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連載

#46 #就活しんどかったけど…

お祈りメール「人格否定じゃない」元採用担当の漫画家が伝えたい就活

自身の就活は〝震災の記憶〟と結びついています

光星影月「忘れられない就職活動-あの日あの時の、私の就活」より
光星影月「忘れられない就職活動-あの日あの時の、私の就活」より

目次

就活は、震災の記憶と結びついていて――。漫画家の光星影月(こうせい・えいげつ)さんは、本格的に就職活動を始めたとき東日本大震災に遭いました。混乱のなか内定を得て人事部で働き始め、「選ばれる側」から「選ぶ側」になって企業と学生のギャップも感じたといいます。当時の就活や、元採用担当者としての思いを振り返ってくれました。

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会社説明会を終えて帰ったら

2011年3月11日、午前中に参加した会社説明会から都内の自宅に戻った光星さんは、パソコンを開いて翌日の会社説明会をキャンセルしようとした瞬間、大きな揺れに襲われました。

「午後の部に参加していたら帰宅は困難になっていたかも……」。同じように就活中だった仲のいい友人は、スーツ姿のまま、ホテルのロビーに避難して過ごしたそうです。

翌日から各社の会社説明会そのものが軒並み中止になりました。多くの会社で説明会が再開されたのは、2カ月後くらいでした。

「当時の友人たちと就活の思い出をしゃべっていても、いつのまにか震災の話になります。どうしても就活と震災の記憶が結びついてしまいます」

漫画で描いた〝震災と就活〟

光星さんは昨年、当時の経験を漫画にしました。

【マンガ】「忘れられない就職活動 あの日あの時の、私の就活」【関連リンク】

当初、自らの就活と震災を重ね合わせて漫画を描くことには迷いがあったといいます。

しかし、震災から2年後に参加した岩手県陸前高田市での植林ボランティアで聞いた地元の人の壮絶な被災体験を思い出し、悩んだ末に漫画を描き上げました。

「『震災を忘れてはいけない』という自分の気持ちだけは伝えたいと思いました」

混乱の中で内定、配属先は

震災後の混乱の中でしたが、光星さんは夏を迎える前には、とある会社から内定をもらい、翌年4月から新卒社員として働き始めます。

人事部配属になり、新卒採用を担当することにもなりました。「選ばれる側」からすぐに「選ぶ側」に回った光星さんは、「就活生と企業側のギャップを感じた」といいます。

採用面接の日程をひとつとっても、多くの大学のテスト期間と重なっていました。直前まで大学生だった光星さんは「企業側は大学生の忙しさを知らないんだな」と感じたそうです。

今の大学生は、どの学部でも出席に厳しいことが多く、課題に追われる毎日です。ところが採用する側の幹部たちは「授業なんかまともに出たことがない」と自慢するようなバブル期世代。会社側の都合で面接日程が決まり、試験期間と重なってしまった学生もいたため、採用担当者として申し訳なく思ったそうです。

画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images

「人格を否定された」と感じる学生

面接に同席する中で、光星さんの会社では、必ずしも「即戦力」を求めているわけではないと感じたといいます。会社側は、学生の語り口やコミュニケーション能力を見ながら、すでに働いている社員たちとの相性を見ていた印象が強いそうです。

一方で、面接で落ちると「人格を否定された」ように感じる学生が多かったというのも事実。採用担当者とはいえ、一年前には同じ立場だった光星さんは「傷つく気持ちは分かるなあ」と共感する気持ちが強かったといいます。

不採用を伝える「お祈りメール」を出す立場から感じたのは、「もちろん人格を否定しているわけではなく、縁としか言いようがない」と当時を振り返ります。

不採用となった学生には次のような言葉をかけたこともあったそうです。

「たとえば、緑色のボールペンが欲しいときには、同じパッケージのものが並んでいる中から緑を選ぶと思います。それは他の色のボールペンが優れないからではなく、欲しかったのが『緑色』だったから」

「それは就職活動でも同じで、あなたが『優れなかった』から選ばれなかったのではなく、相手(会社)が求めていたものとたまたまあなたが『合わなかった』だけなんです。だから必要以上に落ち込まなくても大丈夫ですよ」

画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images

「会社員」から「漫画家」へ

就活生に寄り添う充実した毎日でしたが、高校生の頃から漫画家になる夢を持ち続けていた光星さんは、創作活動も続けていました。

3年目に入ったところで異動があり、採用担当を外れます。異動後は、朝早く出社し、12時間会社にいるような生活が続きました。

創作活動に割く時間が思うように取れなくなり、退職を選んだそうです。

退職後は、アルバイトを週4日ほど入れながら、漫画を描く生活を続けました。

地道に創作を続けた結果、漫画編集者の目にとまり、WEB少年誌「少年ハナトユメ」(白泉社)でデビューすることができました。今では漫画家のアシスタントもしながら、創作を続けています。

光星さんが採用担当者だったのは10年以上前ですが、就活生を応援する気持ちは当時とまったく変わらないといいます。

就活生になによりも伝えたいことは「自分が企業を選ぶつもりで就活に臨んでほしい」ということ。採用担当だったころは「きみが企業を選ぶんだよ」と繰り返し伝えていたそうです。

光星さんは「今後もチャンスがあれば、就活をテーマにした漫画を描いてみたい」と話しています。

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実は、企業が保護者に説明する動きは以前からありました。

「そこまでする必要があるの?」と疑問を持ちそうですが、保護者が知らない企業や業種の場合、「オヤカク」「オヤオリ」によって子どもは親を納得させることができ、企業側も内定辞退を防ぐことができるといいます。

みなさんのご意見やご経験をお聞かせ下さい。
<体験談お寄せください> 新企画「就活しんどかったけど……」では、コロナ禍で変化もあった就活の「いま」を見つめ直し、よりよいあり方を探っていきます。

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