連載
#3 #アラサークライシス
30代は「決断と選択をずっと迫られている」〝ゆとたわ〟2人が語る
転職、独立、結婚、出産、移住…無数の選択肢があります
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#3 #アラサークライシス
転職、独立、結婚、出産、移住…無数の選択肢があります
結婚や転職など、さまざまな転機が訪れる20代半ばから30代。その頃に陥りがちな漠然とした不安や悩みは「クオーターライフクライシス(QLC)」と呼ばれます。2021年、ポッドキャスト番組「ゆとりっ娘たちのたわごと」で20代後半のパーソナリティー2人がこのテーマを取り上げると、多くの反響があったそうです。あれから4年。30代になった2人に今の悩みについて聞きました。
30代に入りましたが、まだQLCから抜け出せていないという2人。悩みは漠然としたものではなく、具体的な内容になってきたそうです。
かりんさんは、「漠然と焦っているのが20代だとしたら、30代は、結婚する場合いつ結婚するのか、キャリアを変える場合いつ変えるのかなど、『締め切り』がかなり迫っているような感覚があります」と話します。
2人は、「まるで『事業仕分け人』のようで、『次は何を決めなきゃいけないんだっけ?』と決断と選択をずっと迫られているような感覚がある」のだそうです。
「以前に比べ、今は人生の選択肢が広くなったと思います」とかりんさん。
「転職する・しない、仕事をやめる・やめない、結婚する・しない、子どもを産む・産まない、都心に住む・郊外に住む……選択肢が無数にある。もちろん、人によっては選べない選択肢もありますが、基本的には『どれを選んでもいい』世の中になっているからこそ、ずっと選択を迫られている感じがするんだと思います」
ほのかさんは、「30代になってからは、生活や今後の人生設計について以前より具体的な理想も描けるようになった気がします。ですが、どこから決めればいいのか混乱してしまうパズルのような感覚もあるんです」といいます。
「以前はここまで悩みが分解されていませんでしたが、今はパズルのピースは見えてきているので、そこからどうやって自分なりの完成形を作ろうかなと考えています」
悩みの背景には、社会への不安もあります。「年金はもらえないかもと感じている世代」という2人。
「本来そこまで先々のことを計画的に考える人間ではないのですが、そんな自分でも貯金や投資をして今から蓄えておかないと、あとあと困るかもという漠然とした不安はあります」とほのかさんは口にします。
2人が生まれる前、バブル景気で沸いていた日本。親から聞く結婚式や新婚旅行の話は「規模が違う」と感じました。
「好きなようにやっていいと言われても、現実的な制約を考えてしまいます。まわりにいる同世代の友人たちを見ても、みんな堅実な選択にシフトしているように感じます」
かりんさんは「昔は大企業に入っておけば一生安泰だと考えられていたと思いますが、災害を経験して、今ある基板がひっくり返る可能性も十分あるんだと実感しました」と話します。
加えて、かりんさんは「社会制度と世の中の価値観がずれている感覚があります」と指摘します。
「『多様性が大事』と言われはじめて久しく、世の中の価値観自体はだいぶ変わったように思います。でも、そこに社会制度が追いついていない気がするんです」
「例えば、生理休暇は、制度として設けてあってもいまだに使いにくい企業が多いですし、ひとくちに働き方改革と言ってもオンオフが曖昧になって実働時間はむしろ長くなっている人もいるでしょう。また、子育てをしている友達からは、『育休制度の不満や保育園の審査に落ちて復職できなくて困っている話などもよく聞きます」
「こうすれば幸せになれる」という正解がない時代だからこそ、2人は「生活の中の小さなことを楽しむ」ことが大切だと話します。
「日常で起こったちょっとしたことに人生がつまっている」という、かりんさん。
「日々生きていると、漠然とした不安にとらわれて仕事や子育てといった大きな主語に目が行きがちだけど、実際は『朝飲んだコーヒーがおいしかった』とか『喫茶店で隣の席にいた人たちの会話がおもしろかった』とか、そういう小さなことが積み重なって人生になっていると思うんです。だから、切羽詰まっても日常に転がっているしょうもないことをおもしろがる気持ちを忘れずに生きていきたいです」
ほのかさんは「目まぐるしい日々の中では、日常のささやかなことやくだらないことは、価値がないのではないかと思うことがあるかもしれません。でも、人と話していて楽しいことって、些細な失敗だったり、ちょっとした気づきだったり、チャレンジしたことやちょっと遠回りした経験にある気がしています」と話します。
「自分を自分たらしめるのはくだらない部分で、そこに個性が宿ると思います。SNSやポッドキャストで発信したり、日記を書いてみたり、くだらないと思いすぎずに自分の中に残していると、10年後に振り返ってみたとき、すごく楽しいんじゃないかな」
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