人気ゲーム中、ラーメンに山盛りになったニンニクの描写をきっかけに、「生のニンニクを大量に食べること」についての注意喚起がネット上に相次ぎました。生のニンニクを大量に食べることで起きるおそれのある健康への害について、専門家に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
6月下旬、X(旧Twitter)で人気ゲーム中の描写をきっかけに「ニンニク盛ラーメン」が話題になりました。
山のように盛られた生のニンニクをフィクションとして楽しむ人がいる一方で、生のニンニクを大量に食べることについては、健康を害するおそれがあるとして注意喚起をする投稿も多くみられました。
生のニンニクを大量に食べるとなぜ健康を害するおそれがあるのでしょうか。ご本人も“ニンニクマシマシラーメン”の愛好家だという東北大学大学院薬学研究科講師の外山喬士さんはこう説明します。
ニンニクの独特のにおいのもとは、ニンニクの細胞内に存在する硫黄を含む植物成分が、細胞外に漏れ出た際に、細胞外の酵素と反応して変換される「アリシン」です。
ニンニクを切ったり潰したりしたときににおいが発生するのは、そのためです。料理でニンニクを潰してから刻むのは、メカニズムからみても理があることのよう。害虫や草食動物に忌避させる仕組みと言われていますが、これを人間は「おいしそう」あるいは「臭い」と感じる、と考えられているそうです。
このアリシンは舌に存在する受容体と結合すると、強い辛味として認識されます。この受容体は「侵害刺激」の受容体でもあり、あの辛味は強い作用があることの裏返しでもあります。
アリシンは反応性が高く、カビやピロリ菌などの病原菌の構成タンパク質と直接結合して殺菌作用を示すと考えられています。
一方、このように反応性が高いため、胃粘膜を傷害したり、腸内細菌までも死滅させたりしてしまうことがあるということです。ニンニクを加熱するとアリシンの変換酵素が熱失活したり、アリシン自体が別のイオウ化合物に変化したりするため、こうした反応は抑えられます。
ニンニク由来のイオウ化合物は、体内に取り込まれることで様々な生理作用を発揮します。その中には、ニンニク臭を抑えた類似の物質が、有名な栄養ドリンクの成分として使用されているものもあります。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準』(2020年版)では、アリシンの摂取目安量については特に定められていません。一般的には、生の状態で1日1片、加熱した状態で1日2~3片程度が適量の目安とされるため、やはり「生ニンニクが山のように盛られたラーメン」は食べない方が健康には良さそうです。