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#16 withHealth

ライザップ〝復活〟の理由は「コンビニジム」 背景に緻密なテスト

各地に急速に広がっているチョコザップ店舗の外観(西新宿店)=RIZAPグループ社提供
各地に急速に広がっているチョコザップ店舗の外観(西新宿店)=RIZAPグループ社提供

目次

※8月8日付で消費者庁がRIZAPに対して行政処分を行いました。内容はchocoZAPの優良誤認やステルスマーケティングについてのものでした。詳細は下記記事にまとめました。https://withnews.jp/article/f0240815002qq000000000000000W0bx10701qq000027236A

体形を劇的に変化させる印象的なテレビCMで認知され、急速に拡大した後、業績の悪化も指摘されていたRIZAP(ライザップ)グループ。近年、大量出店していたchocoZAP(チョコザップ)事業にも「無謀」といった厳しい見方がありました。しかし、同事業の好調により2024年3月期決算では5年ぶりの増収、25年3月期は増収増益を見込んでいるといいます。綿密なテストマーケティングを経て、フィットネス業界で再び注目を集める同グループを取材しました。(朝日新聞withHealth)
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RIZAPの業績の立て直しに貢献

各地に急速に広がっているチョコザップ店舗の内観(西新宿店)=RIZAPグループ社提供
各地に急速に広がっているチョコザップ店舗の内観(西新宿店)=RIZAPグループ社提供
ほかの先進国と比較して、日本はジムに通うフィットネス人口が少ないというデータがあります。国際ヘルス・ラケット・スポーツクラブ協会の2018年の調査では、アメリカ20.3%、イギリス14.8%に対して、日本は3.3%という結果でした。

そんな中、2022年7月に事業をスタートして以来、約2年で会員数が120万人と国内トップに踊り出て、店舗数も1500件と急速に拡大する(いずれも2024年5月15日時点)のが、chocoZAPです。パーソナルトレーニング大手のRIZAP社がコンセプトを変えて運営しています。

「コンビニジム」とうたうchocoZAPにおいて、基本となる業態は24時間無人、月額2980円(税抜)で、平均30~40坪程度の店舗にトレッドミルやバイクなどの有酸素マシン、部位ごとに体を鍛える筋力トレーニングマシンなど約11種類を配備、トレーニングウェアや運動シューズ不要で私服で気軽に運動できる、というもの。

「結果にコミットする」というコピーと体形を劇的に変化させるテレビCMで、一世を風靡したRIZAPですが、その後、業績の悪化も指摘されていました。しかし、2024年3月期決算は売上高1662億9800万円(前年同期比7.6%増)と、5年ぶりの増収となりました。

営業損益は5億9400万円の赤字、最終損益(純損益)43億円の赤字でしたが、同社によれば今期(2025年3月期)は増収増益、黒字化の予想だということです。

この成長を牽引したのがchocoZAP事業でした。事業としては2023年11月に単月黒字化、1店舗あたりの累計黒字化のタイミングは、2022年9月時点では18カ月目だったものが、現在では14カ月目まで早まっているそう。

黒字化の要因を、広報担当者は「早期(2023年9月)に1000店舗以上の出店を実現し、事業規模が大きくなったことで、スケールメリットにより店舗あたりのコストが下がり、競争上有利になったこと」と話します。

「他にも、chocoZAPがこれまでのフィットネスジムとは全く異なり、運動初心者をターゲットにし、初心者の方が通いやすいサービス設計にしたことが、多くのお客様に支持され、chocoZAPの成長につながっていると考えております」
 

復活の背景には綿密なテストが

このような復活の背景には、同社が実施してきた、リアルとデジタルでの綿密なテストマーケティングがあります。

リアルではRIZAPの名前を出さない店舗を、2021年10月頃から47店舗出店し、複数のエリアでテストマーケティングを実施。デジタルでは広告やサイトでABテストを繰り返し、最適化をはかり、集客や継続率を検証していたといいます。

現在も会員専用のアプリデータから、利用頻度や利用内容、継続率との関係を分析。2024年3月現在、退会率をサービス開始の7割程度まで抑えているといいます。また、利用頻度が落ちている会員を動画で励ますといった機能が、退会防止にも効果を上げているそうです。

また、chocoZAPでは美容や医療、子ども向けのもの、カラオケなどエンタテインメントまでサービスを提供しています。運動初心者の取り込みを図る戦略で、担当者は「3%とごく少数のフィットネス人口ではなく97%の大多数を狙っています」とします。

RIZAPの会員数は非公表ですが、chocoZAP事業の拡大に伴い、chocoZAPからRIZAPに移る会員が増えているのは事実とのこと。「現在はRIZAP新規入会者の約20%がchocoZAP会員というデータもあります」ということで、今後もchocoZAP事業とRIZAP事業はより密に連携していく予定だと明かしました。

ジムは無人でのビジネスモデルでスタートしましたが、今後はchocoZAPにRIZAPトレーナーを500名体制で増員する方針も発表しています。

「人が入ることでお客様の満足度や品質を高められる部分に関しては、人のリソースを投資し、一方でデジタルを活用することで効率化できたり質を担保できたりする部分に関しては、デジタルを活用。人とデジタルの効果的な融合を目指します」

フィットネス業界でインストラクターなどの人材の果たす役割について尋ねると、「目の前のお客様の複雑な状況や背景などを理解し、臨機応変に寄り添った対応ができることは人の大きな強みであると思います」とのこと。

「特にお客様の心を動かし、行動を変えるというのは、人にしかできない部分も多くあり、この点こそ人の最大の強みだと思いますので、今後も人が果たす役割は非常に大きいと考えております」

成功する「自信はあった」理由

当初、「24時間無人」という業態はすでにチェーン展開する事業者が多数おり、レッドオーシャンの市場で、「無謀」という指摘もありました。

広報担当者は「chocoZAPを本格展開する前に、さまざまなパターンでテストマーケティングを綿密に行い、お客様のニーズがあることは検証していたので、chocoZAPが世の中に受け入れられることに自信はありました」と話します。

「とはいえ、まだまだスタートラインに立ったところですので、コンビニのように誰もが気軽にご利用できる社会インフラのような存在になれるよう、引き続きサービスをブラッシュアップし、地方等も含めてより多くの方へサービスを届けていきたいと考えております」

また、月額3000円ほどの低価格の会費が「焼畑農業のよう」という批判も同業他社からあります。安ければ会員は増えますが、そうやって競合を淘汰させた先、持続可能性がないのでは、という懸念です。

今後も事業を継続していけるのか質問すると、広報担当者は「総合的に見てサービスの持続可能性も高いと考えております」と回答が。

「新規の会員獲得だけでなく、既存の会員様の継続率がとても重要な指標になるため、今期は特にサービスの品質向上やお客様の満足度向上に注力してまいります。また、無人運営やスケールメリットを生かしたコスト削減の効果から収益性が高く、人口の少ない地方エリアでも成り立つビジネスモデルも持続可能性への強みです」と話しました。
 

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