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IT・科学

外科医の魅力を知ってほしい!イベントが盛況 背景にある〝危機感〟

空気の通り道を確保する「気管挿管」を体験する子ども。イベントでは現役外科医たちが子どもに対応していました
空気の通り道を確保する「気管挿管」を体験する子ども。イベントでは現役外科医たちが子どもに対応していました 出典: 水野梓撮影

目次

子どもたちに外科医の仕事を知ってもらおうと、日本外科学会が体験型イベントを開催しました。予想を上回る申し込みがあり、会場は大賑わい。実は、外科学会が学術集会と別の日程でこういったイベントを開催するのは初めてとのこと。背景には、ある〝危機感〟があったといいます。(withnews編集部・水野梓)

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「あこがれが高まった」

体験型イベント「オペスル」が開かれたのは11月17日、東京都江東区の日本科学未来館です。

予約ブースでは、手術着を身につけた子どもたちが、ロボット支援手術の機器を操作してみたり、電気メスをさわってみたり、手術のように糸で縫ってみたり……と、「医療現場」を体験。予約なしで参加できるブースもにぎわっていました。

糸と針を使って「縫う」体験をする企画。体験キットは、金魚すくいの「ポイ」を使って外科医が開発したといいます
糸と針を使って「縫う」体験をする企画。体験キットは、金魚すくいの「ポイ」を使って外科医が開発したといいます

「お医者さんになるのが夢」という小学3年生の男の子は、「きょうの体験であこがれが高まりました」と話してくれました。

外科学会の武冨紹信(あきのぶ)理事長は「子どもの頃の体験や衝撃って強く心に残りますよね。このイベントをきっかけに、外科医の仕事に興味を持つ子どもがひとりでも増えてくれたらうれしいです」と語ります。

胸骨圧迫(心臓マッサージ)を体験するブースも
胸骨圧迫(心臓マッサージ)を体験するブースも

日本の外科医55%が50歳以上

外科学会が学術集会とは別日程で、子どもたち向けに体験型イベントを単独開催したのは初めてのこと。背景には〝外科医不足〟への危機感があるといいます。

武冨さんは「すでに日本の外科医の55%は50歳以上なんです。医学生や初期研修医に外科医の魅力をアプローチしていくことはもちろんですが、子どもの頃から身近に感じていてもらいたいと思いました」と語ります。

外科系の医師を志望する人は減少傾向にあり、2022年に外科学会が出した「外科医希望者の伸び悩みについての再考(https://jp.jssoc.or.jp/modules/aboutus/index.php?content_id=68)」というメッセージでは、その理由を下記のように考察します。
 
・専門医資格を取得するのに時間がかかり、生涯労働期間が短い
・勤務時間が長い(ワークライフバランスが十分に考慮されていない)
・給与が勤務量に見合っていない
・医療訴訟のリスクが高い
・女性医師への配慮が乏しい

その上で、「若手外科医の確保は、外科医療を遅滞・衰退させないために、最も重要な課題と言っても過言ではありません」と訴えます。
医療機器の使い方を体験するブース。企業からの出展もありました
医療機器の使い方を体験するブース。企業からの出展もありました

武冨さんは「今年度から始まった時間外労働の上限規制もあり、医師の書類仕事を別の職種へシフトしていくなど労働環境の改善はもっと進めていかなければなりません。一方で、子どもや若い人たちに外科医を身近に感じてもらう取り組みも大切です」と指摘します。

「外科医はハードで手先が器用でないと…と思っている人もいるかもしれません。でも、こつこつやり続けられる心の強さがあれば大丈夫です。イベントは、そんなイメージを変えるきっかけにもしてほしいです」と言います。

電気メスを使ってみるブース。チリチリと音がしていました
電気メスを使ってみるブース。チリチリと音がしていました

自分の手で患者さんを治す充実感

このイベントは、外科学会の若手・中堅医師たちからの発案で、3カ月ほどで急ピッチで計画・実施したそうです。

ふだん手術や診療に忙しい現役医師たち30人が駆けつけ、手の動かし方や器具の使い方を子どもたちに分かりやすく伝えていました。

ロボット手術支援のシミュレーターを体験する子ども。立体に見えるメガネをかけて、手元で操作します
ロボット手術支援のシミュレーターを体験する子ども。立体に見えるメガネをかけて、手元で操作します

5月に理事長に就任してから学会のスローガンに「外科医を元気に 国民に安心を」を掲げたという武冨さんは「子どもたちに自分の仕事を伝える医師たちが生き生きとしていて、うれしくなりました」と話します。

イベントの予約セッションは3日で満席となり、予約なしで参加できるブースは30分待ちにも。のべ600人ほどが参加する好評ぶりで、学会では、今後も同様のイベントを開催できないか模索していくそうです。

イベント「オペスル」のフォトセッションブース「オペサレル」
イベント「オペスル」のフォトセッションブース「オペサレル」

武冨さん自身は、外科医のやりがいを「自分の手で手術して、患者さんの体を治すことができる充実感があります」といいます。

イベントを通じて「人体の奥深さやいのちの大切さを知ってもらうことができたらと願っています」と話しています。

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