大学の学部や院で研究をした後、アカデミアや研究職には進まず、総合職で企業に就職する人も多くいます。そうした場合、研究室の理解が得られずに大変な思いをするケースもあるようです。withnews編集部には、研究と就活との両立が“しんどかった”という体験談が寄せられ、その経験を振り返ってもらいました。
「そうですね、(体験談を送ったときは)ちょっと怒っていましたし、今でもちょっと怒っています」
「この3月になっても、卒業のご挨拶で先生方にお会いする度に思い出して、ふつふつと……(笑)」
そう自身の就活を振り返るのは、大学院を卒業してこの春から製薬業界で働き始めた2024年卒の女性です。薬学系の大学を卒業後、医療系大学の大学院に進学。基礎系の研究室で「病気にフォーカスした研究をしていました」と話します。
学部生時代は研究者を目指していましたが、アカデミアで研究を続けることの厳しさ、企業の研究職が狭き門であるという現状を知りました。一方で、「人の命に関わる仕事がしたい」という思いは変わらず、製薬業界の営業職を志望するように。マイナビやリクナビなどの就活サイトを活用し、就活をスタートさせました。
大学院修士1年生の秋ごろからインターンに応募したり説明会に参加したりして、年が明けてエントリーシートを30社ほどに送り、春から面接。第一志望の製薬企業から最初に内定を得て、そこで就活を終えたそうです。
一見、非常にスムーズな就活に思われますが、女性には今も引っかかっているエピソードがあるといいます。
「5月に研究室の指導担当の先生から『ずいぶん研究室に来ていませんが、いつ就活が終わるんですか?』というメールが来て。私はとても順調だったから、その時点で就活はほとんど終わりかけていたのですが、一般的には就活が本格化してくるタイミングです。
もし就活が上手くいっていなかったら、あのメールでかなり追い込まれていたと思います。先生はアカデミアにずっといるので、一般的な就活のスケジュールを把握していなかったんです」
修士1年の冬から半年ほどは、「(就活の)予定があれば休んでください」という形で、サポートする体制はあったそうです。一方で、就活スケジュールを把握しないまま「次はいつ来ますか」と連絡があったり、研究室の発表の担当回を就活の予定が集中するタイミングに指定されたりといった「ストレスはあった」と明かします。
「ちょうど、エントリーシート(ES)を書きまくっていた時期に、研究室の発表の担当回を指定されて。ESの締切があるので、1日に3、4枚は書かなきゃいけなくて、寝る間もなく連日徹夜みたいになっていた時期で、『スキップさせてほしい』と伝えたら『他の人はもっと発表してる』って言われて……」
就活のスケジュールや状況は人により異なるからこそ「こちらの状況を把握して、言い方などの面で多少の気遣いをしてもらいたかった」と女性。大学を卒業するにあたっての学務のアンケートには、そのことを要望として書き込んだそうです。
研究チームの中での分担もあり、「休みが多いと困るのは当然だと思いますし、両立できていた先輩方も多く、先生方も戸惑っていたのかもしれません」と女性。ただ、複雑化する現在の就活の状況を「理解しようとしてほしい」と訴えます。
自分を「タフなタイプかもしれない」と分析する女性は、就活自体は「大変なことがわかっていたので、予想した範囲の忙しさ」だったと表現します。こうした苦労は「同じ業界を受ける友人がとても多かったので、励まし合って乗り越えた」そうです。
今後は「製薬企業の中でのキャリアチェンジを目指して、より広く人の命に関わる仕事をしていきたいです」と前向きに話してくれました。