ネットの話題
会議中に5分で〝あの古代魚〟が和菓子に 「職人の再現度、さすが」
丸い目に、開いた口…。虚無感のある表情をした古代魚の「サカバンバスピス」。ネット上でも人気ですが、このたびなんと「和菓子」にもなりました。和菓子屋の職人が作ってSNSにあげたところ、「職人さんの再現度、さすが」と話題に。作った経緯を聞きました。
先日、島根県松江市にある和菓子屋「彩雲堂」(@saiundo)がXに投稿した和菓子のポストが注目を集めました。
そこには、職人が魚の形をした和菓子をつくる動画が写っています。
とあるミーティングの最中…
— 彩雲堂 (@saiundo) May 22, 2024
「サカバンバスピスのお菓子とか作ったらどうですかねぇ?」
「サカバ…?何者?」
「こんなの🐡」
横で聞いていた匠が「…できるんじゃないかな?」
そして一瞬で完成!
ちょっと作ってみただけなので、商品ではありません🙇♀️ https://t.co/9AFt3694rw
その魚とは、そう、ときどきネット上でも話題になる古代魚「サカバンバスピス」。古生代のオルドビス紀(約4億6000万年前)に生息していた魚類で、すでに絶滅しています。ボリビアのオルドビス紀の地層から化石が発見されました。
その模型はフィンランドのヘルシンキ自然史博物館に展示されていて、「なんともいえない表情」「虚無感のある顔」などと言われ、人気になっています。
Xの投稿には2.5万ものいいねとともに、「こんなのあったら即買い」「商品化して」「こんな練切が出てくる茶の湯の空気は絶対にゆるい」「職人さんの再現度、流石」「サッと作れる匠かっこいい」といったたくさんのコメントが付いています。
このサカバンバスピスの練切をつくった彩雲堂に経緯を聞きました。
彩雲堂ではこの日、販売企画についてのオンラインでのミーティングが開かれていました。その中で「サカバンバスピスのお菓子とかどうでしょうか」と、ある社員が提案したといいます。
その社員は会社のインスタグラムやYouTubeで発信を担当していて、日頃から情報や流行にアンテナを張っているそうです。
「サカバ…?何者?」とミーティングにいた社員たちが「はて??」となったそうですが、その場ですぐにオンライン画面でサカバンバスピスの画像を共有したそうです。
そのミーティングを聞いていたのが、このサカバンバスピスの和菓子を作り上げた職人の狩野郁雄さんです。
画像を見て「これなら出来る!」と即答。工場に餡などを取りに行き、帰ってくるやいなや、ちゃちゃっと作ってしまったそう。
「かかった時間は5分くらい。その会議中にすぐできたので、社員みんなが驚き、盛り上がりました」と彩雲堂企画開発室の山口晋平さんが話してくれました。
実際につくった職人の狩野さんは現在64歳で、職人歴46年のベテラン。「選・和菓子職」という資格も持ち、現在は彩雲堂が運営する和菓子教室の担当として、和菓子の面白さを紹介しているそうです。
このサカバンバスピスの和菓子の作り方も聞いてみました。
中にはこし餡、外側は「練り切りあん」を使っています。「練り切りあん」とは白あんに餅を入れたあんで、上生菓子ではよく使うあんのことです。
練り切りあんとこしあんを合わせて、灰色の部分を作り、半円にします。白の練り切りあんも半円にし、あわせて丸い形をつくります。中にこしあんを入れて包み、涙型にしてから魚の形に仕上げていきます。目の部分は竹炭をいれて黒色にした寒天を使っています。
狩野さんいわく、「普通の和菓子に比べて、形のバランスをとるのは難しいですが、作業工程からすれば割と簡単なほうです」とのこと。
山口さんは、「職人が『簡単』というのは、一般の人からすれば難しいのであまり参考にならないかもしれません。あんを包む工程が簡単そうに見えて難しいので、松江で開催されている和菓子教室に参加していただければ、コツはつかめると思います」とアドバイスをくれました。
Xの投稿には商品化を求める声も多数寄せられていました。ただ、山口さんは「商品化も検討しましたが権利の問題などが複雑で、残念ながら今回は見送ることになりました。動画を見て楽しんでいただけたらうれしいです」と話しています。
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