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連載

#87 「きょうも回してる?」

再起かける〝サン宝石〟のいま 「ほっぺちゃん」のガチャにも人気

「ほっぺちゃん」の数え方に愛

2013年当時の、サン宝石の実店舗。ピンクを基調にした直営店内には、所狭しと商品が並んでいた=山梨県
2013年当時の、サン宝石の実店舗。ピンクを基調にした直営店内には、所狭しと商品が並んでいた=山梨県 出典: 朝日新聞社

目次

昭和・平成を生きた、女の子たちの共通言語とも言えるかもしれない「サン宝石」――。民事再生法の適用が話題になりましたが、現在、再起をかけて奮闘しているのだといいます。その打ち手の一つが「ほっぺちゃん」のガチャガチャ。ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。

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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

500人→15人となった従業員で奮闘

2021年に民事再生法の適用を申請したサン宝石が、再起に向けて歩みだしています。

サン宝石と言えば、カタログ通販で買い物をした思い出がある、昭和~平成に子ども時代を過ごした方が多いのではないでしょうか。
サン宝石は、『りぼん』や『ちゃお』など少女マンガ誌を中心に広告を出したり、安くて可愛い子ども向けアクセサリーやファンシー雑貨を作ったりしていました。

商品は、どれも子どものお小遣いで買える、10円から数百円。500円あれば、いくつでも買えました。

しかし、時代の変化とともに、100均などの店舗が増え、お客さんの嗜好が多様化していきます。また、WEBの普及が進むにつれアナログな通販事業が衰退し、新規顧客の獲得が難しくなり、企業を取り巻く環境の変化に追いつくのが難しくなっていきました。そして、サン宝石は21年に民事再生法の適用を申請。

全盛期は、通販事業を中心に、実店舗も全国に40店舗以上あり、中国で自社工場を構えていました。従業員は多い時には500人もいたそうです。
現在は、みっとめるへん社サン宝石事業部として事業を継続し、従業員15人で再起をかけて奮闘しています。

サン宝石事業部の神崎仁美さんは「アナログ文化で、カタログから注文することこそが、サン宝石でした。その切り替えが遅れてしまったのが敗因です。民事再生のとき、『サン宝石はまだあったんだ、倒産しそうじゃん』という声がありました。一方で、子どもの頃にサン宝石を購入してくれた大人の方が『つぶれないで! サン宝石』と応援してくださる方がたくさんいました。だからこそ、サン宝石を再起させたい。その思いがあります」と話します。

ほっぺちゃんを持つサン宝石事業部の神崎仁美さん
ほっぺちゃんを持つサン宝石事業部の神崎仁美さん

流通方法を変更、ガチャガチャにも参入

再起をかけて取り組んでいるのが、商品の流通方法を変えることです。

今までサン宝石は、通販事業や実店舗で直接お客様とやりとりをしていましたが、お客様との直接やるとりする形ではなく、卸業者や専門店を通じて商品を届けるかたちにシフトしています。

そのひとつが、ガチャガチャ業界への参入です。2023年から本格的に展開を始めました。

ガチャガチャ業界は現在、昭和レトロ、平成レトロの商品が増え、レトロブームがきています。サン宝石も市場へ露出度を高めたことで、サン宝石のファンシー雑貨や、丸くてふっくらとした頬が特長のオリジナルキャラクター「ほっぺちゃん」が、注目を浴びるようになってきました。

とくにほっぺちゃんへの注目がすごい。

2023年末に上げはじめた「ほっぺちゃんを絞って製作する動画」がバズり、トレンド上位になりました。その後10本以上の動画で累計約2500万回以上の再生がありました。

ほっぺちゃんの製作風景
ほっぺちゃんの製作風景

数え方は「個」じゃなく「人」

今回は9月に発売された「スーパークリアほっぺちゃん」を紹介します。

ほっぺちゃんは、ガチャガチャ業界の常識では考えられない、1個1個が手作りの商品です。現場の人がシリコン材料を手絞り、ひとつずつ丁寧に作っています。まさに、職人作業でメイドインジャパンのガチャガチャです。

商品は一般的に「個数」で表現しますが、サン宝石はほっぺちゃんを一人、二人と数えるそうです。現場でほっぺちゃんを大切に作っているという愛情が伝わってくるエピソードです。

ガチャガチャの商品の一つ、「スーパークリアほっぺちゃん」も1個1個手絞りで、かつサン宝石独自の透明なシリコン材料で作られているところが凄すぎてなんとも言えません。

その魅力について、神崎さんは「ほっぺちゃんは、いつも寄り添ってくれるキャラクターです。見てください、ほっぺちゃんは口もないし、眉毛もない、表情がありません。しかし、自分が悲しい時には一緒にほっぺちゃんも悲しんでいるように感じるし、嬉しいときには一緒に喜んでくれるように感じます。ほっぺちゃんは、いかようにでも変化できます」。

「どんな人にも自分に寄り添ってくれる、それがほっぺちゃんです」と教えてくれました。

スーパークリアほっぺちゃん
スーパークリアほっぺちゃん

サン宝石の醍醐味「思い出につながる体験」

とはいえ、ガチャガチャの商品は大量生産です。市場に出れば数千ではなく、数万単位で作らなければいけません。

ほっぺちゃんは手作りのため、現在の原材料上昇などのコストを考えれば、赤字限界まで来ているそうです。そのため、ガチャガチャのほっぺちゃんは貴重です。しかしながら、ガチャガチャ以外に、ほっぺちゃんは今年から全国の店舗のコーナーで展開を始めたり、ほっぺちゃんのイベントも開催しています。そこでほっぺちゃんに出会えます。

今後の展開について神崎さんに尋ねると、「サン宝石の商品は、ほっぺちゃんのように、『懐かしい、めちゃ揃えていたよね』みたいな友達と交流ができ、思い出に繋がる体験ができます。例えば、サン宝石の商品でクラスの人気者になれたり、人気者になれる自分も想像できる体験を、今後も提供していきます」。

「今後は、くだらなくてクスっと笑える商品を出していきたいですね。ほっぺちゃんは原価を考えれば難しいですが、諦めたわけではありません」と教えてくれました。

今後のサン宝石の商品が楽しみです。
     ◇
スーパークリアほっぺちゃんは、1回400円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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