MENU CLOSE

連載

#31 親になる

子育て学費、大学までの平均額は? 〝奨学金地獄〟経験する親の思い

「子育ての費用、本番は大学までの学費」そんな声が寄せられ――。※画像はイメージ
「子育ての費用、本番は大学までの学費」そんな声が寄せられ――。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

「子育ての費用、本番は大学までの学費」――子育てについての連載を担当する記者に、そんな声が寄せられました。試算してみると、たしかにかなりの金額になり、別途、親である自分の老後の資金も必要です。自身も奨学金の返済に苦しむ当事者が国や民間のデータを調べてみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

オール公立で約528万円、私立校は…

妊娠出産で約100万円、1歳からの保育料が約100万円……この連載でそんな東京での子育ての“初期費用”を取り上げたところ、「子どもにかかる費用の本番は小中高以上の学費」という意見が寄せられました。

その記事は都知事選の争点だった子育て政策を振り返るものでしたが、そうしたコメントに「確かに」と思い、今度は子育ての“ランニングコスト”からオプションの費用まで、どのような準備が必要か、調べてみることにしました。

文部科学省が2022年に公表した「令和3年度子供の学習費調査」では、「保護者が支出した1年間・子ども1人当たりの学習費総額(平均)」が示されています。

これによると、公立小学校35万2566円、私立小学校166万6949円、公立中学校53万8799円、私立中学校143万6353円、公立高等学校(全日制) 51万2971円、私立高等学校(全日制)105万4444円で、いずれも3年前の前回調査より値上がりしています。

小学校は6年、中学校・高等学校は各3年として試算すると、公立小で約212万円、私立小で約1000万円、公立中で約162万円、私立中で約431万円、公立高で約154万円、私立高で約316万円です。オール公立校だと約528万円、私立校だと約1747万円と言うことになります。

なお、この調査では「保護者が支出した1年間・子ども1人当たりの学習費総額(平均)」には、学校教育費(授業料や学校納付金、学用品代など学校教育のために各家庭が支出した全経費)のほかに、学習塾や習い事などの学校外活動費、幼稚園から高等学校までの給食費が含まれています。

月々の支払いでみれば数万~十数万円ですが、積み重なると大きな金額になることがわかります。現在、我が子は2歳ですが、あと4年で小学生。差し迫った課題です。
 

安心できる貯金額は数千万円規模?

では、大学はどうでしょう。文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移(令和3年現在)」によれば、国立大学の入学料28万2000円、授業料53万5800円。4年制なら卒業までの合計は242万5200円、医歯薬系学部に6年間在学すれば合計349万6800円。
 
一方、文部科学省の「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によれば、私立大学の入学料24万806円、授業料95万9205円、施設設備費16万5271円、実験実習料2万8864円、その他8万3194円で、初年度の合計147万7339円。単純計算すれば、4年制なら卒業までの合計は約531万円に。
 
ただし、医学部しかり、私立大学は大学だけでなく、進学する学部によっても、かかる費用が大きく異なります。大学受験生への月刊雑誌を出版する旺文社の「2023年度大学の学費平均額」によれば、医学部の初年度納付金は711万5267円となっています。

オール公立校でも小学校から大学までの学費は約900万円。大学では仕送りも必要になってきます。これは子どもが一人の場合なので、第二子以上の費用もあり、さらに、「人生100年時代」と言われる中、自分たち夫婦の老後のための費用も必要になります。

安心できる貯金額は少なく見積もっても数千万円規模になるでしょうか。こうして計算してみると、生きることにはお金が必要であると、まざまざと見せつけられる思いです。
 

自分が返済に苦しんだ奨学金への思い

こうなると、頭をよぎるのが奨学金です。独立行政法人日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査結果」(2024年)によると、「なんらかの奨学金を利用している大学生(昼間部)」の割合は55.0%。半数以上が奨学金を利用していることがわかります。

また、労働者福祉中央協議会が2022年9月に実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2023年)によると借入総額は平均310万円で、毎月の返済額は1.5万円、返済期間は14.5年となっています。

利用する奨学金は「有利子」が6割強で多く「無利子」が5割、「給付」は2%。なお「無利子」や「給付」の奨学金を利用しているケースでも、それだけでは足りず、「有利子」も合わせて利用する傾向があるということです。

返済は「苦しい」が 44.5%を占め、このうち「かなり苦しい」が 20.8%で、2015 年調査以降は増加傾向。今後の返済に「不安を感じる」人は7割、「かなり不安」が 34.7%で、不安感は 2018年から増加しています。SNSには、奨学金について“返済地獄”とする投稿も多く見られます。

奨学金返済が生活設計に「影響している」とする人は、「貯蓄」が6割、「結婚」が4割弱、「子育て」や「出産」、「持家取得」は3割強でした。

奨学金の貸与を受けるかどうかは、大学入学時点では、主に親が判断することになります。そうして借りた奨学金は、子どものライフプラン、すなわちその子が子どもを持つかどうかにも影響してしまうと考えると、恐ろしくなります。

私自身、大学の学費と生活費のほぼすべてを自分の奨学金とアルバイトでまかないました。今でも少なくない返済を続けています。子育てをしながらこの奨学金を返済するのは、まさに「かなり苦しい」状況です。

話は冒頭に戻り、自助努力の限界は子育て政策に期待しつつ、我が子の笑顔のためにムダ使いを控え、貯金や資産運用をするしかなさそうです。

連載 親になる

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます