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連載

#85 「きょうも回してる?」

人気窯元の作品が500円?! 「難しい」の一言にも断念せず…反響

100万円の作品、作る作家も参加

笠間焼きシリーズの一部
笠間焼きシリーズの一部

目次

伝統工芸品をガチャガチャで手にとることができたら――。地元の茨城県の伝統産業を広めたいと、笠間焼をガチャガチャにした会社があります。作品によっては数百万円のものをつくる作家さんも参加したこの企画。ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

茨城の会社だからこそできること

茨城に本社を置くクリエイション・コムは、ガチャガチャにまつわるさまざまなことを自社で手がけるユニークな会社です。30年以上、ガチャガチャビジネスを生業としています。
クリエイション・コムは他のガチャガチャメーカーと違い、商品の卸売業をはじめ、メーカーとしての商品作り、店舗の展開をしているほか、イベントでガチャガチャの販促イベントを手掛けています。ガチャガチャ業界でこれだけ総合的に自社で展開している会社は日本でクリエイション・コムだけです。

クリエイション・コムの店舗作りは特徴的で、2つのこだわりが見られます。

一つ目は、代表の宮崎正木さんが子ども向けの商品づくりを大切していることです。
メーカーは近年の円安により海外での製造コストも高まり、利益率が低く、ものづくりをすることが難しい状況になっています。商品価格帯も2~3年前でしたら、200~300円の商品群がありましたが、今では300~500円の商品群が増えています。そんな厳しい環境でも、宮崎さんの店舗では、必ず子どものお小遣いで買える100~200円の商品を店舗では入れるようにしてます。

二つ目は、地域の特色を活かした伝統工芸品を展開していくことに注力していることです。
全国でガチャガチャ専門店の出店が増加傾向となり、今では至るところにガチャガチャの売り場があります。差別化していくうえで、宮崎さんはメーカーの商品のほか、自社で商品企画するものづくりをしていくことが、業界で生き残っていくうえで重要だと言います。そのひとつの施策が、地域の伝統工芸品です。

加賀田たいち工房のふくろうの箸置き
加賀田たいち工房のふくろうの箸置き

笠間焼のガチャ、「人気窯元作家」をシリーズに

宮崎さんは「クリエイション・コムは茨城の企業なので、 茨城の魅力を発信していきたい。ガチャガチャは、意外と地元のものを全国に発信できる可能性を持っています」とその施策の重要性を力説します。

「コロナ禍で企業は地域物産を発信できないこともありましたが、非接触が特長のガチャガチャビジネスは、その代行ができるのではないか。地域物産を発信する役割を担えれば面白い」と続けます。

今回は生まれも育ちも茨城の宮崎さんだからこそ誕生した「笠間焼・人気窯元作家シリーズ」を紹介します。

大きな特長は、一つひとつがすべて手作りで同じものが存在しないこと。まさに、手にした人の世界にひとつだけのオリジナル商品になっています。 笠間焼は1992年、 経済産業相によって伝統工芸品に指定された、茨城県笠間市で作られる焼き物です。江戸中期から始まった、長い歴史のある焼き物になっています。

ガチャガチャにしたきっかけを尋ねると、2021年に笠間市から宮崎さんに依頼があったことが始まり。「道の駅かさま」で、笠間市のオリジナルのガチャガチャを作り、より広く展開することになりました。

シリーズの一つ、陶工の酒井芳樹さんの「陶芸インテリア小物」
シリーズの一つ、陶工の酒井芳樹さんの「陶芸インテリア小物」

当初「難しいよ」と言われたが

当初、宮崎さんはダメ元で笠間焼協同組合に笠間焼のガチャガチャを作り、500円で販売したいと持ちかけたといいます。同組合からは「難しいよ」と言われたそう。しかし、笠間焼のガチャガチャに興味を抱いた10人の窯元が集まり、その中から苦渋の選択で絞った5人に、各5000個の笠間焼を依頼しました。

宮崎さんは「今までの笠間焼じゃないものを作りたかったです。大人の女性をターゲットにした笠間焼のラインナップにしたかった」と話します。

そして誕生したのが、笠間焼・人気窯元作家シリーズ1~5シリーズです。シリーズ1が陶工の酒井芳樹さんの陶芸インテリア小物、シリーズ2が加賀田たいち工房のふくろうの箸置き、シリーズ3が陶工の田中アルバさんの陶芸アクセサリー小皿、シリーズ4が陶工の磯部幸克さんのふくろうマスコット、シリーズ5が陶工の諏訪幸雄さんの陶芸ぐい呑になります。笠間焼のガチャガチャの販売をする覚悟を決めた宮崎さんは、2万5000個すべて買い取り、クリエイション・コムの店舗やロケーションで販売したそうです。

クリエイション・コム代表の宮崎正木さん
クリエイション・コム代表の宮崎正木さん

100万円以上の作品、手がける作家も

このシリーズはシリーズごとに時期をずらしての販売ではなく、一気に店頭で販売しました。

宮崎さんは「窯元の5人に協力していただき本当に、ありがったかったですね。ご縁を感じます。100万円以上する作品を手がける酒井先生が笠間焼のガチャガチャを作ってくれるなんて嘘みたいでした。また、諏訪さんは茨城県工業センター窯業指導所所長の経験もあり、伝統的工芸品産業功労者表彰もした方です」と話してくれました。

笠間焼のガチャガチャを販売したところ、陶芸ぐい呑はすぐに売り切れになるほど、反響が大きかったそうです。
思わぬ副産物も。群馬県にある「道の駅まえばし赤城」に設置していた笠間焼のガチャガチャを見つけた浅間酒造観光センターの方からは、宮崎さんに笠間焼ぐい呑みの依頼が舞い込みました。宮崎さんはこの依頼を受け、シリーズ最新の「浅間酒造オリジナル笠間焼ぐいのみ」になります。もちろんすべて手作りなうえに、ぐい呑みの焼き付けのシール(正面と中のマーク)は一つひとつ焼いています。

「1個1個手作りで、微妙に大きさが違ったりする。でも味があるんですよね」(宮崎さん)

浅間酒造オリジナル笠間焼ぐいのみ
浅間酒造オリジナル笠間焼ぐいのみ

「日本の伝統工芸品シリーズを」

最後に、宮崎さんにガチャガチャの魅力を尋ねると、「ガチャガチャはボードゲームに似ています。ボードゲームも、どんなに玩具やゲームでデジタル化が進んでも、アナログなボードゲームが好きな層がいます。そのファン層に向けて、私たちなりの商品づくりをしていきたいです」と言います。
 
現在は、笠間焼のガチャガチャを機に、益子焼のガチャガチャも販売し始めた 宮崎さん。「将来的に日本の伝統工芸品シリーズをやっていきたいです」と教えてくれました。

世界でひとつしかない、笠間焼のガチャガチャは、まさに宮崎さんの郷土愛から生まれ、人とのご縁で繋がれたガチャガチャでした。

     ◇
笠間焼のガチャガチャは、クリエイション・コムが展開している売り場、または茨城県の道の駅などのロケーションで購入できます。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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