連載
#37 #就活しんどかったけど…
就活と研究、両立が難しい…「ガクチカ」どうする? 理系学生の悩み
就職活動が本格化してくると、理系の学生は研究室での研究と就活との両立が大変になってきます。2022年に理系の大学院を卒業し、システムエンジニアとして企業に就職した20代の男性は、「就活の準備期間を長く持つことで乗り切りました」と話します。理系ならではの就活の難しさを聞きました。
20代の男性は、東日本にある国立大学の工学部に所属していました。大学院にも進学し、合計で3年間、研究室でシミュレーション研究をしていました。家からリモートで作業できることもありますが、研究室に行くことが推奨されていたそうです。
就活のピークは修士1年から2年に上がる春ごろでした。男性はその期間に就活が忙しくなることを見越して、修士1年の9月から企業研究を始め、企業説明会にも足を運び始めました。
就職先として考えていたのは、システムエンジニア(SE)やメーカーの開発職。自分が理系として、大学で培ってきたことが生かされると思ったからだといいます。
企業のホームページを見たり、大学のOBのツテを使って行きたい企業の現役社員から直接話を聞いたりして、企業側が求める人物像を調べました。
「自分はわりと就活への危機感を強く感じていて、準備時間を長く持ちたいタイプでした。でも、周りには修士2年の春ごろから就活を始める同期も多かったです」
就活がピークになる前には、研究室の指導教官に「2月いっぱいの1カ月、就活のために休ませてほしいです」と伝えたそうです。
理系学生は、卒業論文、修士論文の作成の他にも、学会発表や指導教官の研究の補助といった作業も多くあります。また、実験や研究によっては、研究室に泊まりきりになり、土日関係なく作業が続くこともあります。
そのため就活の時間が取りにくく、就職留年をする学生や、なんとなく決めた就職先に進むという学生もいるそうです。
一方、理系学生には「学校推薦」を使って就活をする人もいます。
これは大学の研究室や教授に寄せられた求人の中から企業を選び、就職の担当者や教授に書いてもらった推薦状を添えて、エントリーする方法です。推薦の学生は「学校や教授からの推薦がある優秀な学生」という企業側の認識もあり、内定をもらう率が高いのが特徴です。
そのため、研究が忙しく就活の時間がとれなくても、学校推薦で就職する企業を選ぶという学生も男性のまわりにはいたといいます。
男性は学校推薦は利用せず、自分の行きたい企業を受けることにしました。
就活と研究を両立させようと、学会発表や修士論文の準備も前倒しで始めました。
「研究は修士1年の秋ごろから、普段以上に力を入れ始めました。だから指導教官も、1カ月休むことについて、首を縦に振ってくれたのだと思います」
男性は結果的に、2月ごろにメーカーの開発職や第1志望だった企業のSEから内定を得て、卒業後はSEの道へ進みました。
就活が終わったあとも、卒業まではほぼ毎日朝9時〜夜9時まで研究室に詰めて研究に取り組んだそうです。
研究室の周りの学生がまだ取り組んでいない頃から始めた就活でしたが、エントリーシート(ES)の書き方について、悩んだこともあったといいます。
「まずESを書くときに、『結局、研究しかしてなくない?』と思いました。『研究って学校でやっている勉強にすぎないし…それをガクチカ(学生時代に力を入れたこと)に書くってどうなの?』と思っていました」
企業を調べたり、試行錯誤しながらESを書くうちに、男性は「やっぱり理系の強みは研究」だと感じたといいます。
「それでも、ただ『研究をしていました』とESに書くのではなく、研究から『論理的思考力が身についた』『物事をわかりやすく言語化する力がついた』という書き方をしました。そこが企業側が求める人物像と合ったのだと感じています」
理系学生の就活は、スタート時期や研究との両立、ESの書き方など悩むこともたくさんあります。
男性は「就活も研究もそうですが、早めに準備を進めることが奏功したと思います。就活のために休みやすい研究室もあれば、そうでないところもあります。自分の研究の進め方を前もって考えながら動くといいと思います。また、就活や研究に対するスケジュール感を指導教官とすり合わせるのも大切だと感じました」と話しています。
1/15枚