連載
#71 イーハトーブの空を見上げて
零下22.8度でも笑顔、氷上ワカサギ釣り 湖上に並ぶ多彩なテント
北都・盛岡の冬は途方もなく厳しい。
これまで新潟、福島、宮城などの北国に勤務してきたが、盛岡の寒さはレベチ(レベル違い)である。
例年、初冬に降り積もった雪は春先まで路面で凍り付き、人々は数カ月の間、両手をわずかに広げてペンギンのようになって路地を歩かなければならない。
ただ、極寒地ゆえの「楽しみ」もある。
本州一の厳寒地として知られる盛岡市藪川の岩洞湖に足を運ぶと、冬の風物詩「氷上ワカサギ釣り」が盛況だった。
午前6時56分の藪川の気温は、今季(2022年)最低の零下22.8度。
釣り人たちは震えながら、氷下の魚との格闘を楽しんでいた。
「岩洞湖は広くてとても気持ちいい!」
一戸町の小学3年生、女鹿口(めがぐち)優矢さんは、ドリルで氷上にワカサギ釣り用の穴を開けながら満面の笑みだ。
盛岡市のパート女性(38)も「1回やってみたかった。思ったよりも釣れないけれど、とても楽しい」とうれしそう。
快晴の岩洞湖上に、色とりどりの小さなテントが並ぶ。週末は計約3500人の人で賑わうらしい。
岩洞湖漁協の職員が真っ白な息を吐き出して言った。
「夜明け直前の氷の上は特にきれいですよお。白銀の風景に朝靄(もや)が立ち、降り注ぐ太陽の光を、湖面の氷が鏡のようになって、明け方の空へとはね返すんです」
(2022年1月取材)
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