卓上でも加熱調理ができ便利で、災害時には防災用品としても命を守る「カセットこんろ」。その使用方法について、この年末に警視庁や専門機関が相次いで注意喚起をしました。この10年で発生した事故のうち、4割は使用者の誤使用や不注意によるもので、死亡事故も起きているといいます。どのような点に注意が必要なのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
寒い冬に温かい鍋。そんな時に便利なのが、卓上でも加熱調理ができるカセットコンロです。
このカセットこんろについて「使用方法を間違えると重大な事故につながるおそれがあります」として、2024年12月末、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が注意喚起を行いました。
NITEによれば、同機構に通知があった製品事故情報では、2014年度から23年度までの10年間で、カセットこんろの事故は91件あったということです。そのうち、調査が完了した86件の中では、「使用者の誤使用・不注意が推定されるもの」が約4割を占めていました。
特に多いのが「カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方をした」もので、「過熱されたカセットボンベが破裂して死亡事故ややけどなどの人的被害にも発展しています」として警戒を呼びかけました。
カセットこんろの燃料となるカセットボンベの中には可燃性ガスが使用されており、「正しく取り扱わないと命を脅かすおそれもあります」とし、事故を防ぎ自分や家族の命を守るためのポイントとして以下を挙げました。
<・カセットこんろにカセットボンベを確実にセットする。 カセットボンベを無理に押し込まず、取扱説明書記載の向きや位置に従う。
・カセットこんろを正しく使う。 カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方はしない。(例)複数台のカセットこんろを並べて使用しないなど。
・カセットボンベはカセットこんろから取り外して、室内の 40℃未満の場所に保管する。 40℃以上の高温下や熱源のそばには放置しない。>
ほかにもカセットこんろやボンベの誤った使い方として、「IH調理器の上にカセットこんろを置く」「カセットこんろで炭火おこしをする」「カセットボンベをヒーターに近づける」などがあるということでした。
カセットこんろについては、2024年12月、X(旧Twitter)で警視庁警備部災害対策課アカウント( @MPD_bousai )が行った注意喚起も話題になりました。
<【注意】カセットコンロにも推奨される使用期限があります。カセットコンロ10年、ボンベ7年です。未使用でもガス漏れを防ぐゴム製部品の劣化で火災に繋がることがあるそうです。底面に記載された製造年月日をチェックしていざという時に安全に使用できるようにしましょう。>
「推奨される使用期限」は、こんろについては10年、ボンベについては7年という目安を示すものでした。
また、「未使用でもガス漏れを防ぐゴム製部品の劣化で火災につながることがある」ため、「底面に記載された製造年月日をチェックしていざという時に安全に使用できるようにしましょう」と呼びかけました。
使用期限については、一般社団法人・日本ガス石油機器工業会も「カセットこんろは製造後10年を目安に買い替えの検討を、カセットボンベは製造後7年以内を目安に使い切ってください」としています。
その上で、防災備蓄用のカセットこんろとボンベについて、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震で実際に起きた事例として、以下のように注意喚起をしました。
<・経年劣化が進んでいて使えなくなっていた。
・使ったことがなくて初めて使うものだから、「操作方法がわからない」「怖くて使えない」。
・屋内は倒壊が怖いので屋外に避難したがほとんど使えなかった。
・寒かったので狭い締め切った場所で使っていたら酸欠・一酸化炭素中毒になって命が…。>
防災のために備蓄を続けた結果、使用期限を迎えてしまった例や、カセットこんろを使ったことがなく、いざ使おうとしたときに怖くて使えなかったという例、「狭い閉め切った場所」で使っていたことで、酸欠や一酸化炭素中毒になり命にかかわる事態になった例があるということでした。
日本ガス石油機器工業会は「使用期限に注意して、買い替えの検討や使い切りを心がけてください」としたほか、「日常で使っていないといざという時に役立てられません」と、普段からカセットこんろを使用するように勧めています。