連載
#64 イーハトーブの空を見上げて
国内最大級の「もちまき」開催 「もち」の町をPR…一番のごちそう
岩手県一関市は「もち」の町として知られている。
秋には地域の食文化であるもちの魅力を全国に発信しようと、「全国もちフェスティバル」なる催しが開かれる。
会場には、もちプリンやもち入りメンチカツ、もちギョウザなど、独創的なもち料理の屋台が並び、県内外からもち好きの人々が詰めかける。
最大の目玉は、国内最大級のもちまきだ。
昨年は舞台から約1万個のもちをまいたものの、主催者は「十分には満足できなかった」らしく、今年は昨年の2倍の約2万個のもちを、会場の舞台から詰めかけた参加者の頭上に向かって盛大にまいた。
「一関と言えば、やっぱりもちなのよね~」と両手をもちでいっぱいにした参加者が笑う。
「お祝い事があると必ず出てくるの。一番のごちそうなのよ」
一関地方には300種以上のもち料理があるとされる。
かつては「もち暦」が存在しており、年60日以上ももちをつく日があった。
どうして、そんなにもちが好きなのか?
一関もち食推進会議発行の「もちのまち」によると、藩政時代、伊達藩は開墾を推奨し、毎月1日と15日にもちをついて神に供え、小豆と一緒に食べる習慣があった。
しかし、農家にはもちを食べるゆとりがなく、くず米を粉にして練り、雑穀などと混ぜ合わせて食した。
くず米をおいしく食べる工夫として、沼地に生息するエビやヨモギなどを使ったもちが生まれたとされる。
結婚の際は近隣住民らが玄関口に集まり、「もちつき歌」を歌いながらもちをつき、新婦を出迎えた。
新婦が実家から持参してきた一升もちをあんこもちにして、近所に振る舞う「まわしもち」という風習もあったという。
昨年の全国もちフェスの会場では、実行委員長が焼けたもちのかぶり物をかぶって会場を練り歩いていた。
もちが好きなんですね、と声を掛けると、「当然」と嬉しそうに答えた。
「故郷の誇るべき食文化ですし、それ以上に、おいしいでしょ?」
(2023年11月、2024年10月取材)
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