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白いおむつ「はくの抵抗ある」声に… 色・素材・デザイン一新の挑戦
おむつと聞いて思い浮かべるのは何色で、どんな形ですか?赤ちゃんや高齢者のほか、日常的に着用する必要のある人もいますが、はくのに抵抗があるという声もあるそうです。もっとファッション性の高いおむつが提供できないか――。カラフルなおむつの試作品の写真を投稿してきた理由を、投稿者に聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・高室杏子)
<大人用の白いオムツをはく際に自尊心が傷つき、以降お洒落をする気力が無くなったという人に「どんなオムツがあったら嬉しいですか?」って聞いたら、「日によって好きな色が選べるオムツセットとかあったら最高」って言ってたので試しに作ってみた>
そんな風にXへ投稿したのは、車いすのモデルらによるファッションショーを開催してきた平林景さんです。
7色に染めたおむつを並べた写真を添えた昨年12月の投稿は、「落ち着いたカラー展開もほしいです」「オムツ=お年寄りでもないし若くて理由があってオムツの人もいるから絶対これいい!」など反響があり、4万件を超える「いいね」がつきました。
初めて大人用の白いオムツを穿く際に自尊心が傷つき、以降お洒落をする気力が無くなったという人に「どんなオムツがあったら嬉しいですか?」って聞いたら、「日によって好きな色が選べるオムツセットとかあったら最高」って言ってたので試しに作ってみた✨
— 平林 景@ソーシャルイノベーター (@KeiHirabayashi) December 16, 2023
おむつレインボーアソート
お花を添えて🥀 pic.twitter.com/6LsZgzRKTc
また、黒地に赤のラインをあしらったスポーティなデザインのおむつの写真を投稿すると、「真夏だとこのままコンビニに行けそう」「このデザインならおすすめしやすい」などと好反応が寄せられました。
「白いおむつを穿くのって、めちゃくちゃ抵抗感がある!」って、様々な年代の方々が言っているので、
— 平林 景@ソーシャルイノベーター (@KeiHirabayashi) May 24, 2024
もういっその事、『おむつ感』を完全に無くしてスポーティーなデザインにしてみたら、抵抗感も軽減するかも?と思い、試しに作ってみたんですけど、、どうっすか?
(ちなみに内側は白です) pic.twitter.com/qlNj2JWeKH
きっかけは2022年、パリのコレクションウィークでのファッションショーでした。テーマは「車いすだから映える服」。その時、車いすユーザーから「服もすごくありがたいけれど、おむつもお願いしたい」と打ち明けられたのだといいます。
介護事業所の経営者や高齢の親を介護している人などにも尋ねると「おむつをはくことに抵抗感のある人は多い」「頼むからはいてほしいけど、親ははいてくれなくて困っている」というい話も聞いたそうです。
また、若い車いすユーザーからは「おむつをはいている姿を見られたくないから友達とは旅行に行けない」という声も。
「これまでは高齢者を中心に『下着は白』というイメージを持つおむつユーザーが多かったから『おむつも白』に疑問を覚えるひとは少なかったのだと思う」と平林さん。
しかし、「下着の色や形の選択肢がたくさんあるのが普通という世代がおむつを使うようになってきた過渡期なんです。ファッションと同じで、おむつの可能性を広げたい。はく人にとっての選択肢を増やしたいんです」と力を込めます。
実際に平林さん自身が白いおむつを身につけた時、「大人が赤ちゃんの格好をしているようでちぐはぐな違和感があった」といいます。
「白くてもこもこしているのがおしゃれじゃなく見せているのかな」と考えた平林さん。
そこで、「今の下着と変わらないおむつならばどうだろう」と考え、白いおむつを黒く染めてみたところ、違和感は減ったようです。
初めてオムツをする大人は抵抗感があるって聞いて、市販してる白いオムツを試しに穿いてみたら、何とも言えない抵抗感と、オシャレを諦めさせられる様な敗北感をうけた。。色?と思い試しに黒く染めてみたら不思議と抵抗感が減った。
— 平林 景@ソーシャルイノベーター (@KeiHirabayashi) November 8, 2023
色の選択肢が増えるだけでも気持ちが楽になる人は増えそうだよね。 pic.twitter.com/2WhQdlQ5VF
しかし、おむつを染めることは「めちゃめちゃ難しかった」と話します。
そもそも衛生用品であるおむつ。健康管理のために尿の色がわかるよう、おむつの内側は白でなければなりません。
物理的にもハードルがあり、おむつには吸水性ポリマーがあるため、鍋やバケツのなかで染料を溶かした水に漬ける染め方はできません。
そこで、おむつの外側だけ刷毛で色を付け、乾かし、色が薄いところに再び色を付け……と、繰り返し染めていきました。1つのおむつを染めるのに3日ほどかかったといいます。
なぜそこまでしておむつを染めていたのでしょうか。平林さんは「企業に試作品として見てほしかった。おむつを作ってきた企業を巻き込めたら、店に並ぶ商品も一気に変わるからです」と答えます。
「おむつの外側は不織布。不織布はつくる段階で染料を入れれば比較的簡単に色をつけられます。きっと日常使いができるカラーのおむつはすぐに当たり前になると思いますし、なってほしいです」
平林さんは2025年、大阪・関西万博で自身がデザインを提案した「おむつ」を身につけたモデルたちによる2000人規模のファッションショーを行う予定です。
披露するおむつは、平林さんだけでなく、排泄ケアやおむつメーカー、医療デザインに詳しい理学療法士や医師らの知識も詰め込みました。
色のほかに、丈を変えたり、素材を繰り返し使える布にしたり、伝統工芸とタッグを組んだり……。また、ショートパンツやハーフパンツのように下着とボトムスの役割を兼ねたおむつも準備しているといいます。
「車いすだから映える服のように、普段おむつを使う必要のないひとも身につけたくなる、NextUD(ネクスト・ユニバーサルデザイン))なものを目指しています」
万博で登場するモデルも募集しています。
「いずれ自分も身につけるかもしれないファッションの選択肢として、特に若い世代に見てほしいです」と話しています。
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