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連載

#2 「AED持ってきて」~20年のいま~

AEDいざというとき使えますか? 市民解禁20年、8000人救う

AEDがどこにあるのか、日ごろから確認しておきましょう

いざというとき、救命処置をできますか?
いざというとき、救命処置をできますか?

目次

年間およそ3万人が、誰かの目の前で突然心臓が止まって倒れている――。そんなとき、まず使いたいのがAED(自動体外式除細動器)です。一般市民に解禁されてから7月で20周年を迎えましたが、目撃されても実際にAEDで電気ショックが施されたのは、4%程度にとどまっています。目の前で誰かが倒れたときにどうしたらいいのか、AEDの使い方は……。医師や専門家を取材しました。

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市民が救った命は8000人以上

AEDは、心臓がブルブル震える「心室細動」の状態になってしまった際、電気ショックによって元に戻すための機器です。

そもそもは医師たちしか使えませんでした。日本では2001年に国際線の航空機へAEDが搭載され、客室乗務員も使用が認められるようになりました。しかし、一般の市民も使えるようになったのは2004年7月に厚生労働省の通知が出てからのことです。

市民がAEDを使って救った命は、解禁翌年2005年の年間12人から、2022年は618人と大幅に増加。解禁から累計8000人以上とされています。

厚生労働科学研究費補助金による調査では、現在街中に設置されているAEDは推計69万台で、世界的にみても多いそうです。

街中に設置されているAED
街中に設置されているAED

目の前で人が倒れたら…

では実際に、目の前で人が倒れたらどうしたらよいのでしょうか?

日本AED財団によると、すぐに駆け寄って反応を確認し、周囲に人がいたら応援を求めることが大切です。

人が複数いる場合は、119番通報をする人、AEDを取りに行く人、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始める人というように手分けをします。

救急の現場でまず行うこと。日本AED財団の冊子より
救急の現場でまず行うこと。日本AED財団の冊子より 出典:日本AED財団

呼びかけても反応がなく、まともな呼吸がない場合はすぐに胸骨圧迫が必要です。胸骨の下半分に両手を組んだ手の付け根を当てて、胸が約5cm沈むまでしっかり体重をかけて押す必要があります。

1分間に100~120回のテンポで押し、倒れた人が動き出すか、救急隊員が到着するまで続けることがポイントです。このテンポは「アンパンマンのマーチ」の曲などが目安となるとされています。

周りに人がおらず一人のときは、まず迷わず119番通報。電話口で指令員が胸骨圧迫のやり方も教えてくれます。

近くにAEDがあると分かっている場合は、誰かに頼んで取りに行ってもらうとよいそうです。ない場合は救急隊が到着するまで胸骨圧迫を続けます。

心臓が止まってしまった場合、AEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下します。119番通報をしても、すぐに救急車が来るとは限りません。

総務省消防庁によると、2022年現在、救急車の到着時間は全国平均で10.3分となり、初めて10分を超えました。居合わせた市民による救命処置が命を救うカギとなります。

119番通報に加えて、胸骨圧迫をすることで約2倍、さらにAEDの使用で約2倍、救命率が上がるとされます。AEDが数分以内に使われることで、脳や心臓へのダメージが抑えられ、後遺症なく社会復帰できる可能性が高まるそうです。

判断に迷ったら、まず「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」を。日本AED財団の冊子より
判断に迷ったら、まず「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」を。日本AED財団の冊子より 出典:日本AED財団

AEDの使い方は

AEDが到着したら、電源を入れます。開けると自動で電源が入るタイプもあり、流れてくる音声ガイダンスに従って操作をします。

AEDは現在、8社が製品化しています。オレンジや赤色だけでなく、白や黄緑色などさまざまです。

見た目は違っても、使い方はいずれもシンプルです。

「パッドを胸に装着してください」などと音声で指示があるほか、貼る位置も電極パッドに描かれています。

貼る位置は、倒れている人の胸の右上(右鎖骨の下)と、胸の左下(脇の5~8cm下)の2カ所です。

AEDの使い方。日本AED財団の冊子より
AEDの使い方。日本AED財団の冊子より 出典:日本AED財団

パッドは素肌に貼る必要がありますが、女性に使用する際もパッドが貼れればブラジャーを外す必要はありません。余裕があれば上着やタオルなどで覆って見えないようにするといいそうです。

日本AED財団は、一刻を争う事態では相手が女性であってもためらわずにパッドを装着してほしいと呼びかけています。妊娠中でも、心停止が疑われたら命を救うために積極的に使用してほしいそうです。

ネックレスなど金属製アクセサリーを付けていた場合は、電気ショックの効果が低下したり、やけどをするおそれがあったりするため外す必要があります。

様々な種類のAEDがあります
様々な種類のAEDがあります

パッドを貼ると、AEDが自動で心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかを判断します。

「ショックが必要です。ショックボタンを押してください」などと流れたらボタンを押します。感電のおそれがあるため、ボタンを押す瞬間は倒れている人に触れないように注意指示もあります。

なかにはオートショックのタイプもあり、電気ショックが必要だと判断すると、自動でショックを実行してくれます。

電気ショックのあとも、すぐに胸骨圧迫を再開することが重要です。「ショックが不要」と判断されるケースもありますが、その場合も倒れている人が嫌がる仕草を見せない限り、胸骨圧迫は続けます。

日本救急医療財団のスマートフォンアプリ「QQ・MAP」の画面。AEDの設置場所が示されています
日本救急医療財団のスマートフォンアプリ「QQ・MAP」の画面。AEDの設置場所が示されています

人前での心停止は約3万人

心臓が原因で突然心肺停止となる人は年間9万人以上。多くの場合、心室細動が原因となります。

街中だけでなく、マラソン大会といったスポーツ現場、学校でも起きています。

消防庁によると、2022年に人の目の前で突然、心肺停止になって倒れた人は約2万9千人。そのうち、居合わせた人によって胸骨圧迫などの心肺蘇生を受けたのは59.2%で、AEDを使って電気ショックに至ったのは4.3%にとどまりました。

AEDの活用が低レベルにとどまっている背景には、突然心臓が止まって倒れてしまう事例の70%ほどが自宅で起きていて近くにAEDがないことや、街中でも設置場所が周知されていないといった事情があります。 

AEDの設置数は推計69万台と多いものの、設置した人には場所の情報を登録したり、一般に公開したりする義務はありません。日本救急医療財団や日本AED財団などが設置場所を示すマップを公開していますが、一部にとどまり、マップが共通化されていないという課題もあります。

日本AED財団理事長の三田村秀雄さんは「AEDへのアクセスをよくし、救命に手を貸してくれるサポーターを増やしていきたい」と話しています。

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