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#80 イーハトーブの空を見上げて

子どもたちの命を救った〝非常階段〟展示「人と人が交わる、潮目に」

津波資料館「潮目」と片山和一良さん
津波資料館「潮目」と片山和一良さん
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。
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イーハトーブの空を見上げて

子どもたちの絵を飾る場所に…

津波で約420人の犠牲者が出た大船渡市の海沿いを車で走ると、黄色やオレンジ、スカイブルーのペンキで塗られたど派手な建造物が目に飛び込んでくる。

土木業の片山和一良さん(71)が建てた、私設の津波資料館「潮目」。

片山さんが、津波で被害を受けた越喜来(おきらい)小学校の近くに、最初の「潮目」を造ったのは2012年夏。

「震災後、将来の街づくりのために子どもたちに絵を描いてもらったが、飾る場所がない。それならば、とボランティアとがれき材を集めて造ったんだ」

その後、復興整備に合わせて何度も移転し、今の場所に落ち着いた。

震災3カ月前に設置された非常階段

展示の目玉は、越喜来小の非常階段だ。

低地にあった同校の児童は震災直後、校舎2階と道路をつなぐ非常階段を渡って高台へ逃げた。

階段は地元市議の要望を受け、震災3カ月前に設置されたばかりだった。

非常階段は震災直後の写真がたくさん貼られている掲示板の屋根として使われている。

「多くの子どもたちの命を救った非常階段。これだけは後世に残したいと思ってね」

館内に入ると、ボランティアや旅行者が休憩所として使えるスペースが広がる。彼らが残していった数百枚の笑顔のスナップ写真が室内に貼られている。

館の名前は「人と人が交わる、陸の潮目になるように」と願ってつけた。

「若者が全国から遊びに来てくれる。旅の途中で、ここで何が起きたのかを感じてくれるとうれしい」

(2023年2月取材)

三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。
書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。
withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した
 

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。

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