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ヒトメタニューモウイルスって?春から流行?「RSウイルス」の仲間

まだあまり耳慣れない「ヒトメタニューモウイルス」。どんなウイルスなのでしょうか?
まだあまり耳慣れない「ヒトメタニューモウイルス」。どんなウイルスなのでしょうか? 出典: Getty Images ※画像はイメージです

呼吸器感染症をおこす「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」が注目を集めています。10歳までにほぼ全員が一度は感染するほど身近なウイルスですが、2001年に見つかり、RSウイルスに比べると新しく発見されたこともあり、一般に知られていないウイルスかもしれません。ニュースで見かけることも増えてきたヒトメタニューモウイルスと、その拡大について解説します。(小児科医・堀向健太/ほむほむ先生)

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ほむほむ先生:アレルギー専門医・小児科医の堀向(ほりむかい)健太。Xやブログ、theLetterで医療情報を発信し、「SNS医療のカタチ」で活動する。著書に『小児のギモンとエビデンス』『子どものアトピー性皮膚炎のケア』『ほむほむ先生の小児アレルギー教室』など。

ヒトメタニューモウイルスの基本情報

2020年以降、コロナウイルス感染症に対する対策もあり、多くの感染症の流行が抑えられてきました。

その後、対策の緩和に伴い、ヒトメタニューモウイルスを含む呼吸器感染症の再流行が確認されています。

これは世界的な流れです[1]。

日本でも、2022年後半から、ヒトメタニューモウイルス感染症の再流行が確認されました。

2023年にはヒトメタニューモウイルス感染症関連の入院患者が北海道で317人に達しました。このうち、3~6歳の子どもが全体の38.2%を占めており、乳幼児を中心に感染が広がったことが示されています[2]。

ヒトメタニューモウイルスは、2001年にオランダの研究グループによって発見された比較的新しいウイルスです。RSウイルスと同じく呼吸器症状を引き起こします。春から初夏にかけて流行することが多いとされています[3]。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

RSウイルスとの共通点と違い

おそらく、「RSウイルス」のことは聞いたことがある方も多いでしょう。

両ウイルスともニューモウイルス科という同じ仲間です。

初期症状は風邪に似ており、発熱、咳、鼻水、鼻詰まりなどから始まり、重症化すると、喘鳴(ぜいぜい、ひゅーひゅー)、呼吸困難、細気管支炎、肺炎などを引き起こすことがあります。

RSウイルスは、ほぼすべての乳幼児が2歳までに感染し、1歳未満での感染が多く、ヒトメタニューモウイルスは、2歳までに約50%が感染と、RSウイルスよりも、やや高い年齢層の感染症になります。

ヒトメタニューモウイルスには、予防接種はありません。

繰り返しかかる?検査はできる?

2歳未満の乳幼児にとっては重症化リスクが特に高く、気管支炎や肺炎を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

また、一度の感染では十分な免疫を得られないため、再感染のリスクも残ります。

重症例が疑われる場合には「迅速検査」が活用され、6歳未満の子どもに保険適用となっています。

以前は肺炎の証明が必要だったのですが、2018年4月の診療報酬改定によって、中心に肺炎の証明がなくても迅速検査が可能になりました。

これにより不要なレントゲン検査が減りました。最近若い先生と話したときにこのことをご存じなかったので、改めてお伝えします。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

検査はインフルエンザ検査と同様に、鼻咽頭スワブ(鼻や喉の粘膜を綿棒で拭き取る方法)を用いて行われます。

もちろん、鼻風邪の全員に迅速検査が必要なわけではありませんし、基本的には保険適用になるわけではありません。

世界における流行は?日本でも流行する?

最近、中国や米国、欧米でマイコプラズマが流行した後、日本でも大きな流行が起きたという経緯がありました。

ヒトメタニューモウイルスについてもすでに海外の流行が認められており、国内でも流行するのではと懸念されます。

中国では2024年末から2025年にかけて、ヒトメタニューモウイルスの感染者が増加しています。

特に中国北部の省で14歳以下の子どもを中心に陽性率が上昇しており、12月末時点で陽性率が2倍以上に増加したと報告されています[4]。

北半球全体でも、急性呼吸器感染症が増加する傾向があり、ヒトメタニューモウイルスもその一環として流行しています。

多くの国でインフルエンザやRSウイルスとともに検出されています[1]。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

日本でも、すでにコロナ後の流行期を経験している地域もあることもあり、大きな流行になる可能性が高まっています。

しかし、ヒトメタニューモウイルスはこれまでも存在してきたウイルスです。

手洗いやマスクなどの基本的な感染対策を行うことで、大規模な流行を抑えることが重要でしょう。

【参考文献】
[1]Trends of acute respiratory infection, including human metapneumovirus, in the Northern Hemisphere
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON550

[2]Fukuda Y, Togashi A, Hirakawa S, Yamamoto M, Fukumura S, Nawa T, Honjo S, Kunizaki J, Nishino K, Tanaka T, Kizawa T, Yamamoto D, Takeuchi R, Sasaoka Y, Kikuchi M, Ito T, Nagai K, Asakura H, Kudou K, Yoshida M, Nishida T, Tsugawa T. Resurgence of human metapneumovirus infection and influenza after three seasons of inactivity in the post-COVID-19 era in Hokkaido, Japan, 2022-2023. J Med Virol. 2023;95:e29299.

[3]Journal of Clinical Microbiology 2005; 43:1213 - 9.

[4] WHO「ヒトメタニューモウイルス感染症」中国で感染増も想定内
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250108/k10014687411000.html

※様々なジャンルの「プロ書き手」によるニュースレターが配信される「theLetter」で配信された『ほむほむ先生の医学通信』を編集しました。
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