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「早く出会いたかった」思い出いっぱいの哺乳びん、長く使えるグッズ
卒乳後、どうしていますか?
ボトルに手を添えて、小さな口で一生懸命飲んでくれた赤ちゃん。眠い目をこすりながら調乳した夜もあったーー。子どもが使った哺乳びんには思い出がいっぱい。でも、ミルクを卒業したら使い道に困り、泣く泣く手放してしまうこともあるかもしれません。使わなくなった哺乳びんを別の用途で使えるグッズが、SNSで「めっちゃいい」「もっと早く出会いたかった」と話題になりました。
X(旧Twitter)で話題になったのは、哺乳びんにつけるフタとストローです。
使わなくなった哺乳びんにフタを取り付けると食品や小物入れになり、ストローを付けると慣れ親しんだボトルでストロー飲みができるようになります。
Xには、「捨てるときめちゃくちゃ悲しかったのでこれはいい」「ミルクの時代が終わったら買おう」「気持ちに寄り添うアイデアとても良い」といったコメントが並びました。
すでにフタを購入したというユーザーからは、お菓子やコーヒー豆を入れたり、ドレッシング作りに活用したりしているという声もありました。
フタとストローはいずれも、ベビー用品大手・ピジョンの哺乳びん「母乳実感」用の商品で、2023年8月に発売されました。
開発プロジェクトリーダーの永田香織さん(44)は、「同僚ママたちとも哺乳びんを捨てるのはもったいないよねと話していて、卒乳しても使い続けられるアイテムがあったらいいなと考えていました」と話します。
永田さん自身、高校2年生の長男と中学2年生の長女を育てる母親です。長男は妊娠8カ月に早産で生まれ、体重は1500gほどでした。
「低体重で生まれたので、母乳が足りているのか、ちゃんと飲めているのかどうか、いつも心配でした。哺乳びんであげると飲んだ量が分かるので安心できました。哺乳びんは思い入れのあるアイテムです」
残念ながら引っ越しなどのタイミングで当時使っていた哺乳びんは処分してしまいましたが、「哺乳びんをずっと使えるようにできたら」と感じていたといいます。
2021年、社内の新規事業提案制度にアイデアを応募しました。
ともに取り組む社員を探したところ、「哺乳びんを長く使い続けたい」という思いに共感し、営業や開発担当などからメンバーが集まりました。永田さんを含む5人のチームで検討を始めたといいます。
小物入れ、ドレッシング用のボトル、ロールタイプのウェットティッシュ入れ……。パーツをつけるならどのようなパーツがいいか、長く使ってもらえる形状はどのようなものか、互いに案を出し合いました。
永田さんは「食品や小物、好きなモノを入れられるので、最初からフタはほしいと思っていました」と振り返ります。
ユーザーの使いやすさを考えた結果、最終的にフタとストローを最終プレゼンにまとめました。
永田さんたちの提案は見事採用。商品化に向けて具体的に走り出したそうです。
提案の翌年、2022年に行った0~3歳の子どもを育てる親へのモニター調査では、約半数が使用後の哺乳びんを「捨てずに取っておく」と回答。そのうち約7割が「思い出がある」と答えていました。
発売前の「モニター募集キャンペーン」を告知する公式インスタグラムの投稿には、通常投稿の300倍の「いいね」がつき、反響が大きかったといいます。
フタとストローは、2022年以降に発売された「3代目母乳実感」「母乳実感 T-Ester」、2022年以前に発売された「2代目母乳実感」に使えるようになっています。
ストローはそのうち、安全性の観点からプラスチック製の哺乳びんのみに使えるそうです。
その後もSNSでたびたび話題になっていて、永田さんは「私たちの思いに多くの方が共感してくださり、感謝しています。長く愛される商品になるとうれしいです」と話します。
「ベビー用品は使用期間が短く、使い終わると捨ててしまうケースもあります。私たちは作って終わりではなく、長く使う工夫も必要だと感じます」
フタもストローも、パッキン一体型で簡単に洗えるように意識したそうです。ストローは完全密封ではないため、外出用ではなく自宅での使用を呼びかけています。
一方、2022年8月以降、ベビー用品店・アカチャンホンポと共同で哺乳びんの回収・リサイクルにも取り組んでいます。
全国のアカチャンホンポ128店舗にピジョン製の哺乳びんを回収するボックスを設置し、回収した哺乳びんは別の製品の原料の一部としてリサイクルされるそうです。
川崎市でも2025年8月まで、ブランドを問わず哺乳びんを回収し、リサイクルする実証実験が行われています。
永田さんは、「捨てずにずっと使い続ける。使わない場合はリサイクルする。そんな循環ができればと思っています」と話しています。
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