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連載

#80 「きょうも回してる?」

リアルな〝ベタ〟でヒット狙う 「ガチャガチャに染まった私の人生」

ガチャガチャに魅了された人生

「奇奇奇シリーズ」の「闘魚〜ベタ〜」
「奇奇奇シリーズ」の「闘魚〜ベタ〜」

目次

きっかけは、幼い頃に買ってもらった「こむしちゃんのかんづめ」――。ガチャガチャに魅了され続けた女性が選んだ道は、ガチャガチャを手がけるメーカーへの就職でした。そこで生み出したオリジナル商品について、ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。

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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

最初の一歩は「こむしちゃんのかんづめ」

ガチャガチャに魅せられて、人生が変わった人がいます。スタンド・ストーンズの藤田真理さんもその一人です。

ガチャガチャとの出会いについて、藤田さんは「小学一年生の頃、父親からお土産にユージン(現タカラトミーアーツ)から発売していた『こむしちゃんのかんづめ』のガチャをもらったとき、嬉しくてたまりませんでした。そこから、ガチャガチャにハマりました。とくにユージンの商品が好きすぎて、周りの友達にユージンの魅力を伝えても周りの反応は冷たかった」と笑って教えてくれました。

藤田さんが20代の頃、千葉県の船橋にあるユージンの店舗でアルバイトで働き、そのまま好きが講じて商品を作る側になり、15年以上ガチャガチャに携わっています。

藤田さんが所属するスタンド・ストーンズこそ、藤田さんが憧れていたユージンで出会ったメンバーでできたメーカーです。スタンド・ストーンズは、「鬼滅の刃」がコロナ禍で大ヒットする前からいち早くその存在に気づき、フィギュアなどを商品化して業界では話題になりました。

また、スタンド・ストーンズはアニメや漫画などキャラクターのIP商品のほか、作家やノンキャラクターのオリジナルも手掛けています。

スタンド・ストーンズの藤田真理さん
スタンド・ストーンズの藤田真理さん

ヒレの美しさ、刺さるのでは

藤田さんはIP商品を多く作っていますが、今回はオリジナル分野で初めて担当した「奇奇奇シリーズ」の「闘魚〜ベタ〜(以下、ベタ)」を紹介します。ベタは1月に発売されました。

「奇奇奇シリーズ」とは、奇麗なもの、奇妙なもの、奇抜なものをリアルテイストに寄せた雑貨シリーズとして、藤田さんが企画したもの。

ベタは熱帯の国・タイ原産の熱帯魚。 カラフルで鮮やかな鱗の美しさと長いヒレが目を惹きます。タイではベタの雄を一対一で闘かわせる魚として、和名では闘魚とも言われます。

ベタを選んだ理由として、「ガチャガチャでは爬虫類、昆虫など人気がありますが、あえてそこは狙わずに他メーカーがあまり手掛けていないベタを選択しました」(藤田さん)。

さらに、藤田さん自身がベタを飼っていた経験もあり、ベタの特性とヒレの綺麗さがお客さんに刺さるのではないかという、今までのものづくりの経験から培ってきた直観もあったそうです。一方で、藤田さんはプレッシャーを強く感じており、「オリジナルでここまでしっかり担当したのは初めて。IP商品は注文数も安定していますが、オリジナルは別です。注文数もそうですが、売れるかどうか不安でした」と話してくれました。

「奇奇奇シリーズ」の「闘魚〜ベタ〜」
「奇奇奇シリーズ」の「闘魚〜ベタ〜」

サイズもリアル「本物に見せたらケンカするかも」

そのベタを商品化する上で、藤田さんは「お金をかければ売れるのは当たり前です。 コストをかけずに、見ているだけで綺麗なベタをリアルにフィギュアで再現したかった」と話します。サイズはほぼ1分1のサイズ。「ベタを飼っている人はカプセルを開けた瞬間に『わあっ!』と絶対喜んでもらえる造形になっています」。

また、「鮮やかな色彩と舞うようなポーズの魅力を表現したくて」と、「ボールジョイント」を使用しました。ボールジョイントとは、球体に丸棒をつけ部品と部品をつなぐもので、スムーズな可動ができます。

岩の台座の種類も3パターンあることで雰囲気を変えることが出来るのも特徴です。「ボールジョイントにすることで、ベタがまるで泳いでいるかのように見え、インテリアとしても活用できるなと思いました」と藤田さん。

「サイズがほぼ1分の1サイズなので本物のベタに見せたら、怒ってケンカするかもしれない」と藤田さんが懸念するほど、リアルなベタになっています。

同じシリーズの、蛇をモチーフにした「蛇輪(へびわ)」
同じシリーズの、蛇をモチーフにした「蛇輪(へびわ)」

バッグやキーホルダー展開も視野

「ガチャガチャはカプセルを開けたときに宝物が出てきたように感じさせてくれます。そのガチャガチャに携われていることで幸せな人生だと感じます」と藤田さん。

だからこそ、ものづくりをするうえで、買ってくれた人に喜ばれるような商品、カプセルを開けたときのサプライズを届けたいのだと話します。

「絶対にがっかりさせたくはありません。私の人生がガチャガチャで染まってきたので、令和でも私が小さい頃に体験したような喜びを感じてくれる子がいてくれたら嬉しいです」と熱く語ります。

この「奇奇奇シリーズ」は、フィギュアだけでなく、トートバッグやキーホルダーなど色々なものを視野に入れ展開していくようです。

2月には早速、第2弾として、蛇をモチーフにした「蛇輪(へびわ)」が発売中です。蛇好きな藤田さんが指やペン、リップなどに差し込めるよう柔らかい素材で作りました。ラインナップで白蛇や抜け殻もあるため、「縁起がいい」とXでもポストされているようです。

オリジナル商品は、企画した人の思いやこだわりが伝わってきます。今回のベタを見て、藤田さんのものづくりに対する愛情がある商品だと思いました。その愛情は、幼少期のガチャガチャの記憶から生まれていると感じます。取材中に、藤田さんの言葉でガチャガチャに関わって幸せという言葉が何度も出できました。まさに、生粋のガチャガチャ好きな藤田さんは、ガチャガチャに魅了された人生を味わっているなと思いました。

    ◇
「闘魚〜ベタ〜」は白、黄、赤、赤青、青黄、黒の全6種類。1回400円。
「蛇輪(へびわ)」は茶×黄土、白×黄、赤×黒、白、抜け殻(茶)、抜け殻(白)の全6種類。1回400円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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