MENU CLOSE

ネットの話題

毛をなびかせ駆け寄る愛犬…急逝後に制作「不思議と涙が出なかった」

「大治郎十五年間ありがとう」

大源さんによる、大治郎のフェルト作品=大源さん提供
大源さんによる、大治郎のフェルト作品=大源さん提供 出典: 大源さんのXアカウントより

目次

飼い主に向かって、元気よく楽しく駆け寄ってくる――。毛の流れや表情から生き生きとした雰囲気が伝わってくる、羊毛フェルトでつくられた作品。手がけたのは6月に愛犬を亡くした飼い主でした。

【PR】指点字と手話で研究者をサポート 学術通訳の「やりがい」とは?

元気に散歩…から一転、15歳で急逝

羊毛を針で刺し固めて作る「羊毛作品」で、急逝した愛犬の姿を再現したのは、大源マムさんです。

大源さんによると、15歳だった愛犬・大治郎(だいじろう)は6月22日の早朝、元気に散歩をした後、深夜に急に立てなくなったといいます。

急いで救急病院に連れていくと、心臓に腫瘍があることが判明。手術を含め治療を施したものの、6日に亡くなりました。

「大治郎との急なお別れは想像を絶するショックなものだった」と大源さん。楽しかった日々よりも、大治郎が倒れてからの6日間のことばかりが思い出され「泣くこと以外なにもできない日々」が続いたのだそう。

しかし、「大治郎もこんな状態を望んでいない」と思った大源さんは「私が大好きだった大治郎の姿をかたちに残そう」と作品の制作を始めたのです。

2023年の大治郎(左)と、同じく大源さんの愛犬・源之介=大源さん提供
2023年の大治郎(左)と、同じく大源さんの愛犬・源之介=大源さん提供 出典:大源さんのXアカウントより

「私よりよっぽど人間ができてた」

大治郎の名前の由来は、池波正太郎さんの「剣客商売」の登場人物、秋山大治郎から。

大源さんの夫が実家で飼っていた犬が、同じく池波正太郎作品の「鬼平犯科帳」から由来した「銕三郎(てつさぶろう)」くんだったことから、その流れを受け継ぎました。

大源さんは、大治郎の性格を「とにかく温厚」と言います。

「犬生」で一度も怒ったことがなかったそうで、「ニコニコしてフレンドリー。穏やかで私よりよっぽど〝人間ができて〟いました」。

毎年、ドッグトレーニングをゲーム形式にした競技会に出場していたという大治郎。目立つのが大好きで「とにかく表に出たがっていた」といいます。「勝っても負けてもドヤ顔。チーム戦だったので、メンバーの皆さんとお泊りしたりバーベキューしたり……。大治郎のおかげで人生で初めて経験することばかりでしたしどれもこれも全て楽しく大切な思い出です」と、大源さんは懐かしみます。

3歳のときの大治郎=大源さん提供
3歳のときの大治郎=大源さん提供 出典:大源さんのXアカウントより

60時間の制作「あの時間がなかったら…」

そんな大治郎が急に亡くなってしまい、悲しみにうちひしがれていた大源さん。そこで、数年前から制作するようになった羊毛作品として、大好きな大治郎の姿の一つ「ボール遊びをしているときにボールを持って駆け寄ってくる様子」を、再現するような作品を作ることに決めました。

トータルで60時間ほどの制作中は、「とにかく『大治郎はかわいいなあ』と思い続けていた」そうです。
大治郎が走っている写真を複数枚並べて参考にしながら制作をしましたが、その写真を見続けることで「幸せな日々は確かにあったのだと、亡くなるときのつらい状態がすべてではないんだと自分に言い聞かせていました」。

「作業中は不思議と涙は出なかった」といい、「作るためには泣いてはいられないので、淡々と手を動かすことができました。あの時間がなかったら、いまでももっと『ロス』状態だったと思っています」と振り返ります。

あたたかなリプライ続く

作品を完成させると、「こんなにも愛された大治郎というワンコがいたのだということを誰かひとりにでも見てもらえたらうれしい」と思い、市の展示会に出品することにしました。

作品名は「大治郎十五年間ありがとう」。奨励賞を受賞し、寸評には「家族の一員としての愛情が十分に伝わってくる」とありました。

大源さんは「賞がいただけるとは思っていませんでしたし、あたたかい寸評をいただきとてもうれしいです」と語ります。

この展示会のことをXで「大治郎ありがとう」という言葉と共にも投稿すると、3万件近くの「いいね」がつきました。


「少し前のことですが、今回出品した『フライング大治郎』が完成した際に『浮かせて飾れるように夫が台を作ってくれた』とポストをしたときに、3万以上のいいねをいただきました。あの時も今回も嬉しい反面どんどん拡散されていくさまが恐ろしくびくびくしていましたが、とても優しくあたたかいリプライや引用ばかりで本当に感謝しています」

なかには技術面を評価し「本物に見える」というコメントや、「愛情を感じる」「泣いた」といったコメントも。

「大治郎を失ったことがあまりに辛く、『もう会えないんだ』『全てなくなってしまった』と悲しみばかりの毎日でしたが、大治郎の存在が初めから全て消え去ったわけではなく、確かに存在していて、私にたくさんのことを遺してくれたのだと思えるようになりました」

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます