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#10 はたらく年末年始
「元日休みは一度もない」20年勤続の職員が語る東京タワーの年末年始
東京のランドマークとして親しまれている「東京タワー」。年末年始も無休で営業しているため、多くの観光客が訪れます。元旦には、タワーから見る初日の出のイベントもあり大盛況。年末年始も来塔客へのおもてなしをする東京タワーの担当者に話を聞きました。
東京・港区の芝公園にある東京タワーは、総合電波塔として1958年に完成して以来、今では年間230万人もの観光客が訪れる観光名所となっています。
年末年始も営業していて、元旦には展望台から初日の出を見るイベントを開催しています。
東京タワーで20年働く観光本部営業部副部長の山崎真吾さん(41)は「毎年1月1日の午前0時半ごろから、初日の出のイベントの準備を始めます」と話します。
東京湾から昇る初日の出を見られるとあって、事前予約制にしてもすぐに完売するほどの大人気イベントですが、展望台の東側に椅子を並べたり、来場者への手土産の準備をしたりと、東京タワーで働くスタッフは、新年になった瞬間から初仕事が始まります。
実は山崎さんは元日に休みだったことは過去に一度もないそうですが、「この高い場所からの素晴らしい初日の出を毎年見られるのは役得かもしれませんね」と笑います。
そんな山崎さんに昨年の年越し勤務を振り返ってもらいました。
東京のシンボルでもある東京タワーは毎日、日没から午前0時までライトアップをしていますが、大みそかの日は午後11時でライトアップは終了することになっています。
以前は年越しのカウントダウンイベントも開催していたのですが、人が集まり過ぎて危険なため、安全上の面で近年はイベントはせず、大みそかのみ午後11時でライトアップも終了することにしているといいます。
「ホームページにも掲載して周知を図っているのですが、海外の観光客は知らずに来てしまいます。他の海外のランドマークのタワーでは、ライトアップしてカウントダウンをすることも多いので、東京タワーも同じようにイベントがあるだろうと思ってしまって来るみたいです……」と山崎さんは話します。
そこで山崎さんは、2023年12月31日の午後11時半ごろから1時間ほど、「NO EVENT(イベントはありません)」と書かれたプラカードを持って、東京タワーの周りを歩くという仕事を担当しました。
すでに集まってきていた人たちもいたそうで、「それはもう、受けたこともないくらいの大ブーイングを受けました」と振り返ります。
とてもテンションの下がった仕事だったそうですが、最後には、海外の観光客から「それでもいい。一緒に写真をとろう」と撮影を頼まれたり、「俺がみんなにイベントがないことを伝えてあげる。プラカードを貸してくれ」と言って、イベントがないことの周知を手伝ってくれたりと、忘れられない思い出にもなったといいます。
東京タワーは昨年9月、来場者数が1億9千万人を突破しました。来場者も海外からの訪日客が4割以上を占めるそうです。
10月からは、1日70人限定の「東京ダイヤモンドツアー」という特別なツアーも始まりました。専用のラウンジを使えたり、専任のパフォーマーが東京の歴史を語りながら、待ち時間なく、高さ250mのトップデッキまで案内してくれるそうです。
また、東京タワーはこの1月1〜3日に特別なライトアップもする予定です。
山崎さんは「東京タワーのこの場所はもともと明治から昭和期に高級料亭『紅葉館』という社交場があり、たくさんの方をもてなしてきました。その精神を引き継ぎ、これからも多くの人に愛される東京のランドマークとして、おもてなしをしていきたいと思います」と話しています。
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そば屋、神社、清掃工場、銭湯、介護現場……多くの人がお休みをとる年末年始も、変わらず働く人たちがいます。どんな思いで働き、どんなストーリーがあるのでしょうか。
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