』など吉本興業に所属する芸人の番組を次々と制作している。
今月23日には、元ゾフィー・上田航平、ラブレターズ、吉住、Gパンパンダ・星野光樹、アメリカを拠点に活動するサク・ヤナガワがコントユニットを組み、昨年12月のシカゴ公演に挑戦する模様を追った『アメリカを笑わせたい~お笑いメイド・イン・ジャパンの挑戦~』(NHK BS1)が放送されており、コアなお笑いファンにもアジャストしているように見える。
「視聴率にシビアな地上波では難しいが、低予算のBSなら制作・放送できる」というスタンスが、むしろ現代人が求める番組を多く生み出しているのかもしれない。
少人数による落ち着いたゆるい空気感、テーマを深掘りしたトーク、グルメ・紀行、趣味、健康、若手芸人のドキュメンタリー……。自由で肩肘張らないBS番組に、多くの芸人が出演し始めたのも頷ける。