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コラム

〝脳波〟測定してガシャポン?…業界リードするバンダイ、見せた未来

フィーリングガシャポン……?

イベント会場のエントランスにあったガシャポン自販機の巨大なハンドル
イベント会場のエントランスにあったガシャポン自販機の巨大なハンドル

目次

カプセルトイ市場をリードするバンダイが、その歴史と未来を見せるイベントを開催しました。そこに現れたのは、「感情」から商品をゲットできるガシャポン……? イベントを取材したガチャガチャ評論家のおまつさんが、その様子をレポートします。

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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

ガシャポン市場をリードするバンダイ

3月下旬、東京・池袋で「ガシャポンEXPO 2024〜ガシャポンの未来を見に行こう!~」が開催されました。
今回のイベントはガシャポン(ガシャポンはバンダイの商標登録)の47年の歴史、そして「未来」までを体験できる初めてのイベントです。

バンダイのガシャポンと言えば、業界のうちメーカー別売上の約55%(トイジャーナル調べ)を占め、圧倒的なシェアを誇ります。昔も今も市場をリードしているバンダイのEXPOに行くことは、業界の動向を知ることとほぼ同じです。私はEXPOの初日を訪れました。

会場は宇宙をイメージし、「宇宙船エリア」、「ワク星エリア」、「未来エリア」などに分類されていました。このイベントを担当したベンダー事業部の瀬谷朋子さんは「1年前から企画をしました。企画をするうえで、お客さんにどうしたら楽しくなってもらえるか、ワクワクしてもらえるかを大事にしました」と教えてくれました。

エントランスに設置された自販機のハンドル
エントランスに設置された自販機のハンドル

販売機販売はほぼ2社が市場独占

まず最初に驚いたのが、エントランスのガシャポン自販機の巨大なハンドル。
漫画「進撃の巨人」に出てくる巨人が回すには、ちょうどいい大きさのハンドルのように見え、「でかい…無駄にでかすぎる」の一言でした。そして、ハンドルの隣にある入口のカーテンはカプセルの取り出し口をイメージしており、入る前からワクワクしていました。

早速、宇宙船エリアに出向きました。そこは、ガシャポン47年間の歴史が詰まった特別展示になっていました。まさにガシャポンの過去を振り返るエリアです。
「機動戦士ガンダム」や「キンケシ(キン肉マン)」など、懐かしい歴代商品が展示してあり、親子2世代で釘付けになるラインナップでした。

しかし、私が注目したのは、初代から現在までのガシャポン自販機の展示でした。
ご存じでしょうか。皆さんが見ているガチャガチャの自販機はバンダイの自販機とタカラトミーアーツの自販機の2社が作り、ほぼ市場を独占していることを。
この自販機は約60万台と言われていますが、コロナ禍で専門店などが出店なども考慮すると、80万台以上はあると思われます。

ここで分かることは、自販機というインフラを担っているメーカーは強いということです。
つまり、商品を作り、その商品を販売できる自販機も作れることは、業界にとって大きなメリットになります。特に、バンダイは自販機でも大きなシェアを占め、多くの専門店はバンダイ製品を使用しています。

この自販機の大きな特長は電気を使用しないこと。昨今の電気代の高騰に影響を受けない自販機こそ、業界がここまで大きくなった一因であることは間違いありません。

ここでは、その自販機の礎を築いたバンダイの初代自販機「BVM100」が展示。私は初代自販機を見るたびに、ノスタルジーに浸り「そっと抱きしめたい…」という思いに駆られたのでした。

ガシャポン自販機の歴史
ガシャポン自販機の歴史

野球ボールより大きなガシャポン

ふと我に返って、次に訪れたのがワク星エリア。このエリアは、ガシャポンの現在を体現できるエリアです。「ワンピース」、「ドラゴン」、「ウルトラマン」、「サンリオ」など新作を含むキャラクター商品が展示してありました。ちなみに、2023年にバンダイは1263アイテム(約1億6000個)の新商品を販売しました。この数は日本の人口よりも多い。しかもこれはバンダイだけの商品数です。他のメーカーの商品数を足すととんでもない数になります。

さて、ワク星エリアでは、ガシャポン史上最大サイズの90㎜のカプセルがありました。夏にこのカプセルに入った商品が誕生する予定です。一般的に市場に出ているカプセルは、48㎜、63㎜、72㎜の3種類が多いです。バンダイは、その上を行く90㎜のカプセルを開発。野球のボールが約72~74㎜だとすると、野球のボールよりも大きい。見た瞬間に「でかい…」の一言につきます。新しいカプセルができることは、商品のラインナップの幅が広がることを意味します。このカプセルを開発できるのも、バンダイは自販機というインフラがあるため、開発ができるのです。

大きさにも進化の歴史が
大きさにも進化の歴史が

1993年に香港にも進出

また、ワク星エリアでガシャポンの海外展開のパネルに目が留まりました。

現在、玩具業界には大きな2つの課題があります。その2つが「少子高齢化」と「海外展開」です。
それぞれに対策は打っており、「少子高齢化」対策としては、少子化が進む中、シニア層をいかに取り込めるかが重要になっているため、ガチャガチャ業界ではすでに大人向け商品が増えています。
「海外展開」では、バンダイが1993年に香港で初のガシャポンで海外進出しています。2024年3月時点で、アジアを中心に米国や欧州など12エリア34店舗まで展開。全体的に海外は好調のようで、今後も海外展開は拡大していくように思えます。

バンダイのガシャポンの世界展開を示した図
バンダイのガシャポンの世界展開を示した図

脳波からゲットできるガシャポン

最後の未来エリアでは、このイベントの目玉と言える未来のガシャポンを体験できました。
脳で回す「フィーリングガシャポン」と、地球を旅している気分が味わえる「トラベルガシャポン」です。

特に私はフィーリングガシャポンが気に入りました。このフィーリングガシャポンは、ヘッドセット(測定器)を装着した体験者の脳波を、スキャンして分析し、その感情にピッタリ合うガシャポンをゲットできる装置になっています。
脳波を測定することで、「喜び」、「緊張」、「ワクワク」など人間が持っている12種類の感情のうち、どんな気持ちを感じているかがわかるのです。

2018年頃より構想を開始し、約5年の歳月をかけて実現したそうです。開発に携わったベンダー事業部事業開発チームマネージャーの近藤創さんは「脳波で測定した人の感情をガシャポンで、どういうふうに表現をしたら面白くできるのかを考えるのが大変でしたね。ガシャポンは自販機だけにとどまらないぞという思いです」と意気込みを話してくれました。

フィーリングガシャポンを実際に体験してみた際、私の感情は「面白さ」でした。
そして、その感情にピッタリなガシャポンは「起きたら猿になっていた人」のキーホルダーでした。なんとも言えないシュールさに笑ってしまいます。この未来のガシャポンを企画できるのは、業界でトップを走り続けているバンダイだからこそ、開発可能にした装置だと強く感じました。

ガシャポンEXPOを通じて、EXPO自体が一つの自販機のように思え、各エリアは飽きさせずワクワクする展示内容で、そこには携わっている人たちの熱意と商品に対する愛情が伝わってきたEXPOでした。

フィーリングガシャポンの様子
フィーリングガシャポンの様子
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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