連載
#94 夜廻り猫
「こういう日はチャンスでね」…強風の日の愛犬との散歩 夜廻り猫
「もう、目は見えてなくて」。風の強い日、肩にかけたキャリーで愛犬を連れていた男性がいて……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、〝散歩〟にまつわるエピソードです。
ザァッと強い風を受けた猫の遠藤平蔵は、そのなかに涙の匂いをかぎとります。
街を歩いていたのは、肩にかけたドッグキャリーで愛犬を連れていた男性です。
遠藤が「お散歩ですか?」と尋ねると、「こういう日は、太郎が走るチャンスでね」「もう目は見えなくて」と答えます。
強い風がザーーーッと吹いた時、太郎は風になったように走った昔を思い出します。
風を感じながら、空中で楽しそうに足を動かす太郎。男性は「太郎 走ってる!」と声をかけます。
ふたりのようすに、遠藤もほほをゆるめるのでした。
作者の深谷かほるさんは、自身の体験を振り返りながら、今回のマンガを描いたそうです。
以前、道で雪かきをしていた時のこと。ニコニコと笑っている表情をした犬と飼い主さんが通りかかりました。
その犬の様子があまりにもうれしそうだったので、思わず「こんにちは、わんちゃん笑ってますよね?」と話しかけたという深谷さん。
すると飼い主さんが「散歩が好きでねえ、目が見えないのに。だから休めない、雪でも」と答えてくれたそうです。
「動物は何をなくしても決して投げやりになったりしない。いつでもベストを尽くして、しかも犬は笑ってくれる……。かなわないなあ、と、その時も思ったのでした」と話しています。
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