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#6 知っておきたい相続のこと

「相続登記」とは? 4月から義務化 〝放置〟するとペナルティも…

登記に詳しい司法書士に、相続ポータルサイト「相続会議」の編集長が聞きました

「相続登記」の義務化が4月から始まります(画像はイメージです)
「相続登記」の義務化が4月から始まります(画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

「相続登記の義務化が4月から始まる」。そんなニュースを見聞きしたという人も多いでしょう。

「相続登記」とはどんなもので、義務化によって何が変わるのでしょうか? 登記のプロである司法書士の中島美樹さんに、相続ポータルサイト「相続会議」の岩井建樹編集長が聞きました。

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中島美樹(写真左)
司法書士法人あかし代表司法書士。「相続で家と家族を守る司法書士」を掲げ、相談者に寄り添う。一般社団法人東京都不動産相続センター代表理事も務めている。

岩井建樹(写真右)
相続会議編集長。東京の不動産価格が高騰し過ぎて賃貸暮らしのため登記未経験。実家の不動産も引き継ぎたくないと思っているので、相続登記にも縁がないかも。

「登記=自分のものだとの主張の証拠」

ーー岩井編集長:そもそもの話ですが、「登記(とうき)」って何ですか? 

中島司法書士:登記とは、土地や建物がどこにあって、面積がどれくらいで、誰が所有者なのかを、誰でも確認できるようにするための制度のことです。そして、こうした情報を記した帳簿は、登記簿と呼ばれます。

ーーなぜ登記が必要なんでしょうか?

たとえば、一戸建てにAさんの名で表札がかかっているとしても、その土地と建物はAさんのものとは限りませんよね。AさんはBさんに借りているだけかもしれません。この場合の所有者はBさんです。

所有の権利は、表札のように目に見えるものではありません。登記は、そうした目に見えない権利を証明するためのものです。登記をすることで「この土地や建物は私のものだ!」と第三者に証明することができるようになります。

登記は必要書類をそろえ、法務局に申請します。通常、日常生活の中で登記に携わる場面はなく、家を購入した時に初めて体験する人が多いかと思います。
司法書士法人あかし代表司法書士の中島美樹さん
司法書士法人あかし代表司法書士の中島美樹さん
ーー賃貸暮らしの僕にはなじみがないわけですね。さて、本題の「相続登記」について教えて下さい。

相続登記とは、亡くなった方の不動産を相続した人が「私が不動産を引き継ぎました」と示すための手続きです。「相続した不動産の名義変更」とも言われます。

ーー2024年4月1日から義務化されると聞きました。何がどう変わりますか?

これまで相続登記するかどうかは相続人の任意でしたが、自分が不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記しなければいけなくなります。2024年3月までに、つまり義務化よりも前に相続した不動産についても、対象となります。

ーー期限内に登記しない場合、どうなるのでしょうか?

「正当な理由」がないにもかかわらず、期限内に登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

ーー過料10万円以下なら、相続登記にかかる費用と手間を考えると、そのまま放置しようという人もいそうです。

そこは安易に考えないほうがよいでしょう。過料の支払いをもって義務を履行したことにはならず、義務は残ります。

ーー過料は一度だけ科されたら終わりというものではなく、相続登記するまで何度も科せられてしまうということでしょうか?

今の時点で「そうです」と断定まではできませんが、その可能性はあるでしょう。
 
【相続メモ】
過料を免れるための「正当な理由」としてあてはまるのは、「相続人の数が極めて多くて登記するために時間がかかってしまう」「遺言書の有効性について争われて不動産を誰が相続するか決まっていない」「相続人が重病だったり経済的に困窮したりしている」などの場合が想定されます。

また相続登記の義務化にあわせて、「相続人申告登記」がスタートします。これは、上記のような事情で相続登記を3年以内にできそうもない人が、簡単な手続きで「自分が相続人です」と国に申し出ることのできる制度です。相続登記の義務を「とりあえず、取り急ぎ」免れ、ペナルティを回避できます。
相続登記の添付書類の一覧。どの相続登記を申請するかによって必要書類も変わります
相続登記の添付書類の一覧。どの相続登記を申請するかによって必要書類も変わります 出典:相続会議

義務化の背景に、土地の所有者不明問題

ーーペナルティが何度も科せられるようであれば放置もできないですね。国はどうして義務化するんでしょうか?

義務化の背景には、所有者がわからなかったり、わかったとしても連絡がつかなかったりする土地が増えていることがあります。このような所有者不明の土地の面積は、九州の大きさを上回っているとも言われています。

たとえば、「この地域を開発したい」「道路を広くしたい」との公共事業の計画があったとしても、そこに含まれる土地の所有がわからない場合、事業を進めることができなくなってしまいます。また所有者が不明の土地は放置されることになるので、建物が老朽化したり、雑草が生えたりするなどして、周辺環境に影響を与えます。

所有者不明の土地が増えてしまう原因として、土地や建物を相続してもきちんと登記をせずに放置する人が多いことが指摘されてきました。そこで今回の義務化によって、所有者を明確にすることで、問題の解決につなげようとの狙いがあります。

ーー相続登記をしないことが社会問題につながっていることはわかりました。では、不動産を相続した本人に相続登記をしないデメリットはあるのでしょうか? 義務化後の過料というペナルティ以外に。

