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寅子の「はて?」に込めた意味、脚本家語る 流行語大賞にノミネート
脚本家の吉田恵里香さんに聞きました
「2024ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)に、NHKの朝ドラ「虎に翼」で話題になった、主人公・寅子の口癖の一つである「はて?」がノミネートされました。ドラマ内では寅子が社会のあり方などに疑問を感じたに、「はて?」と口にします。その表現に込めた思いについて、脚本家の吉田恵里香さんが、朝日新聞デジタルの「Re:Ron」のインタビューで語ってくれました。
――「虎に翼」のキーワードでもある「はて?」という言葉に込めた思いは。
納得いかない、疑問を感じる、分からない、ということについて、なるべく相手を否定しない形で、どういう意味なのか、対話しよう、ということを念頭において考えた言葉です。
それこそ、作品を通して何回も出てくる「思ったことは口に出したほうがいい」「声を上げる」がテーマで、その一つとして、最初から敵対するわけじゃなく、相反する意見を持っている相手でも、話し合えば何か着地点があったり、実は言葉が足りていなくて誤解だったりすることもある。そういうことをできるワードが「はて?」です。
――裏返すと、そうした対話が足りていないという問題意識があったのでしょうか。
そうですね。主語を大きな単位にして話すことはあまり好きじゃないんですけど、「女性」って大人になればなるほど、発言・主張するよりも、何となくわきまえて三歩下がったり全てを寛容に受け入れたり、誰に対しても母親のような「母性」を求められることが多くて。自分の意見を求められていないというか、主張しちゃいけない。
主張すると「大人げない」と敵対視されてしまうことが多いと思ったので、そこに疑問を呈したかったんです。
――最終回の後には「これまで声を上げて社会を変えてきた全ての人たちに、私も続きたいです。全ての差別と戦争虐殺がなくなり、真の意味での平等な世界が来ますように」とSNSにつづりました。エンターテインメントの可能性についてどう考えていますか。
ニュースでもあまり戦争の話をやらないから、何となくひとごとに思ってしまう人が多いんじゃないかな。当たり前ですけど、地球って一つしかなくて地続きで、自分の生活や人生にも直結することだから、それこそ戦争に反対することも含め、できることがあるんじゃないかなと思っています。
戦争の足音が近づいて、エンターテインメントもこの10年ですごく変わった気がしています。「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」や「福田村事件」など、切り口は違えど遠い昔の出来事ではなく、風化させない、当事者意識を持とうと訴える作品が増えてきました。
スマートな描き方は難しくなってきたというか、自分たちに関係ないこととして戦争のリアルを繊細に伝えていくというのもあると思うけど、ちょっと荒々しくても、直球で伝えなくてはいけないのかな、とも感じています。「虎に翼」も、裁判を通じて国際法や戦争に関わる話がありました。一人ひとりでできることは限られているけれど、声を上げないといけない、ということは伝えているつもりです。
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