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梅毒、身近な病気に…男性10倍・女性23倍 早期治療が大切な理由
医師と性教育YouTuberシオリーヌがトーク
この10年間で、男性は10倍・女性は23倍に患者が増えたのが性感染症の「梅毒」です。無症状の間も感染を広げてしまう「やっかい」な病気で、性感染症だということもあり、周りに言いづらいという現状もあるようです。(withnews編集部・水野梓)
国立感染症研究所によると、2013年からの10年間で、梅毒の男性患者は10倍、女性は23倍に急増しています。
20代の女性や、20~50代の男性で特に増加しているといいます。
都内で開かれた啓発イベントで、愛知医科大学病院感染症科の医師の三鴨廣繁さんは「女性の増加が著しく、子どもを産む世代で広がっているという問題があります」と指摘。
「性風俗にまつわる病気と思われがちですが、一度でも性的接触があれば誰でも感染する可能性のある、『身近な病気』なんです」と話します。
同じくイベントに登壇した助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんは、感染の広がりについて「マッチングアプリでの出会いもあり、相手が検査を受けているかどうかといったバックグラウンドが分からないまま関係を持つということが増えている可能性もあるのかなと思います」と話します。
梅毒は「偽装の達人」ともいわれ、症状が出ない期間もありながら進行していきます。
三鴨さんは「はじめは陰部や口腔内などの感染部分にしこりができて、すぐに潰瘍ができます。あまり痛くなくて、2週間もしないうちに治ってしまうので、受診しないケースも多いんです」と話します。
治療せずに放置していると、菌が全身に運ばれ、手のひらや足の裏、皮膚に小さなバラのような皮疹「バラ疹(ばらしん)」が出たり、皮膚がかさかさになったりすることも。
三鴨さんは「ほかの皮膚の病気の可能性もありますが、梅毒の可能性もあるので、きちっと受診することが大事です」と話します。
シオリーヌさんは「自覚症状がなかなかない性感染症があると知っておくことが大事」と話します。
梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という人間を宿主とする細菌が引き起こします。空気中だと生存できないため、粘膜と粘膜が接触したところでうつっていきます。
三鴨さんは「コンドームの利用は予防に有効ですが100%ではありません。覆われていない部分やオーラルセックスでも感染するためです。トイレやお風呂の利用でうつることは基本的にはありません」と解説します。
YouTuberとして性にまつわる話題を発信しているシオリーヌさんのもとには、「パートナーに検査してほしいと言えない」「自分がかかったことを打ち明けられない」といった相談も寄せられるそうです。
シオリーヌさんは「性感染症にかかると、遊んでいるとか浮気をしているとか誤解されてしまう現状があります。だからこそ、ここまで感染が広がっているのになかなか自分事にならないんじゃないでしょうか」と言います。
「恥ずかしい、とかではなくて、梅毒は治療法があるので『早く分かってよかった』ということだと思います。社会の偏見をぬぐっていかなければいけないですね」と話します。
梅毒は、進行すればするほど体に深刻な影響が出てきます。「神経梅毒」まで進むと、目がかすんだり耳が聞こえづらくなったりといった症状が出ることも。
「晩期顕症梅毒」では、皮膚や筋肉などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)ができることもあり、梅毒の影響で大動脈瘤ができて命を落とした人もいます。
また、妊婦初期の検診で梅毒が判明するケースもありますが、三鴨さんは「死産や早産のリスクがあったり、胎盤を介して菌が赤ちゃんに悪さをしたりすることもあります」と話します。
赤ちゃんの先天性梅毒では、神経や骨に症状が出やすいものの、出産直後はすぐに分からないこともあるそうです。
三鴨さんは「例えば自分が梅毒だったとしたら、おそらくパートナーも梅毒です。梅毒は一度かかっても抗体ができづらく、再感染しやすい病気です。お互いがしっかり治療しなければ、『ピンポン感染』が起きてしまうこともあります」と話します。
シオリーヌさんは、現在の夫と交際する直前、「彼が性感染症の検査を受けて結果を持ってきてくれたんです」と自身の体験を語りました。
「自分をすごく大事にしてくれていると嬉しく感じて、私もすぐ受けました。カップルで性感染症の検査をするということは、『お互いを大事にし合えているね』と確認できる機会にもなると思います」と話します。
杉並区の保健所で、性感染症の検査を受けた体験をYouTube番組で配信したシオリーヌさんは「検査会場も明るく、保健所の方々は『感染を広げないために行動を起こしてくれた』というポジティブな雰囲気でした。自分や相手のためにいいことをしているという前向きな気持ちで検査してもいいのでは」と呼びかけていました。
血液検査で判明する梅毒は、多くの医療機関で可能で、保健所などでは無料・匿名で検査をしているところもあります。
進行すると怖い梅毒ですが、早期に発見して治療すれば治る病気でもあります。
梅毒の治療は、ペニシリン系の抗菌薬を使います。進行の程度によるものの、飲み薬や注射で4~8週間治療します。
市販薬で梅毒に効果のあるものはなく、三鴨さんは「妊娠していたり、その可能性がある場合は医師に相談してください」と話します。
梅毒の感染拡大を防ぐために、大事なことをまとめると、下記の5点です。
シオリーヌさんは「梅毒はすでに身近にあるものなので、検査するハードルを下げていけたらいいなと思います」と話します。
三鴨さんは「検査は大事な一方で、血液中の梅毒への抗体を調べるので、上がってくるのに少し時間がかかります。検査には疑わしい行為の2カ月後ぐらいが一番いいでしょう」と話します。
「梅毒を撲滅することはできないかもしれないけれど、少なくとも10年前の流行状況に戻していきたいと願っています」と呼びかけていました。
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