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教科書で見たことある「はにわ」も…! 実は〝埴輪王国〟群馬の理由
3Dホログラムで浮かび上がる埴輪(はにわ)に、出土した埴輪たちを紹介する「図鑑」の公開――。群馬県が埴輪の魅力を知ってもらう情報発信に力を入れています。8月20、28日は「埴輪の日」。実は「群馬は埴輪王国」だという理由を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・高室杏子)
目を細めてほほえむように見えたり、手を挙げてポーズを決めていたり、剣を手にしていたり……。埴輪の表情やしぐさに癒やされ、魅力を感じるひとも多いのではないでしょうか。
群馬県立歴史博物館では、「デジタル埴輪展示室」で埴輪の3Dホログラムを使った展示があります。4カ所に設置された透明なケースの中で、宙に浮いてゆっくりと回転している埴輪の立体映像が映し出されています。
うち3カ所では、立体映像が切り替わり、飾りを付けた馬、武装した男性、鶏なども見ることができ、展示室では合計10点のホログラムの埴輪を360°から眺めることができます。
また、群馬県は博物館に行けなくても埴輪の魅力を垣間見られる「図鑑」を県公式のホームページとして公開しています。その名も「しらべるHANI-図鑑」。
群馬県内で出土した201点を含む計245点の埴輪の写真と、出土した場所、大きさ、何をかたどったとみられるかなどのデータを紹介しています。
そのうち、県内で出土した50点については3Dデータも公開し、PCやスマホ、タブレット上で自由に動かしていろんな角度から眺めることができます。
そもそも埴輪は、権力者のお墓である古墳を囲むようにして立てられていた素焼きの造形です。円筒形、人物、馬や鳥などの動物、家、甲冑などの武具などをかたどったものが出土しています。
作られた理由は、お墓を守る結界の役割だったとか、お供えものの台だったとか、作られた年代・種類によって様々だそうです。
古墳の数が集中する近畿地方では、埴輪は大型の古墳を囲うように立てられる傾向があるようです。一方で、群馬では比較的小さい古墳でも埴輪が立てられることが多いとのこと。
かつ、東日本最大の全長210メートルの天神山古墳(太田市)をはじめとした大規模な古墳も多いため、古墳を囲う埴輪の数もその分多いようです。埴輪をつくる集団が暮らしたとされる村もあったといいます。
日本で初めて国宝に指定された埴輪「挂甲の武人埴輪(けいこうのぶじんはにわ)」も群馬県で出土しました。「教科書で見たことがある」という人も多いのではないでしょうか?
甲冑と剣を身につけた武人の埴輪で、細かい装飾の美しさ、感情が読みとりにくい武人の表情に目を引かれます。
また、高崎市の綿貫観音山古墳は2020年に、出土した全ての埴輪と副葬品が国宝に指定されました。全国の国宝・国指定重要文化財の埴輪のうち、群馬県出土のものは4割を占め、群馬はまさに「埴輪王国」です。
県立歴史博物館の学芸員・飯田浩光さんによると、博物館の3Dホログラムも「図鑑」も研究のために集めているデータを活用した展示だといいます。
「実物を身近で直接見る機会は限られているうえに、通常の展示だと背中側部分など見えにくい部分もあります。特に人物の埴輪などは、背中側の装飾が特徴的なものもあります。3Dデータをいかしたこの展示方法だと、見たい方向から見ることができるので、ぜひ細かい部分までじっくり見てほしい」
当時の権力者の墓である古墳。その周りを囲うように並べられていた埴輪――。飯田さんは、「埴輪は古墳時代の人々の暮らしや服装、儀礼や社会の様子、そして歴史を知るための大事な手がかりです」と埴輪の魅力を語ります。
群馬県の埴輪について、県の文化振興課の岩田渓佑さんも「種類が豊富で、見た目もかわいいと思える埴輪がたくさんあります。ぜひ、『図鑑』や博物館を入口に埴輪の魅力を発見してほしいです」と呼びかけます。
今年は、群馬県から出土した挂甲の武人埴輪が国宝に指定されて50周年。10月16日からは、東京・上野の国立博物館で特別展が開かれます。
全国各地から約120点の選りすぐりの至宝が集まり、「挂甲の武人埴輪」も展示されます。
「埴輪王国」の群馬で発掘された埴輪に、会いに行ってみてはいかがでしょうか?
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