連載
#27 宇宙天文トリビア
あの〝望月の歌〟がついにドラマで… 「道長と同じ月を見上げよう」
紫式部を主人公にしたNHKの大河ドラマ「光る君へ」がクライマックスに近づいています。紫式部と同時代に栄華を極めた貴族・藤原道長が、有名な和歌「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」を詠んだのは、旧暦の10月16日。今年のその日は11月16日で、夕方には東の空から満月が昇ってきます。(デジタル企画報道部・東山正宜、小川詩織)
千年の時を超えて読み継がれている『源氏物語』をつづった紫式部(まひろ)が主人公の大河ドラマ「光る君へ」。
『源氏物語』制作のために藤原道長が、当時は貴重な紙をまひろに差し入れるシーンも描かれました。
そんな道長が詠んだとされる有名な和歌が、11月17日の放送の第44回「望月の夜」の予告で言及され、SNSでは「ついに」と話題になりました。
望月の和歌が詠まれたことは、藤原実資(さねすけ)の日記「小右記(しょうゆうき)」に記されています。
日記の日付は、寛仁2年10月16日(ユリウス暦では1018年11月26日)でした。
この日は、娘の威子が後一条天皇の中宮となった後の宴が催されていました。太皇太后(彰子)・皇太后(妍子)・中宮の三后全てが道長の娘であったことから、絶頂期にあったと考えられています。
当時は太陰暦ですから、16日はそのまま十六夜(いざよい、新月から16日目の夜または月)です。ただ、実際の月齢は少しずつずれるため、日付がそのまま月齢にならないこともあります。
調べたところ、この日の夜は満月だったようです。
今年2024年のこの夜も月はまたまた満月です。夜空には、道長が見上げたのとほぼ同じ月が見られるでしょう。
さらに、道長が月を見上げたであろう10月16日夜の、満月の瞬間からの「経過時間」が、今年の11月16日とほぼ同じです。差は1時間ほどとなり、これは「見える月の形がほぼ同じ」であることを意味します。
両日とも満月の瞬間を迎えるのは午前6時~7時頃なので、夜にはほんのわずかにかけた月が見られることになります。
平塚市博物館(神奈川県)の学芸員は「同じ月という現象はものすごく珍しいというわけではありません。旧暦10月16日が満月という点では、2018年もそうでした。満月の瞬間からの経過時間を踏まえても、十数年に一度はあると思います」と説明します。
平塚市博物館は、11月16日の月を観察し、「#道長と同じ月を見上げよう」というハッシュタグをつけてSNSで共有しようというキャンペーンを呼びかけています。
学芸員は「大河ドラマ『光る君へ』が放送中のちょうど今、天文と歴史や文学をつなげたい、天文好きな人たちに歴史や文学の面白さを知ってほしいと考えました」とキャンペーンの狙いを話します。
「天文は様々なものとつながる裾野の広い分野ですから、そのことを知ってもらいたいです。同時に、星空を見上げるだけで日本中の人と思いを共有できる、さらには1000年も前の人とつながることができる、ということを感じてもらいたいと思っています」
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