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〝破格〟のチケット代…「サンボマスター」のライブを開催する理由

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チケット代2000円で、サンボマスターなど豪華アーティストのライブに参加できる――!? 3月22日に、驚きの値段設定で開かれるライブがあります。その裏には「楽しみに来たイベントで、ドナー登録や献血について知ってほしい」という思いがあるそうです。主催者に話を聞きました。(朝日新聞withnews・水野梓)
大阪市住之江区の「GORILLA HALL OSAKA」で3月22日に開催されるのは「THE BANK 2025」という音楽ライブです。
THE BANK 2025開催決定!
— DAZEBAND(ダゼバンド) (@_daze_band_) January 10, 2025
今年も「GORILLA HALL OSAKA」で開催!
当日は骨髄バンクのドナー登録会も開催。献血50名、骨髄ドナー登録50名の目標を達成するため、チケットは破格の「2000円」となっております!
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是非お越しください!#DAZEBAND #THEBANK #THEBANK2025 pic.twitter.com/ilnllzAMLk
サンボマスター、locofrank、TOTALFAT、DJダイノジ、DAZEBANDという豪華なアーティストが出演しますが、チケット代は「2000円(ドリンク代別)」という〝破格〟の設定です。
主催する一般社団法人「SNOWBANK」の代表理事・荒井DAZE善正さん(45)は「当日は、会場で骨髄バンクのドナー登録会も開催し、献血50人・骨髄ドナー登録50人を目標にしています。アーティストにもライブハウスにも、その趣旨をご理解いただいて、この値段設定にしました」と語ります。
荒井さんは、プロのスノーボーダーとして活躍していた2007年に難病を発症し、骨髄移植が必要となりました。
初めはドナーが14人しか見つからず、全員が提供するまでに至りませんでした。
その後、ドナーが見つかって移植を受け、42度の高熱といった過酷な拒絶反応にも耐え、回復した荒井さん。
血液型は、A型からドナーである50代女性のO型に変わりました。
誰かが骨髄移植が必要な病気を宣告された時に、ドナーが100人、1000人といるような社会にしたい――。
そう考え、2011年にSNOWBANKを立ち上げました。
スノーボーダーが技を披露するイベント「東京雪祭 SNOWBANK PAY IT FORWARD」を開催したり、各地で音楽フェスを開催したりして、その会場で献血ブースを出し、ドナー登録会も開催してきました。
これまでのSNOWBANKのイベントでドナーに登録したのは1600人超、献血をしたのは1万人を超えているといいます。
荒井さんは「参加するアーティストもライダーも、MCなどで協力を呼びかけてくれるので本当にありがたいです。イベントに参加した人が、その後も『献血に行き続けています』と教えてくれることもあって、本当にうれしいです」と語ります。
一方で、「骨髄バンクのドナー登録」はあまり知られていないとも感じるという荒井さん。
講演会で自身の経験を話すと、「免許証の裏に丸をつけてますよ」と話してくれる人もいるそうです。
免許証やマイナンバーカードの裏にある「臓器提供意思表示欄」は、自身が亡くなった時に、臓器を提供してもいいかどうか意思表示するためのもの。これに同意していても、骨髄バンクのドナー登録にはなりません。
荒井さんは「骨髄バンクへのドナー登録は、健康な人しかできないこと、献血ルームなどで手続きが必要なことなどは、まだまだ知られていません」と指摘します。
「著名な方が白血病になると、ドナー登録数が一時的に上がりますが、数カ月で落ち着いてしまう。発信し続けなければいけないですし、ドナーが提供しやすい環境をつくることも大事だと思います」と言います。
日本では、毎年2000人ほどが骨髄バンクのドナーからの提供を待っています。
ドナーになれるのは健康な18~54歳の人。現在の登録者の半数超が40代以上の人で、多くのドナー登録者の〝引退〟が迫っている状況です。
荒井さんは「ドナー登録や献血って、どこで役立っているのか、届いているのかが分からない面があります。もらった方も、提供してくれた人に直接感謝できないんです。だから、『こんな風に助かった人がいますよ』と伝え続けたいです」と語ります。
イベントの開催を続けているうちに、「意外と、『知ってたら行動したのに』という人も多いんじゃないかな」と考えるようになった荒井さん。
「もちろん、当日に献血や登録をしなくてもライブは楽しめますので、気軽に参加してもらえたらと思っています」と話しています。
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