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盆栽もアクセサリーもホタルイカも…海外も注目〝プラバン〟第一人者
デザイナー・ナナアクヤさんが掲げる夢とは

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デザイナー・ナナアクヤさんが掲げる夢とは
プラスチックの板(プラバン)から作る作品を多くの人に知ってもらおうと活動するデザイナーがいます。東京都在住のNanaAkua(ナナアクヤ)さん。プラバンから立体的で鮮やかなお花のアクセサリーや「盆栽」を作り、多くの人を魅了しています。
「たった1枚の色もないプラスチックの薄いシートが、色を塗ったり、形を切ったり、熱を加えて曲げたりすることでまったく違うものになる」
ナナアクヤさんはそんな「プラバン」の魅力を伝えるため、各地でアクセサリーなどを作るワークショップを開催しています。これまでにプラバンアクセサリーに関する本を国内外で10冊以上も出版してきた〝第一人者〟です。
「みんなにプラバンのおもしろさを知ってもらいたい」と、クリエイター仲間とともに開催するイベント「プラバン博(ぱく)」にも力を入れています。
プラバンアクセサリーを始めたのは、2011年夏。きっかけは、その年の3月に居酒屋で「のれそれ」と呼ばれるアナゴの稚魚と出合ったことでした。
「のれそれ」の美しさとおいしさに感動して創作意欲が湧き、その透明感を「プラバンで表現しよう」とアイデアが浮かんできたといいます。
プラバンは小学生の時に実家で遊んでいたため、素材や作り方のイメージはできていました。100円ショップでプラバンを購入し、「のれそれ」のストラップとピアスを作ったそうです。プラバン作品を作るのは小学生ぶりでした。
ナナアクヤさんは、「味や見た目、美しさ、おもしろさなど何かに感動したとき、私はそれを『自分の手のひらの中に入れてみたい』と思うのです」と話します。
「そのものを手に入れることができる場合にはそのまま『手のひらの中』に入れますが、できないときには『何か別の素材を使って表現してみたい』と思っていました」
それまでも、羊毛フェルトや粘土で作ってみたり、布で人形を作ったり、心に響いた経験を形にしてきました。「手のひらの中に、そのかわいさや感動した心を表現したいというのが創作の原点です」
2013年春にホタルイカを捕まえて食べることを目的に富山へ行きましたが、時化(しけ)でかなわなかったことから、自分で作ろうとプラバンでホタルイカのアクセサリーを作ったそうです。
当時はちょうど、消しゴムはんこの制作にハマっていた時期。「ホタルイカの消しゴムはんこを作ってプラバンに押したらかわいいかも」と考えたといいます。
プラバンでホタルイカを作っている途中、「温めて柔らかいうちなら、足の向きなどを自分で曲げられるはず。それならお花も作れるかもしれない」と感じたナナアクヤさん。お花は好きなモチーフの一つでした。
ナナアクヤさんは幼い頃から「材料があれば何でも作っていた」と話すほど、ものづくりが大好きでした。
粘土で作品を作ったり、ビーズで人形を作ったり、布を切ったり貼ったり。小学生の頃にはかぎ針の編み物でクッションカバーを作ったこともありました。
「小学校の家庭科で刺繍の授業があったのですが、先生に『これ大人が作ったのでは?』と誤解されるほどの腕前を見せていました」と振り返ります。
高校生のときは文化祭でアルミワイヤーのアクセサリーを販売すると、大きな反響があったそうです。
子どもの頃の家庭環境も、ものづくりへの刺激となったといいます。
「工作以外にも、家でソーセージを腸詰めから作ってみたり、味噌も豆から作ってみたり、『手で作る』体験をたくさんしていました。手仕事に喜びや楽しみを見出す家庭だったと思います」
プラバンアクセサリーを始めた当時、立体的なお花を作っている作家はいなかったそうです。「世の中にないものを作りたい、みんなが持っていない、市販もされていないものを作りたいという欲がありました」
立体的なプラバン作品をネットにアップすると、出版社の編集者から書籍化を打診されたといいます。
「プラバンというただの薄いプラスチックのシートが立体的に変身する驚きや楽しみを発見してもらえたらいいなと思っています」と話すナナアクヤさん。
作品は「売るために作るのではなく、ワークショップをやるために作っている」といいます。「ワークショップに来てくださった方が一緒に作れるようにするにはどうしたらいいか、工夫してレシピを考えています」
ワークショップで作り方を伝えることで、プラバンのおもしろさがどんどん広がっていってほしいーー。根底にあるのは、「みんなにプラバンのおもしろさを知ってもらいたい」ということです。
「プラバンを通してものづくりの楽しさを感じてもらえると、世の中がちょっと良くなるかもと思っています。そのきっかけになってくれたらいいな」と話します。
新たな表現にも取り組み、昨年「プラバン盆栽」を発表しました。
「プラバンという、自然とは対極にあるような素材を使って、愛する自然の美しさをどこまで表現できるのかに挑戦した作品です。花や葉、雪からの芽吹きやキノコまで、四季の表情を盆栽に詰め込み表現しました」
ナナアクヤさんは「プラバン作品が、『プラバン』という名前のまま世界進出したらおもしろい」と語ります。ナナアクヤさんの作品は海外からも注目され、著書の中国語訳も出版されていましたが、英語の解説本も自費出版しました。
クリエイター仲間と開催する「プラバン博」は、今年も4月17~19日に東京ビッグサイトで開かれる日本ホビーショーにブースを出展するそうです。今後は「プラバン博」を続けていきながら、世界の国々でもワークショップを開いていきたいと話しています。
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