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#28 親になる

東京の子育て〝初期費用〟いくらかかる?第一子の保育園が始まって…

子どもは可愛い。しかし、先立つものは必要だ。※画像はイメージ
子どもは可愛い。しかし、先立つものは必要だ。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

都知事選の争点の一つでもあった子育て政策。全国で東京都のみが合計特殊出生率で1を割り込み、子育て世代の東京都からの脱出の流れも加速する中、東京都で子育てをしている共働き世帯には、どんな課題があるのでしょうか。当事者が振り返ります。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)

「出生数最少」「子育て世代流出」

7日に東京都知事選挙が行われ、現職の小池百合子知事が3回目の当選を果たしました。

東京での子育ての当事者としては、まず都政には、とにかく目の前の生活に物質的な豊かさを望む、つまり子育てへの経済的な支援が欲しいというのが正直な気持ちでした。

例えば、コロナ禍における子育て支援の一環として、2021年度から2年間、子どもを出産した家庭へ都独自に10万円分の子育て支援サービスや育児用品などを提供する『東京都出産・子育て応援事業 ~赤ちゃんファースト~』。

現物支給という形でしたが、特に乳幼児期にはおむつなどのベビー用品や専用の家具・雑貨など何かと物入りであり、当事者世代のニーズを捉えた支援でした。

一方で、コロナ禍前まで、私自身は結婚願望もなく、国政選挙でも争点になる子育て政策には無関心でした。ライフステージが変わると、こうも価値観が変わるのかと自分自身、驚いています。

ここで、東京都の子育て政策が喫緊の課題になっている背景には、いくつかの差し迫った状況があります。

厚生労働省が6月5日に発表した『人口動態統計』によると、2023年に都内で生まれた日本人の子ども(出生数)は8万6347人で、戦後最少に。

1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す合計特殊出生率は初めて1.00を切り、0.99となり、1を割ったのは全国で東京だけでした。都の少子化には歯止めがかかっていません。

また、国土交通省が18日に発表した2024年版の『首都圏白書』によると、東京都への転入超過数(転入者数から転出者数を差し引いた数)は、子育て世帯が多い30〜40代で転出が転入を上回り、30代で7361人、40代は6334人減っていました。

一方で、30代の転入超過数が多かった自治体の上位20位は、さいたま市や茅ヶ崎市、横浜市、流山市、町田市などの「ベッドタウンの役割をもつ郊外の自治体」(首都圏白書)でした。

このように、今回は東京での子育てがかなり差し迫った状況であることが、立て続けに明らかになった直後の都知事選でもあったのです。
 

妊娠・出産に必要だった貯金額は…

では、実際に子育てをする上での課題とは、一体どんなところにあるのでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」では、夫婦が「理想の子どもの数を持たない理由」でもっとも選択率が高いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ことでした。

我が家では、結婚後、そのあたりについてある程度、見切り発車で子どもをもうけるという意思決定をしましたが、前述の赤ちゃんファーストといった施策に助けられた面もあり、もっとしっかり準備しておけばよかったとも感じています。

そこで、もうすぐ2歳になる我が家の第一子にかかった、これまでのお金を振り返ってみることにします。もちろん、家庭によって差が大きいため、あくまで参考までにしてください。また、そもそも東京の物価水準が高いということも念頭に置く必要があります。

まずは、妊娠・出産。出産育児一時金・出産手当金で返ってきたお金を差し引いて、自費での検診代や妊婦の健康管理の費用などで約20万円かかりました。また、家に赤ちゃんを迎えるにあたってのベビー用品や家具、雑貨などの費用は約15万円ほど。

さらに、例えば通院のタクシー代などの細々した出費を積み重ねて、だいたい40万円ということになるでしょうか。

なお、ここには義父母からのプレゼントとしてもらったベビーカーなどおよそ10万円分のサポートや、前述の都の赤ちゃんファーストで支給された10万円分の物品は含まれていません。

40万円と50万円、60万円ではかなり負担感が変わってくるので、「10万円分の支援」に求心力がある理由が、こうした点からもうかがえます。

保育園入園まではランニングコストとして、食費や日用品代などで月1~2万円が、一時保育などに月5000~1万円がかかりました。

このうち、おもちゃなどはどこまでが必要経費でどこからが親の趣味になるか微妙なところですが、合計すると年間で30~40万円程度でしょうか。

自治体や勤務先からの手当てを差し引いて、すべて自力で支払うのであれば、最初の年は100万円くらいの貯金が必要だったということになります。

妻の都知事選公約への“意外な一言”

びっくりしたのが、子どもを1歳から認可保育園に入園させて以降の出費です。知識としては把握していたのですが、実際に毎月の支払いをすると、保育料の負担がかなり重く感じます。

都内でも自治体により、さらに世帯所得により負担額が異なるため、ここは仮の金額としますが、もし月5万円だったとして、年間60万円の負担が増えます。

上限が高い区の最高金額で月約8万円だとして、それだけで年間100万円です。逆に負担の軽い区だと5万円よりもっと低いこともありますが、そうした区は家賃相場が高い場合もみられ、トータルの収支はわりと複雑です。

さて、共働きの我が家はその月にかかった金額を夫婦で折半する家計のシステムなのですが、急に一人あたり数万円の負担が増えると、わかっていたことでもギョッとします。

今後、第二子を出産した場合、東京都では保育料が無料になりますが、正直に言えば、最初のハードル、つまり第一子の保育料が高いままでは、そもそも第二子をもうけようと思えないのでは、と感じていました。

そんな中、今回の都知事選の公約に関して、印象的だったエピソードがあります。小池知事が打ち出した「第一子からの保育料の無償化」という公約への、私の妻の反応でした。

最初にニュースを見かけた私としては、「え~、今更~」というリアクションだったのですが、妻は真面目な顔で「ちゃんと実現したら、これは大事な政策だよ」と頷いていました。

「うちはもう対象外だけど、そう(第一子無料)なるんだったら、絶対になった方がいいよ」「助かる人が多いよ」と繰り返す妻に、自分の家庭のことしか考えられない我が身が少し恥ずかしくなったのでした。

有権者として、こうした公約がしっかり守られるかどうかをしっかりとチェックしつつ、子育てのしやすい社会の実現のため、期待するだけでなく、声をあげていこうと思います。

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