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被災地でニョキっと飛び出たあれは一体…? 通行妨げ、復旧に時間も

道から飛び出たマンホール
道から飛び出たマンホール

目次

能登半島地震の被災地では、あちらこちらで道路から飛び出したマンホールを見かけました。道路の真ん中で飛び出しているものもあり、車のスピードを落として避けて走ることもしばしば。夜になると、見えにくく直前で急ブレーキを踏むことも……。なぜ、地震でマンホールが飛び出してしまったのでしょうか。

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1.5メートルも出ているものも

能登半島地震から1カ月が経った2月上旬、被災地の珠洲市や輪島市を車で走っていると、あちらこちらで見かけたのが、飛び出したマンホールでした。

十センチ程度飛び出したものから、1.5メートルほど飛び出したもの、さらには何十メートルにも渡って、マンホールが飛び出し続けている歩道など様々です。

初めて見たときは、記者も「なんだこれ……?」と驚いて、つい車を停めて写真を撮ってしまいました。

道路の真ん中で飛び出たマンホール=輪島市
道路の真ん中で飛び出たマンホール=輪島市 出典: 朝日新聞社

この飛び出したマンホール、道路の真ん中で飛び出すものも多く、通行の妨げになってしまっています。夜には、うっかりぶつからないように注意しながら走るなどして大変でした。

十数センチ程度の飛び出しであれば、応急処置として周りに土を盛るなどして対処していましたが、1メートル以上も地上から出ているものはすぐに埋め戻すことはできません。

原因は地盤の液状化

地震によって、なぜマンホールが地上に出てきてしまったのでしょうか。地盤工学が専門の東京電機大の安田進名誉教授に聞きました。

安田さんはずばり、「液状化が原因です」と指摘します。

まず、地震の揺れによって、地下水が豊富なやわらかい地盤が緩んで液状化します。ちなみに、液状化は砂の地盤で起こり、粘土のような地盤では起こらないそう。特に埋め立て地で起こりやすくなります。

液状化したかどうかは、液状化した土が泥水となって噴きあがり、その後、水がひいたあとに砂が残ることによって判断するそうです。

液状化して泥のようになった地盤では、より密度が大きいものは沈んで、小さいものは浮いてしまいます。

液状化によるマンホール浮上のメカニズム
液状化によるマンホール浮上のメカニズム 出典: G&U技術研究センター提供の資料より


「中が空洞のマンホールは、地盤よりも密度が小さいために浮き上がってしまいます」と説明してくれました。

記者が珠洲市で撮影した写真を見せると、さらに詳しく説明してくれました。

飛び出したマンホール=珠洲市
飛び出したマンホール=珠洲市

写真では、道路の歩道に埋めてあるマンホールが浮き上がって、その周囲に砂が見えます。これに対し、車道や周囲の田畑では砂が噴いたような跡もなく、被害も生じていないように見えます。

安田さんは「つまり、その周辺全体の液状化ではなく、マンホールの周囲の土が液状化してマンホールが浮き上がったのではないかと思われます」といいます。

次に、津波で大きな被害を受けた珠洲市の鵜飼地区です。

津波で被害を受けた珠洲市の鵜飼地区で飛び出したマンホール
津波で被害を受けた珠洲市の鵜飼地区で飛び出したマンホール

「地盤の硬さなどを考慮すると、鵜飼地区ではマンホールの周りだけでなく、地区周辺の地盤ごと液状化した可能性があります」

マンホールが液状化して飛び出すときには、マンホールを埋めたときの周りの土だけが液状化するパターンと、その周辺の地盤が全体的に液状化してしまうパターンの2種類があるということでした。

こういったマンホールの飛び出しは、以前の地震でもありました。特に顕著だったのが、2004年に起きた新潟県中越地震で、道路から飛び出したマンホールは1400個以上にものぼったということです。

重しをつけて埋め戻し

では今後、どうしたらいいのでしょうか。

対策としては、マンホールを埋め戻すときに、周りの土に石灰を混ぜて地盤を硬くしたり、マンホール自体に重しを付けて、飛び出さないようにしたりするといった方法をとります。

マンホールが飛び出してしまうと、つながっている下水管も引っ張られて破損してしまいます。つまり、マンホールを埋め直すだけではなく、下水管も取り換えるといった大がかりな工事が必要になります。

今後の地震では飛び出さないように、マンホールの耐震点検や、地盤が液状化しやすいのかどうかといった調査も必要になってきます。

安田さんは「水の復旧には、水道管だけではなく、こういった飛び出したマンホールや下水管の復旧も不可欠です。といっても、マンホールが飛び出していると工事車両も入れません。過去の震災の知見はありますが、まだ復旧には時間がかかりそうです」と指摘しています。

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