相続した不動産を売却しようとしても、相続登記をしていない場合には売却ができません。登記していない以上、「自分が所有者だ」と第三者に主張できないためです。

不動産会社にも登記簿を必ずチェックされますので、相続登記していなかったら「まずは登記を済ませて下さい」と言われるでしょう。

ーー遺言書の中で、不動産の相続人に指定されていても売れませんか。

売れません。遺言書だけでは所有者であることの証明には不十分なためです。

買う側からしたら「この人が所有者という証拠がないから、取引していいのかわからない」状態です。後から別の遺言書が出てきて、その遺言書に別の人に不動産を相続させる旨が記されている可能性もありますし。

買主としては、購入した不動産の登記名義を自分のものにするために、本当にこの人と取引をしていいのかの判断材料が必要です。そのため、不動産の売却では、あくまでも相続登記がされていることが前提になります。
 

不動産の共有者が100人を超えるケースも

ーーほかにデメリットはありますか?

相続登記しないまま放置すると、名義人は亡くなった人の名前のまま、相続人全員で共有して、その不動産を持つ状態となります。

そしてこの状態のまま相続人が亡くなると、その共有している部分は、相続人の子どもたちに引き継がれます。この「次の世代への継承」が繰り返されると、どんどん共有者の数は増えていきます。そのうちの一人が、この不動産を売却しようと思っても、全員に連絡をとって相続登記をする必要があり、大変な作業となります。

また、もしその中に認知症の方がいたら、こうした売却等の法律行為は行えないので、成年後見人をつけない限り、この作業はストップしてしまいます。

ーー実際、たくさんの共有者がいる案件の依頼を受けたことはありますか?

ある相談者は、母が亡くなって遺産を相続することになり、その中には田舎の母が暮らしていた家も含まれていました。登記を確認すると、名義は祖父のまま変更されていなかったそうです。

そこで私が調べてみると、この不動産の共有者は20人を超えていました。この方は、この家を所有したいと考えていたので、共有者一人ひとりに連絡して、その持ち分を買い取ることにしました。この事例では私がサポートしましたが、相談者の方が自分一人でやろうと思ったら、気の遠くなるような作業となってしまいます。

共有者の中には「自分が共有者になっていることなんて知らなかった」「何のこと? 私には関係ない話でしょ」などと言う人もいました。

共有者の数で言えば、私が扱った事例ではこれが最多規模ですが、100人を超える事例もあると聞いてます。

ーー家をだれが相続するか決められず、とりあえず不動産を家族の共有名義で登記することもあると思います。

二世帯住宅で、母親と子ども世帯が暮らしているような場合、2人の共有名義にすることは問題ないと思います。

ただ基本的には不動産は1人が相続し、単独の名義にしたほうがいいでしょう。特に、きょうだいでの共有は、トラブルの元ですのでお勧めはしません。

まず、その家を売却したり賃貸に出したりしたいと思った場合、共有名義で登記したきょうだいの許可が必要になります。1人でも反対したら売れません。

ただし、自分の権利(持分割合)だけを売却することはできます。こうした共有持分を、買い取ってくれる業者があります。こうなると、家の売却に反対していたきょうだいは、家を業者と共有する状態になってしまいます。
 

相続登記の手間が嫌なら専門家に

ーー相続登記が大切なことはわかりました。手続きは簡単ですか?

相続人が母ときょうだいだけであるなど明確で、遺産の分け方を巡って争いもなく、不動産の数も限られているのであれば、自分で行うことはできます。必要書類を自分で収集し、法務局に提出する必要がありますので、そうした手間をかけるのを惜しまない人であれば、自分で手続きすることは可能です。

ただ「登記漏れ」には注意して下さい。たとえば家の前の私道やゴミ捨て場を近隣の方々と共有していると、相続登記の対象となっていることがあります。

ーー僕は面倒なことが嫌なので、相続登記が必要になったら、誰かに頼みたいです。

その場合は、司法書士にご依頼下さい。

司法書士であれば、誰が相続人なのかの調査から、遺産分割協議書の作成まで、必要となる相続手続きを丸ごとサポートすることができます。

特に相続人同士が疎遠だったり、共有者の数がふくれあがったりしている場合は、司法書士の手を借りた方が手間やストレスなく、解決に導いてもらえるでしょう。

ーーちなみに、僕は東京に暮らしていて、実家は岐阜なんですけど、もし実家の不動産を相続することになった場合、どちらの事務所に相談すればいいんでしょう。

今は全国どこにいても、オンラインで法務局への登記申請はできますし、必要書類も郵便で取り寄せができますので、お住まい近くの司法書士事務所で大丈夫ですよ。

ーーそれは便利ですね。相続登記の義務化がスタート目前となっていますが、相談は増えていますか。

ニュースを見て、「ペナルティがあると聞いたのですが……」といった相談はやはり増えています。多いのは、不動産の所有者が亡くなってから、だいぶ月日がたっているケースです。放置していた間に、共有者が増えてしまい、連絡先さえわからず、自分では手に負えないという相談ですね。今後もこうした相談が増えていくと考えています。
 
相続会議> 
「想いをつなぐ、家族のバトン」をコンセプトに朝日新聞社が運営する相続に関する情報サイト。相続に役立つ記事をお届けするほか、相続に詳しい弁護士や税理士、司法書士を検索する機能もある。以下から都道府県名もしくは自治体名をクリックすると、相続会議と提携している、相続登記に対応する司法書士に相談できます。
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