MENU CLOSE

連載

#26 親になる

「保育園で手足口病が大流行」も登園OK?親になるとわかる〝実情〟

「手足口病」と診断した医師に、そのまま「(保育園に)行ってらっしゃい」と見送られてびっくり。※画像はイメージ
「手足口病」と診断した医師に、そのまま「(保育園に)行ってらっしゃい」と見送られてびっくり。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

子どもを中心に夏に流行する手足口病が、少し早い時期から流行しています。病気の名前はなんとなく聞いたことがありましたが、実際に自分の子どもがかかると、思わぬことが次々と――。手足口病にかかっても、厚生労働省のガイドラインでは場合により保育園に登園OKなど、親になるまではわからなかった実情がありました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

有効な感染対策はなし

今年から保育園の1歳児クラスに入園した我が子。慣らし保育には苦労しましたが、2カ月が経った今では、私たち親との「バイバイ」のときにしばらくグズることがある程度になりました。

それも、ひと段落して気持ちが切り替わると、くるっとターンしてたたたっと先生に甘えにいくため、少しドライに感じるほどです。

そんな保育園で現在、大流行しているのが手足口病です。ちょうど最近、この病気についてのニュースが話題にもなっていました。

厚生労働省によれば、手足口病は、子どもを中心に夏に流行する感染症です。ウイルスの感染により、口の中や手足などに水疱性の発疹ができます。

感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足の甲や裏側などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。発熱は約3分の1にみられますが、あまり高くならないことがほとんどで、高熱が続くことは通常はないとされます。

ほとんどは数日間のうちに治る病気ですが、まれに髄膜炎や脳への影響などの合併症といったさまざまな症状が出ることがあります。

感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)。特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは注意が必要とされます。

厄介なことに、手足口病には有効なワクチンはなく、また手足口病の発病を予防できる薬もありません。治った後でも、比較的、長い期間、便などからウイルスが排泄されることがあります。また、感染しても発病はせずにウイルスを排泄している場合があります。これらのことから、有効な感染対策があまりないのです。

一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理すること。それでも、「乳幼児の集団生活施設では、施設内での感染の広がりを防ぐことは難しい」(厚労省)とされています。

「手足口病は、発病しても、軽い症状だけで治ってしまうことがほとんどであるという意味で、感染してはいけない特別な病気ではありません。これまでほとんどの人が子どもの間にかかって、免疫をつけてきた感染症です」

私自身、子どもができる前は、「聞いたことがある病気」程度の認識でした。「大したことはない」というイメージもあり、毎年夏に感染拡大がニュースになっても、ほとんど気にも留めていませんでした。しかし、子どもができると、受け止め方が大きく変わったのです。

例年より早めの流行か

今年は例年よりも早く、手足口病が増えており、ニュースになっていました。例えば大阪府では6日、患者の数が5年ぶりに警報レベルに達したと発表しました。

国の警報の基準は、1つの医療機関で1週間の患者報告数が5人を超えるかどうか。5月27日~6月2日の週では、大阪府は6.11人、兵庫県では5.71人、宮崎県で5.75人と、それぞれ警報レベルを超えました。

他にも、国立感染症研究所の速報データでは、5月20日~26日分で、群馬・福井・奈良・高知・愛媛・大分・鹿児島の7県で警報の基準値を超える事態に。

東京都感染症情報センターによると、1医療機関あたりの患者の報告数は、一昨年は6月の終わりごろから、去年は8月の終わりごろから流行。今年は5月下旬ごろから波が生じています。全国的に流行しつつあると言えるでしょう。

SNSにも「息子が手足口病にかかって自宅保育中」「手足口病うつされてきつい」といった保護者とみられる投稿が多く書き込まれています。手足口病は大人にもうつるので、看病には注意が必要です。

関東地方のベッドタウンにある私の子どもが通う保育園でも、園児の体調がわかる掲示板のようなものに「手足口病:X人」と、この病名が書かれているのを見る機会が増えました。

園の方針はさまざまだと思いますが、うちの子が通う保育園では「手足口病の診断がついても、熱がないなどの条件をクリアしていれば登園可能」です。

これは決して珍しいことではなく、厚労省の「保育所における感染症対策ガイドライン」(2018)では、登園の目安は「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」です。

感染拡大を防止するために登園を控える必要はないとされます。ただし、発熱やのどの痛み、 下痢がみられる場合や、食べ物が食べられない場合には登園を控えるように、と基準が示されています。

感染拡大中であるところの保育園からアプリ経由で届く写真では、園児たちが元気に走り回っていました。口の中に発疹ができた場合は、痛みで食べたり飲んだりがつらいので、症状次第ということもあるのでしょうが、パッと見はみんないつも通りで楽しそうです。

当初は「病気だとわかっているなら登園させない方がいいのでは」「でも元気そうだしな……」などと思っていたのですが、ついに自分の子どもも手足口病にかかり、そうとも言っていられない実情がわかりました。
 

病気自体も心配だが…

ある日、午後に保育園から1回目の呼び出しが。「手足に発疹のようなものがあるので、念のため病院で診察を受けてください」とのこと。その日は仕事を中断して私が園に向かいました。

いつもと違うタイミングで現れたパパを見て不思議そうな子ども。先生に示された足の場所を見てみると、うーん、発疹があるような、ないような……。先生も「すみません、規則なので」と申し訳なさそうにする中、かかりつけの小児科に向かいました。

病院が嫌いでギャン泣きする我が子を医師に見せると「このくらいじゃなんとも言えないね」と真っ当なご意見が。「ですよね……」ということで、その日は連れて帰って様子を見ることに。

しかし、我が子はまったくの元気で、単に「急きょ家でワンオペで子どもをみた日」になりました。発疹も確認できないので、翌日はまた元気に保育園に登園していきました。

問題はそれから1週間後、2回目の呼び出しでした。朝、保育園に子どもを送り、職場に着いたばかりの妻に、保育園から電話が。また発疹が出ているということで、今度は妻が仕事の半休を取ってとんぼ返りすることになりました。

そしてその日はしっかりと発疹が。医師の診断もついて、熱がないなど登園の条件をクリアした我が子は、本人の意思(「保育園に行きたい?」「ウン」というやりとり)もあり、保育園にまた送り届けられたのでした。

このように「突然の保育園からの呼び出し」が発生する手足口病。私も妻も、柔軟に対応できるときばかりではありません。発疹が消えるまでは1週間から10日、治った後でも便などからウイルスが排出されるとなると、この間ずっと自宅で保育するというのも現実的ではないでしょう。

有効な感染対策があまりない、つまり保育園に通っていれば避けられない病気で、ほとんどが軽症。もちろん心配ですが、発疹が出ていること以外はいたって元気な場合、ここにさらに「突然のワンオペ育児」が訪れてしまうと、生活への影響はとても大きいです。

軽症であること、信頼できる園であることは前提に、預けられるのなら預けたいというのも正直なところ。同じ園に通う保護者たちも似たような気持ちらしく「うちは手足」「うちは口の中でつらそう」と情報交換も盛んでした。

今後「手足口病が流行」といったニュースには、ハッと身構えることになりそう。「大したことはない」と思っていた過去の自分には、少なくとも生活への影響は「大したものだった」と伝えたいものです。
 

連載 親になる

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます