連載
#44 #就活しんどかったけど…
最終面接「落ちた」を「残った」に お祈りメールから新たな出会い
「メール一通で関係が壊れるのはもったいない」
新卒採用において、企業側から「不採用」が通知されるメールを形容する、「お祈りメール」。このメールを、就活生を前向きにさせるものに変える事業を展開しているベンチャー企業があります。創業のきっかけは、最終面接のあと不採用とされた友人の、メンタルの落ち込みでした。
「最終選考で落ちた」就活生を「最終選考まで『残った』」就活生と価値付け、新たなリクルートにつなげるサービスを展開しているのは、2020年に設立された「ABABA」(本社・大阪府吹田市)です。
そのサービスは、最終選考まで残った就活生に企業側が送る「不採用通知」の末尾に、ABABAの登録リンクを添付。登録した就活生は、どこの企業の最終選考に残ったかを記入することができ、ABABAと連携しているほかの企業の採用担当者はそれを閲覧できます。
他社が一定評価した就活生に採用担当者がアプローチでき、就活生にとっては「最終選考まで残った」ことが強みになる仕組みです。
500人ほどに不採用通知を出したというある企業では、添付のリンクからABABAに登録した就活生が300人ほどいたケースもあったそう。2020年のサービスリリースから3年を経て、1100社が導入、4万5000人の就活生の登録があります。
代表の久保駿貴さんは「ABABAに登録した就活生に対して、採用担当者からは『その企業の選考がそこまで行っているなら、うちは最終面接だけでいい』といったオファーを受けられることもあり、就活生にとっては『優遇』が受けられます。一方、企業側からするとコスト削減にもつながり、効率的な設計です」とメリットを語ります。
久保さんには、このサービスを着想するきっかけとなった体験があるといいます。
大学生だった2020年6月、就活をしていた友人は、大手企業の最終面接まで通過しましたが、最終的に不採用になりました。その友人はメンタルが落ち込み、1カ月半くらい連絡がとれなくなったそう。
「最終まで行ったことが水の泡になったことがもったいないし、大手企業の最終までいくような友人は他の企業からしたら引く手あまたなはず。でも、不採用通知を受けた後の友人は、『どこにエントリーしたらいいんだろう』という状態になってしまっていました」
友人の一件を間近でみていた久保さんは「能力をもった人間が適切な会社で働けていない可能性はないか」と考えたそうです。
さらに、その友人は最終面接で落ちた企業に対しては憎悪にも似た感情を吐露していたといいます。
「せっかくお互い最終面接にいたるまでの関係を築いたのに、メール一通でここまで関係が壊れるのはもったない」と感じたといいます。
「メール一通で関係が壊れるのはもったいない」という思いは、ABABAのサービス内容にも反映。導入企業には、不採用のメール内容全般の調整も行っているといいます。
久保さんは「採用のコンセプトや人事の方の採用にかける思いなどをヒアリングし、『この会社を受けてよかった』と就活生が思えるような内容を1社1社話し合いながら作っています」。
「そもそも最終面接の結果を送らずに、不採用としているような企業もあると聞きます。最終面接で落とした人が、いつか中途採用の候補者として帰ってくるかもしれないし、お客さんになるかもしれない。そこをケアしている企業が、多くの人から選ばれる企業になるんではないでしょうか」
久保さんは「今後も、優しい採用活動の輪を広げていければ」と話しています。
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