また、女性の方がロング・コビットやワクチンの副反応が起きやすく、男性の方が新型コロナウイルス感染による死亡率が高いことには、近年、性ホルモンが関与しているという見方があるといいます。
男性ホルモンと呼ばれるテストステロンは、ウイルスの制御にも関わるとみられています。テストステロンが高い男性では、ウイルスの制御が抑えられ、炎症物質が発生しやすく、炎症物質が急激に大量発生すると、全身に影響して死亡リスクが高まります。
女性はテストステロンが低いため、ウイルスの制御が促され、死亡に至りにくいものの、その分、慢性的な炎症や、持続的な免疫反応が引き起こされやすく、ロング・コビットについては症状が重く、多臓器にわたる影響が出やすい、と考えられているそうです。
下畑さんは「ロング・コビットの症状は症例ごとにさまざまで、なかなか治療薬が開発されない原因になっている可能性がある」と指摘します。
「感染直後に抗ウイルス薬を飲むと、飲んでない人と比べて後遺症になるリスクが下がるという報告があります。また、アメリカでは、抗ウイルス薬を飲むことで、持続感染するウイルスを取り除く効果をみる臨床試験も進行中です」
ただし、現時点では、発症してしまうと、有効な治療が確立されていません。下畑さんは「そのため、感染予防やワクチン接種によって新型コロナウイルスから体、特に脳を守ることが重要であることを、ぜひより多くの人に知ってもらえればと思います」と話しています。
※1. Estimated Global Proportions of Individuals With Persistent Fatigue, Cognitive, and Respiratory Symptom Clusters Following Symptomatic COVID-19 in 2020 and 2021 - JAMA. 2022 Oct 25;328(16):1604-1615.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36215063/
※2. Long-term neurologic outcomes of COVID-19 - Nat Med. 2022 Nov;28(11):2406-2415.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36138154/
※3. Prospective Memory Assessment before and after Covid-19 - N Engl J Med. 2024 Feb 29;390(9):863-865.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38416436/
※4. Posthospitalization COVID-19 cognitive deficits at 1 year are global and associated with elevated brain injury markers and gray matter volume reduction - Nat Med. 2024 Sep 23. doi: 10.1038/s41591-024-03309-8.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39312956/
※5. Characterizing Long COVID in Children and Adolescents - JAMA. 2024 Aug 21;332(14):1174-1188.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39196964/