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女性トイレだけ行列、なぜ?「男性便器は1.76倍」記者も調べると
![トイレ案内図を見ると、便器の数が分かります=山下知子撮影](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/storage.withnews.jp/2025/02/03/b/32/b32913f8-l.jpg)
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駅の女性トイレだけ長蛇の列――。目にしたことはありませんか? その理由を、公共空間のトイレ706カ所の男女別便器数を数えて、発信している人がいます。記者も気になって外出先でトイレの数をチェックするようになりましたが……。みなさんのまわりのトイレはどうでしょうか?(朝日新聞デジタル企画報道部・山下知子)
駅など、公共空間のトイレ706カ所の男女別便器数を数え、その〝偏り〟を発信しているのは東京都在住の行政書士、百瀬まなみさん(60)。
その集計によると、便器数(男性は小便器を含む)は、男性が女性の1.76倍。706カ所のうち、9割以上のトイレで男性の方が便器数が多かったそうです。
昨年11月に百瀬さんに出会ってから、記者(47)も外出先のトイレで数えるようになりました。以来2カ月、女性の便器数の方が多いトイレをいまだ見つけたことはありません。女性の方がトイレに時間がかかるのに……。
「『乗り鉄』『撮り鉄』ならぬ『便鉄』とSNS上で言われました。名誉ある称号というところでしょうか」
百瀬さんはそう笑います。調査によると、女性用便器が多いのは706カ所のうち28カ所。「便鉄見習い」段階の記者が見つけられないわけです。
実は、百瀬さんに数字を教えてもらうまで、記者は女性の方が便器数が多いと思っていました。衣類の上げ下げや、生理用品を替えることを考えたら、女性の方が圧倒的に時間がかかるだろうと思ったからです。
だから、女性トイレばかりに列ができるのは「仕方ない」とも。なのに、そもそも男性用便器の方が多いとは、驚きました。
この集計結果に、「男性用は小便器を含めているが、男性トイレだって個室の方は並んでいる」との声も聞きました。でももし男女とも同じ人数の行列ができていたとして、男女とも最後尾から並んだ時の〝待ち時間〟を考えたとき、女性は大も小も関係なく個室が空くまで待たなければいけない一方で、男性は小の人が列からはけていくので、男性の方が待ち時間は短くなるのではないでしょうか。
百瀬さんはこうも言います。
「女性の方が時間がかかるのに、便器数は女性が少なく、行列ができている。おかしいですよね。おかしいことはおかしいと聞こえるように言わないとダメ。声を上げ続けることで世の中は変わる、と思ってやっています」
ああ、本当にその通り。記者を含め、女性トイレによく行列ができている状況に「おかしい」と思った市民が「便鉄」となって声をあげ続けたら……。風景は変わるかもしれません。
百瀬さんが調査で使うのはトイレ入り口にあるトイレ案内図です。点字が施され、中の構造を視覚障害者に伝えています。
記者が1月末までにトイレ案内図で確認したトイレは下の13カ所です。(括弧内は所在都道府県と、男女の便器数)
上の一覧には入っていませんが、今年の元日に訪れたJR高崎駅(群馬県高崎市)の改札外2階トイレは、女性が外まで並ぶ一方、男性は見える範囲で列はできていませんでした。トイレから少し離れたところに、スマホを片手にした男性の一群があり、どうやら女性パートナーや女友達を待っている様子。トイレから出てきた男性が、後方に並ぶ女性に「本屋で待っているよ」と声かけするケースもあり、「いや、どんだけ女性が待っている?!」と驚きました。
男性用便器の方が多いのは、男性の方が駅を利用している人が多いからなのかもしれません。実際、同僚の取材に対し、そう回答した鉄道会社もありました。しかし、記者が物心ついた40年以上前から、女性トイレは男性トイレと比べてよく行列ができています。
百瀬さんは言います。「社会の『普通』が男性目線なのでは。女性も慣れてしまっているから『仕方ない』となってしまう。だからこそ、気づいた人が声をあげるんです」
その上で、トイレについてこう語ります。「まずは個数の平等。ただ、それでも女性の方が時間がかかるので並んでしまう。目指すゴールは、待ち時間が発生したとして、男女同じになるような『公平』なトイレです」