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飼育員が知る…フクロウのウラのカオ 野生動物〝ペット化〟見直しを

8月4日は「国際フクロウの日」

絶滅のおそれがあるシロフクロウ。野生動物のペット化は、密輸の増加や絶滅の恐れのリスクを高めると懸念されています
絶滅のおそれがあるシロフクロウ。野生動物のペット化は、密輸の増加や絶滅の恐れのリスクを高めると懸念されています 出典: © Sarah Pietrkiewicz

目次

爪やくちばしは鋭く、飼育員に威嚇することも――。一見すると「かわいい」フクロウですが、あまり知られていない「ウラのカオ」があると、その生態を各動物園がXで投稿して呼びかけています。きょう8月4日は国際フクロウの日。日本は「フクロウカフェ」大国でもあり、〝ペット化〟で起きうるリスクや課題をいま一度考えてみませんか。(withnews編集部・水野梓)

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フクロウの商業利用、リスクは

世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、WWFジャパン)は野生動物の〝ペット化〟を見直してもらおうと、2022年から8月から動物園の協力を得て、キャンペーン「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」を実施しています。

これまでコツメカワウソやショウガラゴ、スローロリス、フェネックなどを取り上げてきましたが、ことし5月の愛鳥週間を前に、フクロウの紹介も始めました。
出典:©WWF Japan

フクロウはアニマルカフェでも人気が高く、京都大の2019年の調査によると、アニマルカフェで展示されていた419種3793個体のうち、4割がフクロウだったことが分かっているそうです。

また、2013年から2022年の10年間で、55羽のフクロウの密輸事件が発覚しているといいます。

2018年、スーツケースの中に隠されて密輸されたインドコキンメフクロウ。2020年には別種のフクロウの密輸事件も発覚しています
2018年、スーツケースの中に隠されて密輸されたインドコキンメフクロウ。2020年には別種のフクロウの密輸事件も発覚しています 出典: © Chris R. Shepherd _ TRAFFIC

長年フクロウを研究している樋口亜紀さん(国立科学博物館・非常勤研究員)は、「フクロウ類は夜行性の猛禽類で、生態系の上位捕食者として食物連鎖の頂点に位置する孤高のハンターです。獲物の小動物の急増がおさえられ、自然界のバランスを保っている存在ともいえます」と話します。

近年のフクロウのペットブームやフクロウカフェの急増は日本特有の現象で、「大変憂慮すべきことであり、海外の専門家からも疑問視される状況です」と指摘。

「犬や猫にはペットとしての長い歴史がありますが、フクロウは違います。野生生物は自然界にいてこそ、すぐれた能力を発揮し、野生本来の姿を見せてくれるものです。フクロウの商業利用が増えていくことは乱獲・密輸のリスクを招き、生息地を脅かしかねません」

多摩動物公園のシロフクロウ
多摩動物公園のシロフクロウ 出典: 🄫 WWF Japan

また、フクロウは「大変繊細な鳥で、狭い室内で、高密度に飼育することはストレスを与え、動物福祉的にも問題がありますし、衛生面でも慎重に扱う必要があります。篭脱け(かごぬけ)による外来種問題も引き起こしかねません」と樋口さん。

「生物多様性への理解が深まった近年、我々人間も自然界の一部としての再認識を新たにし、ひっそりと、つつましく暮らしている野生のフクロウたちの本来の姿を尊重し、地球の自然を大切に次世代につなげていくよう、見守っていく方向に変わっていってほしい」と呼びかけます。

一見「かわいい」と感じるけれど

そのフクロウの外見から、思わず「かわいい」「飼ってみたい」と感じるかもしれませんが、1日およそ10回と頻繁にフンをすること、エサとしてネズミを与えなければならないこと、専門的に診察できる獣医師が少ないことなどから、ペットには不向きの野生動物です。

また、フクロウは耳がよく、20メートル先のネズミの鳴き声や動きを察知できるといいます。ドライヤーや掃除機、テレビの音など、人間の生活音がストレスになってしまう恐れもあるそうです。

アメリカワシミミズク
アメリカワシミミズク 出典: © WWF-Sweden _ Ola Jennersten

そこで、WWFジャパンと協力する動物園はSNSでフクロウの「ウラのカオ」を紹介しています。

北海道帯広市にある「おびひろ動物園」は、「繁殖期のシロフクロウは気性が荒く、威嚇したり、鋭い爪で攻撃したりしてきます。動物園では扉の陰でガードしながら、飼育員の安全を確保しつつ気をつけて給餌や残飯回収を行っています」と投稿しています。

京都市動物園はアナホリフクロウの動画とともに、「健康管理の一環で、嘴(くちばし)を削ることもあります」「飼育や診療には専門的な技術も必要です」と呼びかけます。

密輸の増加、絶滅危機の加速リスクも

WWFジャパンの野生生物取引監視部門TRAFFICは、フクロウの輸入状況や国内のペットショップ・アニマルカフェの調査を専門家とともに実施。

日本は、これまでに60種2万3738羽の生きたフクロウを輸入した主要な輸入国だと分かったそうです。そのうち半数以上は野生で捕獲された個体でした。

WWFジャパンが発表した「日本におけるフクロウのペット・カフェ展示利用の現状」ファクトシート
WWFジャパンが発表した「日本におけるフクロウのペット・カフェ展示利用の現状」ファクトシート 出典: ©WWF Japan

WWFジャパンの担当者は、「近年でも、野生動物の違法取引は起きており、『飼育下繁殖』で販売されていたものが、よく調べたら『野生捕獲』だったということもあります。こうした野生動物の〝ペット化〟は、密輸の増加や絶滅の危機を加速させるリスクもあり、歯止めをかけたい」と訴えます。

多摩動物公園で飼育しているメンフクロウ
多摩動物公園で飼育しているメンフクロウ 出典: © WWF Japan

WWFジャパンでは、「(一般的に)飼いにくい野生動物は、適切な飼育環境を整えられる施設だけが認められるべきだ」と動物愛護法の改正を働きかけています。

国際的には野生動物を保護しようという動きは強まっており、韓国では2022年の法改正で、アニマルカフェでの野生動物の展示禁止、動物園・水族館の許可制への変更などを決めています。

インドオオコノハズク
インドオオコノハズク 出典: © Roger Hooper _ WWF

「野生のフクロウは、日中は森の奥で静かに過ごし、夜には広大な自然を飛び回ってネズミやリスなどの小動物を狩って生きています。そうした野生動物の本来の姿に想いをめぐらせていただけたらと思います」と話しています。

<イベント開催>フクロウの生態を知ってもらおうと、WWFジャパンと多摩動物公園は、8月10日にイベントを開催。午後16時30分から、ウォッチングセンターの動物ホールへ。
詳細はこちら
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&inst=tama&link_num=28690

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